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縁鬼乱舞  作者: ひろゆき


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 第二部  第三章  6  ――  鬼神  ――

 第百二十九話目。

 ……信じたくない。

                    

            6



 真剣な眼差しを向けるブルートに、真っ向からぶつかり、叫喚してしまう。

 それだけでは気持ちは治まらず、右手を大きく振り払った。

 そんなの危険すぎる。


「そんなの、鬼の気分次第じゃないか。いつ町に襲ってくるかわからないんだから」


 感情的に叫ぶと、ブルートは僕を宥めるように苦笑し、両手を広げて制した。


「以前、鬼が町を掌握している町に行ったことがある。そこは鬼が人に扮装し、外の者を騙していた」

「……ジュストね」


 アカネが小声で言うと、頷くのと同時に、脳裏にはタカセの狡猾な顔が浮かび、唇を噛んでしまう。


「その可能性はないの?」

「やけに危険な町にいたんだね。でも、この村に対してはないと思うよ。ここの人らはみんな人間だよ」

「でも、鬼の気まぐれでしかないのは、変わりないじゃん」


 どうしても納得することができない。諦めずに食い入ると、ブルートは小さく頷く。


「この村の人はみな、いい意味でも悪い意味でも純粋なんだ。鬼のことを信じ切っている。さっきもそうだろ、僕らみたいな外部の者でも、友好的にすぐに受け入れてくれた。まあ、それが危ういところでもあるんだけどね」

「そんなの信じられない……」

「僕も最初に聞いたときは、信じられなかった」


 ブルートの狼狽する様子に、かぶりを振るしかなかった。


「前に聞いたんだ。この村に賊が襲ったらしいんだ。それで賊が村を支配しようとしたとき、その鬼がふもとに降りてきて、賊を始末したらしい」

「じゃあ、そのときに村人だって殺されたんだろ」

「それが不思議と村人は誰1人、殺されなかった。殺されたのは賊だけで、結果的に村を救ったんだ」


 あり得ないだろ、そんなの。村人を助けた?

 疑いを向けるけれど、ブルートは真剣な目で返してくる。


「それが確定となったんどろうね。鬼は自分たちを殺さない、と」


 頭を抱えてしまう。そんなことがあるのか。

 

「別に鬼に殺されてもいい。極山の鬼に殺されるのは、村人にとっては光栄なんだよ」

「嘘でしょ」


 先に驚嘆の声を漏らしたのはアカネ。


「僕も信じられなかったけど、昔に聞いたとき、みんながそう断言したんだ。そのときに鬼は神格化してしまった」

「だから鬼神……」


 弱々しく呟くと、ブルートは黙ってしまう。


「ねえ、だったら、なんでこの村は地図に載っていないの? そんな独特な町なら、目立って地図に載るはず」

「独特だからだよ。強靭な鬼がこの村に存在するというのが話として膨らみ、恐怖がこの辺りを支配し、人が避けるようになった。そして恐怖が形となり、地図から抹消されていったんだ」

「そんなのって……」

「でも、その鬼が村に降りてきたのは、そのときだけなんでしょ。それなのに地図から消すなんて信じられない」

「降りてきてるんだよ」

「――え?」

「鬼は降りてきてるよ」


 鬼が人のために……。

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