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縁鬼乱舞  作者: ひろゆき


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 第6章  6  ――  ジュストでの戦い ―― 

 第七十四話目。

 何が起きたのか……。

                    

            6



 私の未熟さを恨みたくなった。

 ジュストが鬼の住処であるなんて信じられなかったけれど、私とユラの周りにいる人がほとんど鬼なんて信じられなかった。


 私はまた動けなかった。


 鬼と戦うって覚悟していたのに、やっぱり戦う気の鬼と対峙してしまうと、体が硬直して動けない。

 そんな私をずっと庇いながら、ユラは戦ってくれていたけれど、もう限界なのは歴然みたい。

 絶対、私が足を引っ張っている。

 何もできずに佇んでいるだけなんて情けない。

 何もできない歯痒さに苛まれていると、それまでたっていたユラが突然、片膝を着いた。

 もう限界ってこと?

 

「ユラッ、大丈夫なの、ねえ、ユラッ」


 つい声が大きくなるのだけど、ユラは返事をしてくれない。顔色は悪く、青ざめている。

 私がなんとかしないと。


「ツルミッ、お前は下がってろっ。あとは俺がやるっ」


 そのとき、人の輪で静観を決めていた大柄の男が叫んだ。

 長の後ろで立っていた男の1人。さっきまで私を拘束していた奴、タカセって言っていたっけ。

 タカセは人の輪から抜けると、太い指の爪を刃みたく伸ばした。

 瞬きもしない間に距離を詰めるタカセ。 

 踏み込んでユラの前に回って守らないとっ。

 でも、体が動いてくれない。間に合わないっ。

 

「――ユ――」


 声を出そうとすると、タカセはすでに爪をユラの頭上に迫っている。


 間に合わな――


 諦めが支配をしようとしていたとき、スッとタカセの姿が消えた。

 どこか、体を切り裂かれたみたいに、体がいくつかに割れたと思えたとき、砂が舞い上がったみたく、一瞬にして消えてしまった。

 目を疑い面喰っていたとき、ユラの体の異変に気づいた。

 膝を着いていたユラの周りに黒い靄がうずくまっている。

 それはユラを中心にして黒い靄が立ち昇るみたいにユラの体を覆っていく。


 体のすべてが靄に覆われた。


 意味がわからず、唖然となっているとき、周りにいた鬼の様子が変わった。

 それまで私らを嘲笑した様子で冷めていたのに、一変している。

 何かに怯えているみたいに。

 何? ユラに?

 状況が掴めず、オドオドと靄に包まれたユラを見入ってしまう。


「――なんだ? 堕鬼? いや、そんなはず……」


 そのとき、ツルミが驚愕の声を漏らすけれど、その姿にも驚かされた。

 ツルミはユラを見て、それまでの狡猾な姿がなかった。完全にユラに怯えている。


 なんで? だき?


「いや、そんなことはない。こいつは人間だ。なぜ、そんな……」


 動揺が走っていた。もう目を合わそうとしないツルミ。何? そんなに危険だっていうの?

 困惑からユラに視線を移した。

 うずくまっていた影は、まるで人が立ち上がるように動いた。

 ゆっくりと動いた影は、人の形を成している。

 ただし、これまでのユラの姿はしておらず、どこか一回り小柄の姿に見えてしまう。

 それは、女性のような輪郭に見えてしまう。


「ここは面白くないな」


 影から声が漏れた。

 ただ、それはユラの声ではなく、曇っていて誰の声とも把握できなかった。口調もユラと全然違う。

 どこか、女性の声に聞こえてしまうって変なの? 


 誰の声?

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