第4章 11 ―― 希望はない ――
第五十五話目。
なんだ、ここ?
11
恐怖すら抱きそうな悲壮な光景。
気持ちを引き裂くなかに混じるランスの声。
目を背けたい一心から、アカネとともに振り返る。
すると、胸の前で腕を組み、表情を強張らせるランスがいた。
「ランスッ」
「ライドだっ」
これまで捜していたので、会えたことに安堵するけれど、ランスは強く否定する。
あくまで〝ライド〟であると。
「で。ここが街の姿って、どういうことよ?」
ライドの不愛想な態度に怪訝なアカネが突っかかる。
「そのままの意味だ。この荒れた光景がそのまま心を表しているってことだよ」
「ここを鬼が襲ったって聞いたけれど」
「ああ。そうらしい。俺がこの街に着いたときにはすでにそうなっていた」
「そのとき、お前は鬼と戦ったのか?」
憎らしげに話すライド。どこか嫌悪感みたいなものが伝わり、つい聞いてみた。
ライドは無視する。
「この街に希望はないんだよ」
「希望? でも街はちゃんと機能してるじゃないか。住民らも明るく、気にしていない感じだったけれど?」
抵抗してアカネも胸を張って問う。
「目を背けているだけだ。昔にあったことに蓋をして、何もなかったことにしてる。ま、俺はそれが悪いことじゃないと思ってる」
「それって逃げてるだけじゃん」
話を聞いて嘆くアカネ。そんな姿にライドは睨む。
「逃げるにしたって、逃げる手段もなければ、その場でどう留まるのかを模索しただけだ。外の者が口を挟むことなんかできない」
「だからって……」
強く語るライドに、アカネは悔しさから口を挟む。
「悪いことは言わない。お前たちはさっさと街を出て行くんだな。お前たちがいれば、迷惑だ」
「迷惑って、あんたに言われる筋合いはないわよ。そんな――」
ライドの素っ気ない態度に、アカネは突っかかるのだけど、そこをつい制した。
「じゃあ、なんでお前はここで滞在しているんだ?」
ライド、ランスが僕らを拒絶するなら、彼の行動に矛盾が生じる。こいつも街にとっては、部外者のはずなんだから。
厳しい疑問だったのか、ライドの頬が引きつった。
「いいか。これは命令だ。さっさと出て行けっ」
体裁が悪くなったのか、急に話を乱暴に切ると、ライドは踵を返し、この場から去ろうとした。
「待ってくれ。まだお前の剣を……」
僕の声は届くことない。
「……最悪ね」
憤慨したアカネの怒号が響く。
動くこともはばかれ、その場に座り込んだ僕は、その怒りを甘んじて受けた。
「絶対、何かあるんだ。ランスは乱暴でも、冷たい奴じゃない」
アカネの拒絶反応に少しでも抵抗し、ランスを庇いたかった。
「あいつのことじゃないわよ」
「――?」
「なんかさ、この街が信じられないのよね。これだけのことがあるのに、何もしていないなんて」
と、無数の剣を眺め、嘆いてしまう。
「なんか、悲しいよ」
「……そうだな」
悲しい……。




