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縁鬼乱舞  作者: ひろゆき


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 第7章  11  ――  僕の気持ち  ―― 

 第八十七話目。

 鬼の血が……。

                   

            11



 僕の親のどちらかが鬼?

 素朴な疑問に緊張が走り、みんなが黙ってしまう。


「僕はそんなことは知らない。両親は早くに死んでて、大して覚えてもいないから」

「本当に?」

「こいつとはガキのころからの付き合いだが、お互い親はいなかった。本当だ」


 疑うヒスイにランスが助け舟を入れてくれた。すると、納得してくれたのか、何度も小さく頷いた。


「俺らは元々孤児で、何もできないから町を守る守備に就くことにしていたんだ」

「なんだか、ハードな人生なのね」

「悪かったな」


 ランスの説明をどこか茶化すヒスイにうなだれてしまう。

 急に鬼の血縁だと言われても、すぐに受け入れることなんてできない。


「けど、こいつにそんな素振りはなかったぞ。まあ、戦いの素質はこいつの方が高かったけれど」

「それも、鬼の血の影響?」

「さあ?」


 思い当たる節が何もなく、気持ち悪くなってしまう。


「ふ~ん。でもまあ、結果的には混血に間違いないでしょうね」


 断言するヒスイに反論できず、戸惑うしかなかった。


「だったら、僕はどうなるの?」


 自分の体のなかで何かが変わっていく不安から、つい聞いてしまう。

 僕の問いに顎を擦りながら考えるヒスイ。目を瞑る様から、つい身構えてしまう。

 指が止まり、目蓋を開くヒスイ。真剣な眼差しに息が詰まる。


「さあ。別に何もないんじゃない?」


 思い詰めていた表情とは裏腹に、弾んだ声で放つヒスイ。

 拍子抜けた返事に目を丸くした。それでもヒスイは気にせず、両手で銀髪を掻き上げた。


「いや、ちょっと待てよ。実際、ユラはあの変な靄に呑まれたのよ。大丈夫なわけないじゃん」


 呆然とするヒスイに見兼ねたアカネが反論する。


「だ~か~ら~っ。〝贋鬼〟や、あの靄にだって、鬼のすべてを把握しているわけじゃないの。噂程度で聞き流されているだけなの。実際、私も初めて見たんだから。いい? 私は鬼の研究者でも、専門家でもないの。私を責めたって意味ないの」


 と、語気を強めて反論するヒスイに、アカネは唇を噛んだ。


「……ごめん。確かにそうよね」


 すぐにアカネは非を認めて謝ると、ヒスイは満足げに顎を上げる。


「私が思うに、あの黒い靄も何か強い執念みたいなものがある鬼にだけ襲うんじゃないの」

「強い執念って?」

「奴、ネグロはどうも、人間に負けたのが耐えられなかったんじゃないの。あんたら、奴と戦ったんでしょ。それが奴にとって、プライドをズタズタにされたと思ったんじゃ」

「そっか。あのときはまだ、僕が混血だって可能性は知らなかったから」


 ヒスイの話からして、思い当たることを呟いた。すると、3人の視線が僕に注がれてしまう。

 どこか冷たい視線に呆然とするしかない。それ以上は答えられなくて。すると、重たい空気を嫌がったのか、わざとらしい溜め息をヒスイはこぼす。


「それは何か戦いに負けて迫る危機とも言えないからね。私が修羅に負けても、別に変なことは起きなかったし」

「――?」

「――えっ?」

「――はいっ?」


 聞き逃してしまいそうな、重要なことをさらりと話すヒスイ。

 僕らは驚愕して3人が目を見合わせたあと、揃ってヒスイに視線を向けた。

 急に見られて驚いたのか、ヒスイは苦笑する。


「そんなに驚くことないでしょ?」

「いや、だって、〝修羅〟って鬼の頂点の者でしょ。そいつと戦ったって……」

「昔のことよ」


 あっけらかんと解き放つヒスイに言葉が続かない。


「でも、私は靄に呑まれなかったわ。別に気にしてなかったからね」

「それって?」

「だから、気にしなくていいんじゃないって話よ」


 不穏な空気が漂うなか、ヒスイが明るく振舞う。


「血がどうのって話じゃなくてね、そうなるかどうかは、あなた次第だってこと」

「僕次第」

「――そ。あんたの気持ちが強ければ大丈夫なんじゃない。今日は突発的なものとして考えたら」

「……僕の気持ち、か」


 何も変わらない……?

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