第7章 2 ―― 知らない過去 ――
第七十八話目。
目覚めはよくない……。
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パッと光が差し込み、視界を真っ白に遮ると、反射的に目蓋を閉じてしまう。
ややあって、再び開くと見知らぬ天井が飛び込んできた。
……ここは?
状況が掴めないまま、頬に手を当ててしまう。頬はなぜか濡れている。
泣いている…… なんで? 今の夢で?
戸惑いで視線を彷徨わせると、そばに人の気配を感じて顔を傾けると、どこかに寝かされている。
そばにランスの姿を見つけた。
どうやらベッドに寝かされていたらしく、そばに椅子があるのか、そこに座り腕を組んでいるランス。
「……ランス?」
弱々しい声が漏れると、居眠りをしていたランスの首が止まり、目を開いた。
「お、ようやく目が覚めたか。遅いんだよ、バカが」
僕の声に気づき、深く安堵した後、すぐに罵倒するランス。でも言葉とは裏腹に、どこか嬉しそうにも見えた。
「ここは?」
「ここか? レガートだ」
「レガート? え? なんで?」
腕を伸ばして欠伸をしながら答えるランス。場所を聞いて面喰ってしまう。
レガート…… なんでこんなところに。
「まあ、驚いて当然だろうな。ずっと寝ていたんだから」
「寝てた?」
体の凝りを解すように首を捻ったあと、呆然とする僕に、ランスは鋭い眼光をぶつけてくる。
ランスにしても、すべてを把握しているわけでもなく、大半はアカネから事情を聞いたらしいが、話を聞いて驚愕するしかなかった。
黒い靄? 尋常じゃない力って。僕にそんな力は……。
知らない事実ばかり。
なんなんだ、一体?
そんな自覚はまったくなく、途方に暮れるしかなかった。
ただ、あの奇妙な街からランスも抜け出してくれたことには安堵した。鬼ばかりのところにいてほしくはなかったから。
レガート……?




