第二部 第二章 2 ―― 老人 ――
第百十二話目。
何やってんだっ。
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あのあばずれっ。
それまで手持ち草で頭を掻いていたのだけれど、一瞬にして重くなり、頭を抱えてしまう。
なんで、お前がここにいるんだよ。
「おい娘、お前もそう思うだろ、あいつらは危険だって」
「あいつら? 誰のことかしら?」
「何を言っているんだ、あの連中、コスモスだっ」
「――コスモス?」
急に話しかけられ、呆気に取られながらも、とぼけるヒスイ。
頼むから、問題を起こすなよ。
すぐに引き留めるべきだろうけれど、つい腕を組んで見守ってしまう。
老人の話も多少聞きたかったから。
「大体、なぜお前らは、そう簡単に信じるんだ、自分たちのことは自分で守ろうという気概はないのかっ。どいつもこいつも自分のことで精一杯。人に頼ろうとするなっ」
「だから、俺たちだって、そんな鬼に勝てるなんて思えないんだよ」
どうやら、老人は町にとって厄介者らしく、周りの男らも呆れる。
「あら、だったら、私には関係なんじゃないの? 私はただの旅人よ」
騒ぎを見守っていると、ヒスイが老人に対して首を傾げる。
まったく、あんなジジイ、無視していけばいいのに。
「ねえ、それより今日、3人の旅の人、見なかった? 私の知り合いなんだけどはぐれちゃって。この町に来たはずなんだけどさ」
憤慨する老人を軽くあしらい、男らに尋ねるヒスイ。きっと俺らを捜しているんだろ。
しかし、よくもまあ、堂々としていられるものだ。自分は鬼だから避けるとか言っていたくせに。
「なんだ、お前も鬼を追っている類か。なんでそんな無謀なことを」
ヒスイの話を聞いていた老人が顎髭を掴み、ヒスイに標的を変えた。
ヒスイは呆れて項垂れると、肩をすぼめてみせる。
「なんでそうなるかしら? あなた、話聞いてた?」
多少口調に棘が増すヒスイ。どこか面倒そうにする姿を見ていると、背筋がむず痒くなってしまう。
ヒスイは手を回し、広げたり閉じたりを繰り返している。
どうも嫌な予感がしてしまう。手袋をしながらも、爪を伸ばすかどうかを躊躇しているように見えてしまう。
アカネが薦めた手袋をしているので、大丈夫だと信じたいのだけれど、あいつは鬼。自分勝手に動くかも。
離れておこうとしたけれど、踏み込んでしまう。
「いいか。お前らみたいな若いモンが下手なことをする必要はないだろっ」
「だ、か、ら、おじいちゃん。私の話、聞いてる?」
一層ヒスイの声が鋭くなり、背中に回していた手を顔の横で広げてみた。
あのバカッ。
「人の話を聞かないと、嫌われ――」
駆け寄ってヒスイの右手を無理矢理掴んだ。
「何やってんだ、お前はっ。ほら、行くぞ」
これ以上眺めていれば、騒ぎを起こしかねない。そうなれば、もっと厄介だ。
ヒスイの腕を引っ張り、その場から引き離した。
「あらあなた、意外にも大胆なのね。お姉さん、驚いちゃうじゃない」
「何、言ってんだよ。騒ぎを起こすなよ」
酒場から離れると、またふざけるヒスイ。溜め息を漏らしても、ヒスイは「ハイハイ」と面倒そうに頷く。
「――で、あの2人は?」
「今は病院だ」
問題を起こすなっ。




