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縁鬼乱舞  作者: ひろゆき
21/61

 第二章  2  ――  鬼の爪  ――

 第二十一話目。

 やっぱり、連戦?

                    

            2



「はあああああっ」


 一撃を受け止めると、あらぬ方向から男の咆哮とともに一本の光が迫ってくる。すぐさま刃の閃光だと気づいた。


 でもまずは。


 受け取っている刃の向きからして……。

 暗闇のなかに拳の一撃を加えた。柔らかい肉に当たる感触と同時に、「キャッ」と女の声が漏れ、隙が生まれた瞬間に迫る刃を振り払った。

 キンッと金属音とともに剣が頭上に回転して飛ぶ。

 なんだ、これ?

 そのまま落ちてきた剣を掴むと、2つの方向に剣先を向けた。最初に斬撃を止めた方向と、刃を突き刺してきた方へと。


「なんなんだよ、お前らっ」


 戸惑いから声が上擦ってしまう。ただ、刃の先には2人の姿を捉えている。

 1人は石畳に尻もちを着いて頬を歪める女。もう1人は剣を払われた衝撃で手が痺れたのか、右手を掴んで片膝を着く男。痛みに頬を歪めている。

 しかしなんだ、この手ごたえのなさ。見る限り、装備はそれなりの武器みたいだけど、装備者の度量が合っていない気がした。


「あんた、鬼でしょっ。さっさと退治されてしまえっ」


 はあっ?

 乱暴に叫んだのは尻もちを着く女。丸い目をした女はより目を見開き、叫んでいた。


「だから、なんでそうなるんだよっ」


 一方的に責められ困惑していると、憎らしげに立ち上がる女。

 両手にはナイフよりか長い短刀を握っている。赤みかかった髪を首筋まで伸ばし、やはり大きな目が特徴に見えた。

 左頬の辺りにホクロがあるのが印象的で、細く小さな女であった。

 男はまず金髪が目についた。体格がよくても、どうも隙が大きい。眼光からも、どうも気迫はない気がする。

 剣技はあまり得意ではないのか、と疑いそうになる。互いの一撃を受けた感触からして、女の方がまだ実力はありそうだ。


「あんた、鬼なんでしょっ。よくもまあ平然と町を歩けるわねっ」


 女はクルリと体勢を戻すと、右手に持った刃を向けて警戒し、黒い服のホコリを払った。

 仕草からして、やはり動きは俊敏そうだ。けれど、


「だから、なんで僕が鬼なんだっ」

「うるさいっ」


 刹那、再び地面を蹴り、迫ってきた。

 咄嗟に左手に握った短刀を捨て、自分の剣を握り直した。慣れない二刀で戦うよりこちらの方が戦いやすい。

 女は想像通り、隙を突いてくる。だが、鬼の爪みたく刃で突いてくるのではなく、斬撃を主にしているみたいだ。

 早い。けど、まだ粗さがある。これが人と鬼との違い?

 俊敏に飛び回る女。円を描くように距離を測りつつ、斬っては下がって、を繰り返す。

 飛び上がった女はそのまま刃を振りかざすが、それもすぐに受け止めた。刹那、宙返りで後ろに飛ぶと、地面にしゃがみ、腕を交差する。


「あんた、さっき男の鬼を殺していたじゃないっ」

「そうだ。それが鬼の証拠だろっ」


 と、それまで動かなかった男も声を荒げる。地面に落ちていた剣を拾う仕草はなく、やはり戦闘は苦手か。

 なら、やっぱりこの女…… でも。

 

「いい加減にしろっ」

「うるさいっての。どうせ、鬼同士で戦って〝修羅〟を目指してんでしょっ。人を巻き込まないでっ」

「だから、なんだってんだ。よく見ろっ。僕は人間だっ」


 まったくっ。〝修羅〟とかわけのわからないことばっかり言いやがって。

 イラついて暴れてやりたかったけれど、騒ぎは起こしたくない。理性が働いたのか、面倒になったのか、自分でもわからないまま手を広げ、甲を見せて叫んだ。

 鬼は爪の鋭さが特徴。刃みたく伸ばしてなくても、先端が鋭い。これで気づいてくれよ。


「ほら、爪は伸びてないし尖ってない。人間だっ」


 さらに叫んでやると、女は訝しげに眉をひそめ、大きく丸い目を細めて睨んできた。

 何度も瞬きをして首を傾げると、構えていた手を下げる。

「ああああぁああぁああっ」


 鬼っ?

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