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縁鬼乱舞  作者: ひろゆき


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 第二部  第三章  5  ――  鬼を祀る  ――

 第百二十八話目。

 そんな、バカなこと。

                     

           5



 鬼を祀る。

 あまりにも唐突すぎる返事に、言葉を失ってしまう。


「鬼? 本当にそんなことある?」


 辺りを気にしていたアカネが声を潜めて聞き直すけれど、ブルートは静かに頷いた。

 鬼を祀る。

 それだけで、急に警戒心が高まってしまい、自然と剣に手を添えてしまう。ふと辺りを見渡すと、村を行き交う大人に視線が止まる。

 ほとんどの大人の男が腕の辺りに刺青を彫っていることに気づいた。

 どうも、信仰的な影響が強いのかもしれないな。


「そう心配することじゃないよ。そんな危ない人たちじゃない。危害を加えることはないよ。大丈夫」


 和らげに話すブルート。強張っていた表情は綻んでいた。

 本当に大丈夫なのか……。

 でも、ここで騒ぎを起こすのも問題か、とアカネに目配せして促した。

 アカネも察したのか、小さく頷く。


「じゃあ、行こうか。それについても話すよ」


 僕らには気づいてないらしく、改めて促してくる。

 それにしても、確かこいつもコスモスって言っていたよな。それなのに、鬼を祀る村にいるって…… 何かあるのか?


「ただいま。ごめん、ちょっと足を挫いちゃったみたいなんだ」


 導かれたのは、やはり木造づくりの小さな家。ブルートの家なのか、率先して入ると、誰かに向かって話した。

 しかし、家には人影はない。


「あれ、なんだ。誰もいないのか。そっか、狩りにでも行っているのかな。ほら、入って」


 ブルートに続いて入ると、家は部屋としての仕切りがなく、建物自体が1つの部屋となり、中央に囲炉裏があった。

 周りには小さな本棚などが設置されているが、なかも簡素な造りとなっている。

 言われるがまま入り、囲炉裏の前で座った。囲炉裏を囲うように3人が座り込む。

 ケガをしていたブルートは、お茶を僕らに出すと、自分には包帯を持ち出し、自身の前に広げた。

 アカネは物珍しそうに周りを見渡し、最後にブルートで止まる。


「ね、ここってブルートの家なの?」

「いや、ここは僕が世話になっている人の家だよ」


 ブルートは捻挫して赤く腫れた右足の足首に、包帯を巻きながら答えた。


「世話にって、何があったの?」


 包帯を巻き終えたブルートはギュッと包帯を縛り、顔を上げる。


「1年ぐらい前かな。この近くを捜索していたとき、山で足を挫いて遭難していたんだ。それで、近くを狩りで訪れていたこの家の主に助けてもらってね。それから、ずっと世話になっているんだ。いやあ、ここの生活って、なんか心地よくってね」


 大げさに笑いながら手を叩くブルート。どうも僕らとは感覚が違うみたいで疲れてしまう。

 アカネも呆れて頭を抱えている。


「確かにあんたがなんでこんなところにいるのか気になるけれど、私が聞きたいのはそんなことじゃないのよ」


 話を遮ると、アカネは窓のある方向を眺めた。

 壁を隔てた先で見つけた、祠を眺めて。


「あの、あの祠って一体」


 言葉に詰まるアカネに代って聞くと、ブルートもアカネと同じく祠の方向を眺める。

 それまでのおどけた表情が険しくなる。


「うん、言ったろ。この村は鬼を祀ってるって」

「鬼って、住民が鬼に心酔しているの?」

「どうだろうな。少し違うかもしれない」

「違うって?」

「村の近くに極山って呼ばれるところがあるでしょ。あそこには強靭な鬼がいるって言われてるんだ。

 そして、この村は恐らくその縄張りの一部になってるらしい。だから、ほかの鬼はここをあまり襲うことはない。

 ある意味、その鬼によって守られているんだよ」

「――っ」


 言葉が出ないままかぶりを振ってしまう。


「だから、人は鬼を崇めるようになったらしいんだ。そして、その鬼のことを〝鬼神〟として、あの祠で祀っている」

「そんなのあり得ないっ」



 鬼神?

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