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縁鬼乱舞  作者: ひろゆき
4/101

第1章 2  ――  鬼に会えば  ――

 第四話目。

 まだまだ序盤です。

                       

           2

 

 言ってしまった。

 軽率でしかなかったな。

 軽はずみな言動のより、後悔が胸に竦んでしまうけれど、止められなかった。

 重苦しさに唇を強く噛んでいると、気持ちが侵食してしまったのか、空気がいつしか張り詰めていく。

 気のせいか、酒を飲んでいた小太りの男も酔いが冷めたらしく、顔から血の気が引いていき、瞬きを忘れていた。

 当然だよな。いくら鬼から逃れているとはいえ、危険がないわけじゃないし。

 冷酷にも感じる視線を甘んじて受け入れるしかない。


「じゃあ、君は鬼に会えば倒すのかい?」


 客の1人が目尻を吊る上げ、冷ややかに聞いてくると、視線は訝しげに足元の剣を睨んでいる。


「時と場合によっては」


 これまで友好的だったはずなのに、完全に風向きが変わった、と肌がひりついた。けれど、嘘をつくつもりもない。窓から入る風が刃みたく冷たく刺さるなか、店内を眺め、強く言い切った。

 当然、怖がるよな。鬼を敵として捉えるなんて。

 それでも、これだけは譲れない。


「じゃあ、聞くけど、君は鬼を倒したことがあるのかい?」


 それまでは僕みたいなよそ者も、快く受け入れてくれる様子であったのに、鬼を身近に感じたのか、より警戒心を強めたのだろう。

 期待はするけれど、どうも急に居心地が悪くなり、肌がひりついてしまう。


「どうなんだい?」


 さらに詰めてくる店主であったけれど、声はより刺々しくなり、訝しげに眉をひそめる姿は、責められているみたいだ。

 ったく、やっぱり面倒になりそうだな。


「だから時と場合によって、ですよ」


 責められた反動からか、つい口調は強く、ぞんざいに返してしまった。

 これで完全に嫌われそうだ。




 逃げるように店を出たのは、店内に充満していく肌寒い空気が居心地悪あったから。

 ここで問題を起こしたって意味がないのだから。



 居心地が悪い町に長居するつもりはない。けれど、店を出てそのまま町を後にしなかったのは、住人に鬼の恐怖が根づいていたからかもしれない。

 それに……。

 森で遭遇した鬼。あいつはきっと人を殺したことがあるだろう。

 その被害が町に陥っていないか、もう少しだけ調べてみたかった。

 それでも、いつかからかすれ違う住民の視線が冷たくなっている。

 僕から目を逸らす雑貨店の老婆。すれ違った際に足を止めて振り返る男。そもそも、僕に関わらないようにと、不自然な避け方をする住民が多くみられた。

 小さな町。飲み屋での出来事はすぐに広まったのだろう。

 ま、それでも逃げてしまうわけにもいかないか……。


 ―― ……人間、なぜお前は我にそこまで寛容なのだ? 

 ―― ……お前を殺すことがどうしても納得できない。 


 あのとき、奴は僕を珍しがり、目を細めていた。

 背中まで伸びたしなやかで光沢な黒髪を撫でて。耳を撫でる細い指は、爪の刃のごとく鋭く光っている。

 それでも、僕は微塵の恐怖も抱かなかった。

 初めて眼前に捉えた女の鬼に。


 ーー 人間、お前はどうも面白い。


登場人物が少ないかな。

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