表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
縁鬼乱舞  作者: ひろゆき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/148

 第3章  5  ――  それだけ  ――

 第三十六話目。

 こいつはそんなに……。

                    

           5



 呆然としたまま額を触り、己の血を確認するネグロ。

 気のせいか、舌打ちをした気がした。


「確かにお前は強いよ。けど、それだけだ」

「それだけ? どういう意味だよ?」

「剣技はそれほどじゃない。好奇心だけで使ってるだけだろ。きっと器用なんだろうな。だから、多少の戦いはできる。剣技だけなら、お前を真似していたロアールの方が上だ」


 ネグロの頬がまた引きつっていく。


「何が言いたい?」

「だから、〝それだけ〟って言ってんだよ」


 最大の皮肉を放ってやった。これで激高して動きが鈍ればいいけど。

 額の血を拭うと、手にした剣を捨てるネグロ。


「まあ、それは強がりと取ってあげるよ。それにマグレってこともあるからね」


 それはどこか自分に言い聞かせているみたいに呟くと、新たに背中の荷物に手を伸ばす。


「確かにお前の言う通りかもな。どうも人を殺していくと、変な収集癖みたいなものが生まれてな。それを使って遊びたくなるんだよ」


 と、新たな剣を取り出すと構え直す。


「さてと、第2ラウンドといくか」

「――?」


 つい眉をひそめる。

 気のせいか、と何度も瞬きをしてしまう。

 ネグロが剣を握る右手付近。瞬きをしていくなかで、ネグロの右手首から、右肩に向け、微かに黒い靄が絡みついているように見えた。

 うっすらと、まるで蛇がとぐろを巻くみたいにして、薄い靄が体を侵食していくみたいに。


「どうした? やっぱり強がりか?」


 黙り込んでいると、ネグロが嬉しそうに話し、手首を回して剣で弄ぶ。クルクルと回す動きによって、纏わりついた靄が消えていた。

 見間違いだったのか、とまた瞬きをしていると、不意に体が硬直してしまう。

 そんなことより……。


「お前、その剣をどこで手に入れた?」


 ……だめだ。


「どうした? やけに感情的になった気がするんだけど?」


 指摘され、息を吐き捨てて平静を保とうと胸に手を当てた。鼓動は激しく脈打っている。これまでの戦闘による乱れじゃない。


「その剣をどこで手に入れたっ」


 冷静にならなければ、と諭すのだけど、堪えずに叫んでしまった。


「どうした? そんなにこの剣が気に入ったか? 僕としては二流のガラクタにしか見えないんだけどね」


 ネグロは剣をかざし、太陽に当てて刃を光らせる。

 細い両刃に鍔の部分に小さな赤い宝石で装飾された剣。ネグロはマジマジと眺め、罵倒する。


「――答えろっ」


 憎らしめに目を細めたとき、地面を蹴っていた。一気に距離を詰め、剣を振りかざす。

 ネグロはまったく隙を見せず、剣を受け止める。


「なんだ? さっきより動きが鈍いぞ」


 ネグロの挑発を受けながらも攻め立てる。それでもすべてが軽くあしらわれ、流されていく。

 動けっ、こいつを、こいつを。

 焦りが理性を邪魔していく。体が言うことを利いてくれない。手に命令を下すのだけど、一拍間を置いて動いてしまう。

 苛立ちが強まるなか、全身に傷が増えていく。それでも――


「だめっ。ユラ、攻めすぎっ」


 見兼ねたアカネが大声で制止するけれど、これだけは譲れない。

 絶対に聞き出す。


「ふんっ。さっきまでの威勢が嘘みたいだぞ」


 うるさいっ。



 ―― 裏切り者っ。 

 ―― なんで、お前はそうなんだっ。

 ―― なんで、鬼の言うことを。鬼は忌むべき存在だぞ。

 ―― 町を守るより、鬼の方が大事なのかよっ。

 ―― 俺は絶対に鬼を許さないからなっ。

 ―― あいつは鬼だぞ、ユラッ。



「答えろっ。それはランスの剣だっ。なんでお前が持っているっ」



 こいつの剣っ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ