第3章 11 ―― 知り合い ――
第四十二話目。
気持ちを抑えられない。
11
険しさを崩さないまま吐き捨てるロアール。
こちらを睨む様子に、嘘を言っているようには見えない。
胸の奥から沸き上がる感情に任せ、ロアールに詰め寄りたくなるのを懸命に抑えた。
「知っているってどこで。教えろっ。あいつとどこで会ったんだっ」
それでも声を張り上げると、ロアールは困惑気味に首を傾げる。
「なんだ、知り合いか」
不気味に頷くロアールに後悔してしまう。どこか身構えられえた気がして。
はぐらかされそうで、正直な反応を悔やんでしまう。
予感通り、ロアールは顔を背けた。
大きな手掛かりを失った喪失感に苛まれていると、ロアールは視線を戻した。
「ま、あの人のことはどうでもいいからな」
「どうでもいい、だと?」
ぞんざいに吐き捨てたロアールに、つい喰いついてしまう。
「前に言っただろ。ネグロに数人の戦士が挑んで負けたって。そのなかの1人だよ。ランスって奴は」
「ランスが鬼に戦いを……」
「あいつは僕らのなかでも一番実力のある奴だったな。ま、ネグロには歯が立たなかったけどね」
「じゃあ、あいつは……」
負けている。
そして、それは。
1つの憶測に辿り着くと、怯えた目でロアールを捉えた。
嬉しそうに目を細めるロアール。それが結論を導かせる。
「ふざけるなっ」
「それが現実だよ」
信じ切れずに叫喚するけれど、ロアールは冷静に突きつける。
「あいつが、そんな…… あいつが負けるなんて」
「お前はあいつに勝っててほしかったのか?」
痛いところを突くロアールに、悔しさで拳を握り締めた。すぐにでも殴ってしまいそうなのを必死で堪えた。
「残念だったな。奴はもう死んでいるんだから」
「――っ。言うなっ」
傷口をえぐる反応にまた叫喚すると、得意げに笑っていたロアールだけど、すぐさま眉間にシワを寄せた。
今にも戦いを望むような態度であったけれど、表情とは裏腹に、剣を鞘に戻した。
「悔しいが僕はどうやったってお前には敵わない。けれど、どうやらお前を苦しめることはできるみたいだ」
「何が言いたい」
「お前を倒せない。だから苦しめてやる。ジュストという街に行ってみな。より苦しむだろうよ」
「そこにランスが関わっているのか」
ロアールは答えない。それどころか、これまでの自信を取り戻したのか、嬉しそうに嘲笑すると、胸を張る。
「だが、お前はマルチャでネグロに負けたんじゃ」
「奴を信じるお前なら、絶対に苦しむ。いや、苦しむんだな」
僕の疑問には答えず、それは捨て台詞なのか、それを後にロアールはこの場を後にした。
1つの結論。




