表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
縁鬼乱舞  作者: ひろゆき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

92/151

 第二部  序  2  ――  牢獄  (2)  ――

 第九十二話目。

 成れの果て……。とでも言うのか。

                     

            2



「何か用か、部外者よ」

「町の長でもあったあなたが、よもや囚人扱い。堕ちたものだな」


 ウリュウの態度からして、弱腰であれば言い込まれそうであり、半ば嫌味っぽく突き放してみた。

 すると、ウリュウは鼻で笑い、壁に顔を凭れさせる。


「ワシは別に悪いことなんてしていない。町のためにと、行ったことを理解できない町の者が悪い。多少の犠牲がなんだ。何を考えているのだっ」


 しばらく人と話していなかったのか、口火を開いて捲し立てるウリュウ。

 窪んだ目を剥き出しにする様は、かなりの憎悪に満ちていた。

 かなりの屈辱を味わい、打ちのめされたのだろう。しかし――

 

「話が掴めないな。我々が責められる所以ないのだが」


 ここで荒いでもらちはあかない。ましてやことを荒立てては事情を掴めない。心なしか静かに聞いた。


「おいっ、この長は何が原因で投獄されているんだ?」

「いえ。それが町の者も口を揃えて噤んでしまい、何も話そうとしないのです。だから――」

「お前らもあの女が目的で、この町に来たんだろ。残念だったな。それなら取り越し苦労だ」


 鍵を預かった兵士に聞くと、ウリュウが憎らしげに割り込み、口角を上げて嘲笑する。


「どうもきな臭いな。理由を話せ」


 気遣う理由がなく、冷たく言い放つと、ウリュウは揚々と笑う。


「お前らの恰好、何やら鬼を退治する組織でも起ち上げたつもりか?」


 我々は揃って黒い服を着ていた。袖口には黄色い装飾が施されている。

 なんらかの組織を疑うのも当然か。ただ――


「そんなことはない。この町で何が起きたのかを聞いているんだ」


 ウリュウの興味を無視し、先を促すと、首を捻り、面倒そうに我々から顔を背けた。


「ワシはただ、町の将来を憂いてことを進めようとしていたんだ」


 逡巡したあと口を開くウリュウ。縛られた腕をギュッと握り締め、怒りを押し殺しているように見えた。

 どこか語気も強くなっている。



 自分が牢獄に収められた経緯を話すウリュウ。口調はすべてが遺恨に満ちた言動でしかなかった。

 話を聞いていると、こちらが耳を疑いたくなってしまう。


「……酷い話だな」


 話を聞き終え、率直な気持ちを吐露した。

 本来なら、ウリュウを叱責したいのだが、本人は意にも返さず、こちらを睨んでいる。

 

「女の鬼を襲い、子を孕ます。常人が考える内容じゃないな。鬼の力は尋常じゃない。そんなことをすれば、町から男がいなくなり、町が滅亡したかもしれないんだぞっ」


 浅はかな野望に町を巻き込む考えにいら立ち、つい語尾を荒げてしまう。


「何が悪いっ。どいつもこいつも近々のことしか考えていない。なぜ、先のことを見据えて考えることができないっ」

「鬼を相手にして先のことがあるか。そんな危ういことをしておいて、町が残っていること自体が奇跡で不思議なくらいだ。よくまあ、その鬼が町に報復しなかったな。その問題の鬼はどこにいる?」


 ウリュウの話にこれ以上耳を傾けたくない。


「いえ、それがこの町の周囲に、そのような鬼は目撃されておりません」

「鬼がいない?」


 部下に鬼の所在を聞くと、部下は眉をひそめてかぶりを振る。

 なぜ、平然と町が成り立っているんだ?


「鬼は本当に報復をしていないのか。損じられん」

「あの女、絶対にワシは許さないからなっ」


 部下の報告を怪訝に思っていると、ウリュウはさらに声を荒げ、感情を爆発させた。


「――女…… やはり、その鬼は町に訪れたのか?」

「あいつは絶対に許さないっ。あいつはワシの計画を破たんさせた。ワシをっ。それだけじゃないっ。あの坊主も絶対に許さないっ。あの2人っ。ワシを侮辱したことはっ」

「あの2人? 鬼は2人いたのか?」

 


 2人……?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ