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縁鬼乱舞  作者: ひろゆき


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 第3章  7  ――  黒い靄  ――

 第三十八話目。

 死ねない。

                    

            7



 嘲笑うネグロに、つい悔しさが積もって奥歯を噛むしかない。けれど、


「死ねるかよ」

「ふん、無理だね」


 強がって抵抗すると、再び右肩に激痛が走る。

 ネグロは閉じていた指を開き、爪を広げようとする。


「ぬああああっ」


 激痛に唸り声が漏れる。


「ユラッ」


 アカネの叫び声も届かず、痛みに悶えるしかない。けれど、


「……お前みたいな奴に負けるわけにはいかないっんだっ」


 咄嗟にネグロの右腕を掴んだ。


「それはお前――」


 爪を立て、ネグロの腕を引き抜いていく。

 こんなところで、こんなところで。


「うああああっ」


 肩に刺さる腕を、力一杯に握り締める。無我夢中としか考えられないけれど、不思議と力が入ってくれた。


「ぐあっ」


 痛みに耐えきれなくなったネグロは、無理矢理爪を引き抜くと、そのまま後ろに下がって距離を取ると、その場にしゃがみ込む。


「なんなんだ、お前。その力――」


 声を聞くのも面倒。その距離を詰め、剣を振り下ろした。

 咄嗟に体を捻らせるネグロ。刃は寸でのところで空を斬る。


「急に何をし――」

「教えろっ」


 動揺するネグロの首を左手で掴んだ。力に任せて指を食い込ませていく。

 許さない。許すわけにはいかない。許せるかっ。

 怒りに支配されそうなとき、視界が黒く霞んでいく。


「絶対にお前は――」


 血管を浮き上がらせ、無理矢理ネグロを引き上げて立たせる。ネグロは逆らえず立たされたとき、腹を蹴られた。

 反動で手が滑り、結果的にネグロを解放してしまう。

 解放されたネグロは首を擦り、乱れた息を整えていく。頬を歪ませ、こちらを睨むと、目を剥いた。


「……なんで、お前……」

「ランスはどこにいるっ」


 ネグロの驚愕なんて気にせず叫んだ。

 感情を爆発させたとき、こちらを見て驚いていたネグロは一層表情を強張らせ、様子が変わる。どこか怯えているみたいに。

 一息入れて嘲笑するネグロ。


「知らねえよ、そんなの」


 やはりネグロは口を開こうとしない。一向に先に進めないことに溜め息がこぼれる。


「……もういい」


 剣を横に振る。

 一瞬の出来事であったけれど、まるで俯瞰して己の姿を眺めているみたいな不思議な感覚に陥った。

 横に振り切った僕の姿は、その場に残像として影が残る。

 それは先ほど見た、黒い霧だったのかもしれない。

 ネグロが残像に目を奪われていた間に、地面を蹴り、ネグロの眼前に跳んだ。

 ネグロがこちらの存在に気づいたとき、僕は右手を振り上げていた。

 刃には血がへばりついている。


「――っ」


 唖然とするネグロの横で、ドンっと鈍い音が響く。

 ネグロの右腕がボトッと草原に転がり、血が草を汚している。


「あああぁぁあああっあああっ」


 けたたましいネグロの咆哮が草原に轟いた。


 何が起きた?

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