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縁鬼乱舞  作者: ひろゆき


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 第二章  9  ――  仮面  ――

 第二十八話目。

 アカネには逆らえない。

                     

            9



 本音としては行きたくはないのだけど、アカネは許してはくれなかった。

 レガートに行くには、その道中であるから構わないだろう、と押し切られた。

 本当にそうなのか? と疑いたいけれど、そんな隙すらもらえなかった。

 そこで、マルチャに向かうため、山並みを歩いていると、辺りは岩肌が目立つ殺風景なところに出た。

 道の先には町で聞いていた橋が存在するらしく、木々の合間を抜けると広場に出た。

 短い草花が広がる先の橋を渡り、しばらくすれば、マルチャに着く。

 アカネとボルガが先を急ごうとするなか、不意に足を止めた。


「何? どうかしたの?」


 僕の動きに気づいたアカネが止まり、振り返る。その間際、腰の剣に手を添えた。

 風が鳴り、後ろから谷間に抜けようと髪を撫で、アカネが風に抗って耳元を手で押さえた。


「うわっ」


 アカネがいる先を睨むと、アカネは不穏に肩を委縮させ、さらにその奥にいたボルガが急に尻もちを着いて無様な声を上げた。


「気をつけて」


 声をひそめながら進み、2人の前に出たところで剣を抜き、真横に腕を伸ばした。


 橋を遮る形で現れた1人の姿によって。


 そいつは格好からして、異質さを漂わせていた。

 黒い甲冑で身を包み、胸の前まで伸びた白髪が特徴であるが、顔は何かがおかしい。

 ゆっくりと身を起こすと、異質さに納得した。


「……仮面?」


 そいつは顔を木でできた仮面を被り、目の部分だけくり抜かれ、索漠とした顔を向かい合った。


「なんなんですか、奴は」

「多分、カーポで言ってた奴だよ」


 尻を着いたまま声を上擦らせるボルガ。彼も剣を持ってはいるが、恐らく戦力には含めそうにない。

 アカネも困惑しているのか、体を強張らせ、動こう――


 乾いた空に金属音が木霊する。


 異質な鬼が瞬時に地面を蹴り襲ってくる。それをすかさず剣で受けた。


 が、何かが違う。


 頭上からの一撃が膝まで衝撃を走らせた。


「――斧っ?」


 鬼の一撃は爪によるものではなく、斧の衝撃が空を斬る。乱暴に鬼は斧を振り回し、迫ってくる。

 くそっ。一撃が重いっ。

 柄の長い斧。一撃、一撃が大振りだけど、長くて重さのせいで、その都度衝撃が全身を抜ける。

 ったく、手が痺れて痛いっ。早くしないと。

 刃で受けた斧を払い退け、地面を蹴った。斧を横にいなす。確かに一撃は重い。けれどその分、隙は大きい。その隙に――

 瞬間、いなした斧の刃が180度回転し、体を捉える。


「――っ」


 刹那、両膝を折り、しゃがみ込む。刃が頭上を霞め、髪を揺らす。

 感心する間もなく、刃は頭上に上り、しゃがみ込む頭を狙い、降り注ぐ。

 仮面を被りながらもよくやるよ、ったく。

 剣を横に構え、そのまま受け取る。

 渾身の一撃、といいたいのか、地面に亀裂が割れる。

 強いな、けど――

 こちらも渾身の力で斧を押し返した。

 一瞬、鬼がよろめく。

 その隙を突き、肩からタックルして鬼を押し倒す。

 すかざず立ち上がり、刃を鬼の首に添えた。

 恐れているのか、平然としているのかは仮面のせいでわからない。

 黒い目の奥の瞳孔を感じたとき、反射的に鬼が手にした斧を蹴り飛ばした。

 クルクルと地面を回転して、斧は尻もちを着いたボルガの元で止まる。


「触らないでっ」


 そのまま斧を奪おうとするボルガを静止した。


「それを持てば、あんたが狙われる。触らないでっ」


 と、鬼を睨み叫ぶ。鬼の表情は見えないが、笑った気がした。


「お前、やるな」


 一時の戦闘であっても、つい褒めてしまう。


「何、鬼なんか褒めるんだよ、そいつは――」

「お前、人だろ」


 戦い、か。

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