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縁鬼乱舞  作者: ひろゆき


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第1章  9  ――  小さな社  ――

 第十一話目。

 町にはいたくない。

                    

           9



 町を出て、西に少し歩くと森に入る形となった。この森は昨日、男の鬼と遭遇した森ではあったけれど、方向は反対側となっていた。

 開けた場所に出ると、そこは古よりこの地に関わる神を祀るためなのか、小さな社が建てられていた。

 こじんまりした社。木の壁は長らく手入れを行われなかったのか、所々が朽ちて割れており、柱が剥き出しになっている。どこか虚しさを漂わせていた。

 一方、朝日が射し込むなかでも、どこか気味悪さを放つ不気味さがあり、足を竦ませた。

 体を委縮させるのは、建物が放つ雰囲気だけではなく、社に続く敷地に佇む、無数の剣の姿が僕の足を竦ませた。

 剣は閑散とした地面に突き刺さっており、刃は折れていたり、刃だけが刺さっていたりと、刃こぼれの酷いもの。なかには血なのか、赤く汚れているものもある。

 どこか行く手を阻む形で。


「……なんだよ、これ?」


 あたかも壮絶な戦いを想像させる光景に、声が続かない。両手に自然と力がこもる。

 まるで剣が墓石みたいに見えてしまい、視線は外すことができない。残酷な光景に胸の奥を無造作に掻き乱されたみたいで、気持ち悪い。

 どれだけの戦闘があったんだ? それだけの人数がここで…… それだけここに居座る鬼が強靭な奴なのか?

 感情的に町を出たことを、今さらになって後悔し、全身が肌寒い。


「へえ。今日はいつもより若い子なのね。面白い」


 逃げ出すことすら臆してしまいそうな、全身を縛りつける刺々しい声が肌を裂くようにして舞う。

 辛うじて残る体温すらも奪いそうな女の声に、息が詰まってしまい、目を見開いてしまう。

 ……お前は。

 短い言葉ですら恐怖で出てくれない。辛うじて視線を動かしてみるけれど、姿を捉えるだけで圧倒されてしまう。

 声の主は社の屋根の上に鎮座していた。

 朝日に照らされた銀髪が陽光すらも跳ね返してしまいそうなほどに輝いており、背中まで伸びた銀髪が風にゆったりとなびいている。

 鮮明な青い衣装を纏っており、衣から出た腕や足は細く、足を組んで座り、肘を突く姿は艶めかしいく、心を惹き込まれそうな危うさを放っていた。


「何か用かしら? 坊や」


 人を弄ぶゆっくりとした口調は、僕を翻弄してくる。

 あたかも子供を眺めるごとき、キツネみたいに目を細め、艶めかしく口角を上げた。挑発するかのごとく舐める細い指先の爪は、刃物みたく鋭く光っていた。

 ごくりと息を呑んでしまう。

 女はさらに目を細め、ペロリと人差し指を舐めると、こちらの言動を図るように首を傾げた。


 ……女、の子?

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