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縁鬼乱舞  作者: ひろゆき
13/61

第1章  11  ――  希有  ――

 第十三話目。

 戦うべき?


            11



 鬼は意味がわからない、と手を顎に当て、唖然としている。

 

「別に僕はお前を倒しに来たわけじゃないから」

「町の男どもに唆されたんじゃないのかしら。私を屈服させ、楽しんでくればって」

 

 とまたしても誘うように胸に手を当てるけれど、僕は毅然と鬼を見据えた。

 すると面白くない、と呆れ、手の平を空に向けてお手上げ、と首を竦めていた。


「僕はお前に聞きたいことがあったんだ」

「――聞きたいこと?」

「お前はどうして、町を襲わないんだ?」


 これまで町の男がこいつを襲ったのだとしても、その報復で町を襲うこともあり得るはず。それなのに、そうした話はなかった。

 だからこそ、最初に浮かんだ疑念をぶつけてみた。すると鬼は一息ついて腕を組む。


「そんなものは簡単よ。ただ興味がないだけ」


 抑揚を抑えた声だが、しっかりとした口調で断言する鬼。まっすぐにこちらを見る姿に揺らぎはなかった。

 なぜだろうか。これまで挑発し、わざと艶めかしい動きをしたときよりも、今の方がよほど気持ちも入ってしまい、釘づけになってしまう。

 引き込まれない、と瞬きをして鬼の顔を正面から見ると、その特徴に初めて気づいた。

 鬼の左頬、目の下辺りに、縦に小さな痣があった。それはどこか、涙の形をしているように。

 けれど、それよりも。


「興味がない? けど、この森で男の鬼に会ったぞ。そいつは闘争心を剥き出しにしていたけれど?」

「ああ、あのモブね」

「知っているのか?」

「いいえ。気配は感じていただけ。どうも、私に怯えているのかわざと避けているようだったから、無視してただけよ。何? やっぱり戦う?」


 と、鬼は顔の前で手を開き、鋭い爪を強調させた。

 無数の剣が阻んでいるけれど、殺気は足元にまでまとまりついてくる。


「奴が本来の鬼の姿、だよな。だったらお前は希有な存在ってことか?」


 僕の問いにまたしても拍子抜け、と首を傾げる。


「あなたも変わった子ね。私を犯すわけでもなく、町を守るために戦うでもない。あなたの目的は?」


 鬼は残念がりながら口を尖らせると、僕も強がって腰に手を当てた。


「別に僕はお前を倒すためにここに来たわけでもない」

「あら、冷たいのね。それだったら、フォルテの住民を見殺しにするってことかしら?」


 茶化すように銀髪を撫でる鬼。挑発のつもりとしても、乗る気はない。


「でも、あのモブは倒したでしょ?」

「奴は話をする前に襲ってきたから。僕としては仕方がなかったと思ってる」

「あら優しいこと。だったら、私も襲わないのかしら?」

「お前が戦わず、話をしてくれるっていうのなら」

「話? 鬼に対して話とは、あなたも希有な人間ってことかしら。で、話っていうのは?」

「お前は何を生きがいにしているんだ?」


 ただ、話したいだけ。

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