表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
縁鬼乱舞  作者: ひろゆき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/150

 第4章  11  ――  希望はない  ――

 第五十五話目。

 なんだ、ここ?

                    

            11



 恐怖すら抱きそうな悲壮な光景。

 気持ちを引き裂くなかに混じるランスの声。

 目を背けたい一心から、アカネとともに振り返る。

 すると、胸の前で腕を組み、表情を強張らせるランスがいた。


「ランスッ」

「ライドだっ」


 これまで捜していたので、会えたことに安堵するけれど、ランスは強く否定する。

 あくまで〝ライド〟であると。


 「で。ここが街の姿って、どういうことよ?」


 ライドの不愛想な態度に怪訝なアカネが突っかかる。


「そのままの意味だ。この荒れた光景がそのまま心を表しているってことだよ」

「ここを鬼が襲ったって聞いたけれど」

「ああ。そうらしい。俺がこの街に着いたときにはすでにそうなっていた」

「そのとき、お前は鬼と戦ったのか?」


 憎らしげに話すライド。どこか嫌悪感みたいなものが伝わり、つい聞いてみた。

 ライドは無視する。


「この街に希望はないんだよ」

「希望? でも街はちゃんと機能してるじゃないか。住民らも明るく、気にしていない感じだったけれど?」


 抵抗してアカネも胸を張って問う。


「目を背けているだけだ。昔にあったことに蓋をして、何もなかったことにしてる。ま、俺はそれが悪いことじゃないと思ってる」

「それって逃げてるだけじゃん」


 話を聞いて嘆くアカネ。そんな姿にライドは睨む。


「逃げるにしたって、逃げる手段もなければ、その場でどう留まるのかを模索しただけだ。外の者が口を挟むことなんかできない」

「だからって……」


 強く語るライドに、アカネは悔しさから口を挟む。


「悪いことは言わない。お前たちはさっさと街を出て行くんだな。お前たちがいれば、迷惑だ」

「迷惑って、あんたに言われる筋合いはないわよ。そんな――」


 ライドの素っ気ない態度に、アカネは突っかかるのだけど、そこをつい制した。


「じゃあ、なんでお前はここで滞在しているんだ?」


 ライド、ランスが僕らを拒絶するなら、彼の行動に矛盾が生じる。こいつも街にとっては、部外者のはずなんだから。

 厳しい疑問だったのか、ライドの頬が引きつった。


「いいか。これは命令だ。さっさと出て行けっ」


 体裁が悪くなったのか、急に話を乱暴に切ると、ライドは踵を返し、この場から去ろうとした。


「待ってくれ。まだお前の剣を……」


 僕の声は届くことない。


 


「……最悪ね」


 憤慨したアカネの怒号が響く。

 動くこともはばかれ、その場に座り込んだ僕は、その怒りを甘んじて受けた。


「絶対、何かあるんだ。ランスは乱暴でも、冷たい奴じゃない」


 アカネの拒絶反応に少しでも抵抗し、ランスを庇いたかった。


「あいつのことじゃないわよ」

「――?」

「なんかさ、この街が信じられないのよね。これだけのことがあるのに、何もしていないなんて」


 と、無数の剣を眺め、嘆いてしまう。


「なんか、悲しいよ」

「……そうだな」


 悲しい……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ