第3章 9 ―― 目覚め ――
第四十話目。
あれ?
9
目覚めたとき、当惑したアカネが目を剥いていた。
「やっと目が覚めたっ」
と、いきなり怒鳴り声を献上されてしまった。
大丈夫なんだと、安堵とともになんでそこまで大きい声なんだ、と呆れてしまう。
「ようやく目が覚めたんだね」
と、今度は驚くアカネに、眉をひそめてしまう。
驚き方が普通ではなかったから。
アカネから事情を聞き、驚いたことに納得してしまう。
僕が目を覚ましたのは意識を失ってから5日目。
ずっと眠っていたらしく、傷も深いものがいくつかあったらしい。
現に今もまだあちこちに包帯は巻いたまま。無茶に動かせば、激痛がまだ走る。
それでも、5日も眠るほどの傷だったのか、と疑念は残っていた。重症度からすれば、ボルガの方が重症なのだけど、彼は3日前に意識を取り戻していたらしい。
安静にしておかなければいけないのは、当然らしいけれど。
考えられるのは、一時意識がなかったときのことが原因なのか、と怪しんでしまう。
目が覚め、落ち着くと、アカネからそのときの状況を説明され、また驚かされる。
アカネの話によれば、僕は一時、尋常ではない動きをしていたらしい。
動きだけを考えれば、鬼と変わらないほどの異様さがあったらしい。目で追うことも困難なほどに。
さらには、僕の容姿にも息を呑んだと。
一瞬の間、僕は全身を黒い靄で覆われていたらしい。全身が覆われ、僕の姿が見えないほどに。
それこそ、まるで僕が別人になったみたいに俊敏に動き、尋常じゃない力を発揮していたらしい。
まったく覚えがなかった。
尋常じゃない。




