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縁鬼乱舞  作者: ひろゆき
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 第4章  10  ――  本当の姿  ――

 第五十四話目。 

 屋敷へ。

                     

           10



 緩やかな坂を上るにつれ、まるで別の町に向かっているいるような錯覚に苛まれそうになった。

 華やかだった空気は一変し、綺麗に舗装されていた石畳も歩を進めるにつれ、石にヒビが入っており、割れて抜け落ちている箇所もいくつかある。

 隙間から雑草が伸びていて、荒れ果てている。

 一歩進むにつれ、肩に乗る空気が重くなっていく気がした。

 屋敷が次第に近づくと、先ほどの話通り、廃墟に見えた。

 屋敷の壁はいたるところが崩れ、屋根も崩れ落ち、空が突き抜けて見えていた。敷居の壁も割れ落ちている。遠目では綺麗な屋敷に見えたが――


「何よ、これ?」


 崩れた屋敷以上に、目を奪われてしまったものに、アカネが驚愕してしまう。

 屋敷の庭と思しき芝に、無数の剣や槍といった武器が雑に刺されていたのである。

 まるで茨の道みたく、屋敷に侵入するのを拒絶しているような、禍々しい空気を漂わせていた。


「この街は、武器を持たないって言っていたいな。それなのに、これってなんだ?」


 異様なまでの数を怪訝に睨みながら、そばに近づいた。


「あいつら、これだけあるってのに、嘘ついていたってこと? もしかして、旅人から奪って、目立たないようにここに貯蔵しているとか? なんなの、これっ」


 変な憶測を邪推すると、より頬を紅潮させて憤慨するアカネ。一言でも挟めば、八つ当たりされそうで、受け流しておこう。

 気を損ねないでいると、手が止まる。


「そうじゃないかもしれない」


 剣を眺めていると、憤慨するアカネを制した。


「なんで?」

「ここにある武器、みんなボロボロなんだ」

「ボロボロ?」


 芝に刺さった剣の刃はどれも刃こぼれが起きていたり、ヒビが入っていたりと、年期とは違う脆さがあった。みんながくたびれている。

 芝に深く刺さっていると思えば、刃が折れた状態で刺され、槍も柄が折れ、朽ちている。

 よく見れば、どれもが刃の部分が汚れている。


「なんか、よく見ればこの剣、墓石みたいね」


 異様な光景に、弱々しく呟くアカネ。

 だが、あながち間違ってはいないかもしれない。


「これ、多分、血だと思う」

「――嘘でしょっ」


 剣がどこかどす黒く汚れていたけれど、血が乾いたあとだと気づき、アカネの憶測は当たっているのでは、と気づいた。


「何があったの、ここで……」


 アカネの不安が弱々しく木霊する。


「これだけの人がここで…… ここが鬼に襲われたって言っていたし。でも、それじゃ、なんでここだけで、街は無事――」

「これがこの街の本当の姿さ」


 困惑で頭がおかしくなっていきそうなとき、後ろから刺々しい声が届いた。

 ランスの声が。



 血の跡?

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