第二部 第四章 4 ―― 血が騒ぐ ――
第百四十二話目。
親子……?
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親子?
なんだろう。急に気持ちが少しだけ軽くなった。
親子だとわかると、その異様な力に納得しそうになる。ヒスイと親子ならば、と。
ただ、ヒスイより強いのだけは肌に刺す威圧感が物語っている。
「人間、名はなんという?」
「……ユラ」
答えたくはない。けれど、答えなければ、体を吹き飛ばされる。
意地より恐怖が勝ってしまい、弱々しくも答えてしまう。
答えなければ、完全に殺される。
獰猛さが少し緩み、鬼は口角を吊り上げる。
「鬼を相手に委縮せず、過大評価しない実直な態度。気に入った。ワシの名はオーデルだ」
オーデル。
恐怖に硬直していると、オーデルはおもむろに、そばにあった大槍に手をやる。
自分の背丈ほどもある大槍を軽々と持ち上げ、クルクルと回すと、僕に向けて刃で捉える。
やばい。動けない。剣に手を触れることすら、恐怖が邪魔をして止まらせる。
「お前、修羅に対して、聞きたいようだな」
心を見透かされ、頷くこともできない。
「なら選べ。無謀に鬼に挑み、命を捨てるか、この場から去り、途方もない時間を浪費して、世界を彷徨うか」
オーデルは鼻で笑い、顎をしゃくる。
完全に遊ばれている。蔑まされているんだ。
少しでも気が緩めば倒れる。深呼吸すると、震える手でなんとか剣を抜いた。
より意識しなければ、手に力を入れられない。
全身が震えそうだ。でも、震えれば終わり。
堪えろ。集中してこいつを捉えなければ。
「――ほお」
剣先が震えるのを堪えても、ガタガタと揺れようとしている。
何を感心しているんだ。クソッ。
「その勇猛さ。混血ゆえに、鬼の血が騒いだか」
……混血。そうだよな。ヒスイから聞いてるよな。
ほんの一瞬、ヒスイに視線を傾けると、細身の鬼がオーデルに頭を下げて道を譲る。
オーデルとの間を譲るように。
細身の鬼に意識が傾けていた合間に、オーデルが動いたのを視界の隅が捉える。
眉間が歪む。
さっきまで僕を捉えていた刃が地面に下げられる。
禍々しかった表情がほころび、口角が上がる。
何を笑って――。
「逃げなさいっ、ユラッ」
「――っ」
ヒスイの叫喚に戸惑う間もなく、腹に激痛が走る。
瞳孔が開くと、眼前にオーデルの姿が視界を遮る。オーデルの獰猛な顔が僕を捉え、狡猾に笑う。
視線が落ちたとき、自分の惨めさに後悔が襲う。
僕の右脇腹に、オーデルの大槍の刃が貫いていた。
いつの間に。
剣で防げなかった。
体を反らして避けることもできない。
そもそも、動きが見えなかった。ヒスイが叫んでいなければ、胸を貫かれていた。
「所詮、それが人間の限界よ」
感情の消えた冷たい声が響く刹那、大槍が体から抜かれる。血が脇と背中から噴き出た。
限界って…… えっ?




