第4章 5 ―― ランス ――
第四十九話目。
やっぱり、ランスだ。
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強張った表情で断言するランスに耳を疑った。
唖然としてしばらく黙ってしまう。
「何、冗談言ってんのよ。ユラが言ってんだから、本当でしょ。ふざけんのもいい加減にしなさいよ。こっちは真剣にあんたに会いに来たんだからねっ」
呆然とするなか、黙ってしまう僕に代わりにアカネが怒鳴ると、右手を横に大きく振り払う。
「ちょっとはユラの気持ちも考えなさいよっ」
我慢が限界に達したのか、鉄柵を蹴ってより声を荒げ、金切り声が薄暗い牢屋に木霊した。
遠くにアカネの声が飛んでいくなか、アカネ本人は肩を揺らして怒りを治めようと懸命に務めた。
それでも怒りを鎮められないアカネはランスを憎らしげに睨む。
それでもランスはまったく動じることなく、睨み返していた。
多少のハプニングにも動じない姿はまさにランスそのもの。
ややあって睨まれ、体を委縮してしまう。
「では聞きますが、あなたらが捜している〝ランス〟という奴に出会ったのならば、何をするつもりでいたのですか?」
「だからさっき言ったじゃんっ。あんたの剣を返しに来たって。ちょっとは感謝してほしいくらいよ」
息を吹き返したアカネが再び怒気を荒げた。
「剣か…… だったら、そのランスという奴を嘲笑いに来たのか」
「嘲笑うって」
耳を疑ってしまうと、ランスは気まずそうに目を逸らす。
「だから、なんでそうなるのよ」
「だってそうだろ。そのランスって奴は鬼に負けたんだろ。その無様な姿を見るために、わざわざ来たんだからな」
アカネの怒号をいなすランスは、恨みを込めた口調で向かい合ってくる。
あくまで自分は別人だと、主張しながら。
「本当に話が通じないのね。なんで否定ばっかすんのよ」
鉄柵を蹴り、暴れるアカネをつい手で制した。
「ランス、教えてくれ。なんでそんなに自分を拒絶するんだ。お前はそんな奴じゃなかっただろ」
ずっとくすぶっていた違和感をぶつけた。
ランスはまったく答えはせず、顔を合わそうともしない。
それこそ、逆に気まずそうに。
やっぱり、こいつはランスだ。
「あとで釈放できるようにしておいてやる。さっさとこの街を出て行くんだな」
本人のことに話を触れられたくないのか、ランスは急に話を逸らしていく。
でも話題は変えたくなく、じっとランスを睨むけれど、取りつく島もないみたいに目を合わせてくれない。
「お前が剣を受け取ってくれるまで、帰る気はないよ」
「だったら、それこそ無駄足だったな。この街にとって、武器そのものが無用の産物なんだからな」
自分の武器でありながらも、執着のなさに声を失ってしまう。
ランスの言い分も気になりながらも。
「必要ないって、意味がわからないんだけど」
僕の疑問を先に言ったのはアカネ。意図が知りたくて僕も鉄柵を強く握ってしまう。
「お前たち、武器を持っていたってことは、鬼と遭遇したときのためだろ」
「当然でしょ」
「だからそれがこの街に無用なんだよ。この街が鬼に襲われるこいとは二度とないんだから」
「なんで、そんなことが言えんのよっ」
「それがジュストだからだ」
「意味がわからない」
ランスのぞんざいな説明に喰らいつくアカネであったけれど、ランスは素っ気ない。
「大体、なんで私らが拘束されなきゃいけないのよ。強引すぎるのよ、何もかも」
酒場で横暴な態度をした警備の者を思い出したのか、また憤慨するアカネ。
「だから、それはお前たちの武器が原因なんだよ。みんな、鬼を刺激したくないんだ。街に武装する者が増えれば、鬼も警戒する。それを避けるために軽装でいるんだ。「自分は鬼に逆らわない」と示すために。だから、必要最低限の武装で済ませているんだ。お前たちは目障りなんだよ」
「目障りって……」
「鬼を刺激させないつもりで、拘束しただけだ」
「そんなのそっちの勝手な都合じゃない」
気が治まらず、憤慨するアカネをまだランスは無視すると、不意にランスは背中を向ける。
話は終わり、と言いたげな背中に焦ってしまう。
「待ってくれランス。ちゃんと話をさせてくれっ。まだ話すことが」
「誤解は解いておく。明日には出られるはずだ。すぐに街を出て行け」
ランスは冷徹に忠告すると、そのまま去ってしまった。
無用の産物?




