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縁鬼乱舞  作者: ひろゆき


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第2章  1  ――  カーポ  ――

 第二十話目。

 今回より二章目です。


           第2章


            1



 刃を振り払ったとき、一気に血しぶきが飛び、白い服に鮮血が滲む。

 頬にも飛び散った血。なまじ温いからこそ、余計に気持ちが悪い。


 やはり、鬼はこれが普通だよな。


 さらに剣を振って完全に血を払うと、数分前に襲ってきた男の鬼にあらぬ期待を抱いてしまった自分が情けなくなる。

 向かっていたのはカーポと呼ばれる町。

 かなり発達した町だと知らされていて、鬼への警備は十分なのだろうけれど、その道中に男の鬼に遭遇した。

 屈強な男の鬼。見た目からして力任せに攻める鬼。


 ―― お前はなんのために生きる? 


 あの女の鬼と同じ問いを投げかけたけれど、一蹴されて力任せに襲ってきた。

 けれど隙は大きく、攻撃を受けることはなく、こちらから一撃を加えていた。

 僕の期待に応えてくれる鬼ではなく、戦いは終えた。

 これが普通。

 あの女の鬼が変だったんだ、と自分に言い聞かせ、町へと急いだ。



 


 ―― ちょっと、頼んでもいい? 


 カーポに着き、町中を探索していても頭はすっきりとせず、ラピスの声がよぎってしまい、足を止めて頭を抱えてしまう。


 ―― 裏切者っ 


 目蓋を閉じるなか、暗闇のなかに憎しみの籠った叫喚が轟き、鼓膜の奥に木霊する。

 忘れそうな記憶が蘇り、額に触れていた手に力がこもり、逃げ出したくて目蓋を開いた。

 通りの奥から差し込む夕陽が眩しく、すぐに眉をひそめてしまうが、現実に戻れたことに安堵した。

 夕陽の眩しさもあったけれど、ふと振り返った。

 カーポは穏やかな時間が流れていた。町の入口はしっかりと警備の者もいて、鬼への対策はしてあった。

 だからこそ、住民らも安心してか賑わっている。それなのに、どうしてか背中が張り詰める。


 町の様子からして緊張は少なかった。フォルテのときみたく、冷たい視線はないので、居心地の悪さはない。

 それでも石畳を歩いていると、町の状況は見えてくる。

 表通りを歩いていると、和やかな声が飛び交うけれど、

 なんか、空気が冷たいな。

 横道に入ったときからである。空気の層が変わり、冷たくなった気がした。

 それまで夕陽が眩しかったはずなのに、いつしか建物が組み合い、陽を遮断させていた。

 陽を拒んだ裏路地は湿気が多く、鼻がむず痒い。いつしか人の気配もない。

 これが裏の顔ってことなのか……。

 町の在り方を想像していると、不意に足を止め、県の柄に手をやる。

 それまで甲高く鳴っていた石畳を叩く音が止む。


「なんか、用ですか?」


 ずっと気配は感じていた。

 いつからだった? 町に入ってから? いやもう少し前からだったような……。


 返事はない。


 振り返ったとき、建物の影によって薄暗いなかに人の気配はない。

 でも風の流れが違う、よな。誰か、いる。

 こちらの問いかけに反応しないってことは、後ろめたさがあるってことだよな。仕方がないよな。

 抜刀すると、物陰から2つの影が左右に割れ、飛んだ。


 2人…… 戦う気は満々ってことか。ったく、立て続けに面倒くさい。


 足腰に力を込め、剣を構えたとき、影が1つ迫ってくる。

 暗闇に弧を描く光が頭上から降り注ぐ。

 剣を横に構え、光を受け止めるのと同時に、火花と金属音が弾く。


「覚悟しなさい、この鬼っ」


 甲高い女の声が広がる。

 はあっ?


 連戦?

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