第二部 第二章 3 ―― 不可解さ ――
第百十三話目。
また頭が重い。
3
目が覚め、見知らぬ天井にまた驚かされた。
これで何回目だ、と。
ただ、気のせいか前回のレガートで目覚めたときよりも、頭は軽く、意識もしっかりとしていた。
それだけ慣れてしまったのか?
病院のベッドの上。
何気に手の平を眺め、不思議な感覚にげんなりと肩を落としてしまう。
あの黒い靄のせいなのかな?
「何、暗い顔しているのよ」
大きな溜め息がこぼれそうになっていると、アカネのげんなりした声を浴びてしまう。
「仕方ないだろ。まさか、またあんな黒い靄に襲われるなんて思わなかったんだから」
正直な気持ちを吐露してしまう。どうも体も重たい。
「ほんと、あんたも争いが好きみたいね」
きっと病院に着いてからも、付き添ってくれていたんだろう。
アカネに申しわけなくなってしまう。不意に聞こえた声に、顔は上げる。
すると、ほぼ同時に病室にヒスイとランスが入って来た。
「あれ? ヒスイ来たんだ」
「まあね。煙も消えていたし、もう騒ぎが収まったかなって思ったからね」
と嬉しそうに話すヒスイに、アカネは目を丸くする。
「あっ、ちょっとヒスイッ。またなんか暴れたわねっ」
ヒスイのそばに駆け寄り、ヒスイの服の袖を掴み、引っ張って睨みつける。
よく見ると、ヒスイの服の袖口が切れて解れている。そこにアカネは憤慨しているようだ。
アカネの憤慨を軽くいなし、ヒスイはこちらに顔を向け、
「坊やが病院にいるってことは、鬼か強い人間と戦ったってことかしら?」
鋭い噛んだ。ヒスイの問いに小さく頷いた。
そこで、一戦交えたあのフードを被った鬼のことを伝えた。すると、何か思い当たる節でもあるのか、鼻を擦りながら考えてしまう。
「多分それ、私が戦った奴と同じ奴でしょうね」
「――えっ? 戦ったの?」
突然の告白に驚くなか、ヒスイは驚く様子を嬉しそうに腕を組んで楽しんでいる。
「だから、そんなに怒んないでよ。これは不可抗力なんだからね」
ヒスイは嬉しそうに手をひらひらと揺らしておどけるが、アカネは釈然としつつも、小さく頷いた。
「でも、お前がそれだけ苦労するってことは、あいつはそれだけの奴ってことなのか?」
ずっと様子を伺っていたランスが聞くと、ヒスイも表情を険しくする。フウッと息を吐いて、
「かなりの実力者ね。私も多少は本気を出しちゃったから」
いつも飄々として、真剣な反応をあまり見なかったので、警戒するヒスイに3人とも目を合わせ、言葉を失った。
黒い靄に邪魔されたにしろ、無事であったことがどこか不思議になってしまう。
「でも、奇妙なことは確かね。森のなかに突然現れたから、てっきり縄張りでも犯したのかなって。でも、急に消えちゃって。変な奴だったのよね」
ヒスイがどれだけの激しい戦いをしたのかはわからない。けれど、服の解れ具合を考えると、それなりだったのは想像がつく。
「そういえば、あの鬼、人に対してもあまり好戦的でもなかったわね。今思えば、襲われた人ってあまりいなかったもんね」
奴と戦っていた状況を思い出したのか、何度も頷くアカネ。
確かに奇妙ではあるか。ってか、それでよく助かったな、僕ら。
鬼の不可解さに疑念を強めると、4人ともが思い悩み、頭を抱えてしまう。
「おや、気づいたらやけに人が増えたね」
重い沈黙が鎮座していたとき、奥から白衣を纏った若い男が入ってきて、僕らを見て歓声を上げた。
「どうだい、体の調子は?」
それだけの力……。




