表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
縁鬼乱舞  作者: ひろゆき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

123/149

 第二部  第2章  13  ――  ここまで  ――

 第百二十三話目。

 バカな奴ら。

                     

            13



「お前たち、修羅に会おうとしているのか?」


 呆気に取られ、声を漏らすクバンに静かに頷いた。


「本当にバカな奴だ、お前たちは。命知らずもいいところだ」

「わかっています。無茶だってことは。でもやらないといけないから」


 これだけは譲れない。じっとクバンを見据えていると、クバンは頭を抱えてしまう。


「それは、イリィに会うためでもあるってことだよな」

「まあね」

「そうか。ありがとう」


 クバンが自然に発した感謝の言葉に耳を疑ってしまい、アカネらと目を合わせてしまう。

 アカネも唖然としてしまっている。

 やはり聞き間違いじゃなかったらしく、つい笑ってしまった。


「でも、さすがに私もこのルートを行くのはちょっと考えものだと思うけど」


 自然と僕らの進むべきルートが定まろうとしていると、ヒスイが水を差すように呟いた。


「きっと、これまでの戦いとは比べものにならないほどの戦いになるわよ。それこそ、死を覚悟するほどね。情報を得るだけなら、安全な道を進むのが無難ね」


 ヒスイの忠告は、思いのほか鋭く胸に刺さる。それはヒスイがこれほどまでになく真剣な口調であり、冗談ではないことがより伝わり、胸を締めつける。

 ヒスイが警戒するほどの鬼が存在し、危険視しているのだ、と。

 確かにヒスイの言いう分もわかる。けれど……。


「でも、鬼の情報を得るには、コスモスに接触するのが一番だからな。警戒しながらも、進むしかないってことか」

「そうなるのかしらね、やっぱり」


 腕を組んで逡巡するけれど、それしかない。


「セーニョにはアカネの知り合いもいるんでしょ。だったら、やっぱり向かうべきなんだろうね」


 修羅に匹敵する鬼が存在している。

 噂であったとしても、言葉として理解してしまうと、どうしても緊張から体が固まった。

 でも、決断しないとな。

 それでも僕は行く、と決意を込めた眼差しをアカネに向けると、アカネも同じく強い意志を込めた淀みのない目をしていた。

ヒスイは茨の道になるであろう旅路を、楽しむように笑顔を献上してくれる。


「いいんだよね」


 念を押してみた。気持ちは揺らがないと決めていたけれど、声は震えそうになっていた。

 アカネとヒスイから変わらず笑顔を献上してもらい、ようやく僕にも笑みがこぼれた。


「なら、俺はここまでだな」


 高まっていく気持ちを急激に冷ましたのは、ランスの一言。

 胡坐を組みながら、ランスは鋭く僕らを見据えていた。

 そうか、そうだった。

 ややあって、ランスの真意に気づいた。

 ランスが旅に同行するとは言っていない。ここに来たのは、偶然レガートで煙を見たから。

 しばらく一緒にいたからか、勘違いをしてしまった。

 ランスとはレガートで別れる予定だったんだ。それが少しだけ遅れただけだ。


「そっか。お前は帰るって言ってたよな」


 本音としては、このまま同行してほしいけれど、無理強いをするわけにはいかない。


「……俺は…… ここに残る」

「――?」

「あら? この数時間で愛着でも湧いたかしら?」


 突拍子のない決意に耳を疑っていると、ヒスイが調子を戻したのか茶化した。けれど、ランスには通用せず、フンッと鼻を鳴らした。

 僕らの話を聞くことはせず、部屋を見渡した。


「なあ爺さん、あんた、ここの生活って十分にできてるのか?」

「ん? ワシか。どういう意味だ?」

「年寄りじゃ、何気ない生活も一苦労じゃないかって聞いてんだよ」

「ったく。どいつもこいつも人を年寄り扱いするなっ。別に苦労はしておらん。ただ町の連中が勝手に身の回りのことをやっているだけだ」


 そういえば、さっきの女の人もクバンさんの体を気にかけて野菜を持って来たのかも。それに、薪のことを気にかけていたし。

 そうか。確かにクバンさん1人じゃ辛いこともあるよな。ここだと。


「だから、俺はここに残ってやるよ。あんたの生活を助ける」

「ランス、あなたっ」


 予想外の反応だったのか、アカネは声を上擦らせて驚く。

 ランスは照れくさそうに顔を背けてしまう。


「いらん。どいつもこいつも、年寄り扱いしよって。ワシは1人でも大丈夫だ」

「いいじゃん、爺ちゃん。若い者の厚意は素直に受け入れるべきよ。でなくても、こいつは根が腐ったひねくれ者だからね」

「どいつもこいつもワシをバカにするなっ」


 またクバンの怒鳴り声が響いた。


 ここで別れる、か。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ