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縁鬼乱舞  作者: ひろゆき


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 第二部  第一章  15  ――  感化  ――

 第百八話目。

 変わった?

                    

           15



 陽は沈んで少し肌寒く感じるなか、手持ち草になって口元を手で押さえ、欠伸を堪えた。

 ……にしても。

 ふと手を眺めてしまう。

 目に映るのは白い手袋。

 これまで手を隠すようなことはなかったので、どうも気持ち悪くてぎこちなかった。

 すぐに投げ出したいのだけれど、躊躇して項垂れてしまう。

 腰に手を当てて、憤慨するアカネの顔が浮かび、止まってしまう。

 なんか、あの子の言うことを聞いちゃうのよね、なんでだろ。


 ……本当、私も変わったわね。


 と、ブレスがある方向を眺め、自分の心境の変化に悩んでしまう。

 ふと山のほとりにある岩に座り、つい頬杖を突いてしまう。

 町の方向からはもう煙が見えていない。

 時間のせいで暗くなったのも重なっているけれど、それほど大事に至らなかったのだろう。

 ふと唇を尖らせてみた。

 大事になっていないことに安堵している自分がいた。それがどうも納得できないで首を傾げてしまう。

 私ってどうも感化されているみたいね。

 なぜか胸が熱くなるのを覚えていると、急激に肌寒くなってしまう。

 どこか空気が変わった鋭さを伴って。

 辺りを気にしつつゆっくりと立ち、手袋をゆっくりと脱ぐと、指を広げる。


 この気配、鬼?


 奇妙な気配がゆっくりと近づいていると、頬を裂くような強風が銀髪を靡かせた。

 刹那、爪を伸ばした右手を大きく振り払った。

 高音が響き、風が流れる。


「何も挨拶なしに手を出すなんて、無作法にも限度ってものがあるんじゃない?」


 爪の伸びた手を振りながらぼやくと、荒れた道の先を眺めた。

 道の先でしゃがみ、右手に剣を持った不穏な者に対して。

 全身を大きなマントで身を包んだ人物。奇妙な姿に警戒心が高まる。


 この雰囲気、やっぱり鬼かしら。


 ゆっくりと立ち上がる影。マントを靡かせながら振り返る姿に爪を伸ばした指をペロリと舐めた。


 そこで敵意を放った。


 気のせいか、荒れ地に咲く草が揺れた。


 これで少しは委縮してくれるといいんだけど……。


 ここで戦うのも面倒ね。またあの子も怒りそうだし、戦いたくはないんだけどなあ。

 ま、それは無理そうね。

 多少は期待していたけれど、鬼は気にせず剣を構え、瞬きをした間に距離を詰めていた。

 振り斬られる片刃の剣。

 爪であしらいながらも動きを追う。

 鬼と思える者は、細身で長身。でも斬りつける力や動きからしてきっと男ね。フードで顔は見えないけれど、動きが大振りだったりするし。


「あなた、やけに大胆なのね。初めて会う女の子にそんな乱暴に接してくるなんて。そんなに横暴だったら、嫌われちゃうわよ」

「…… ……」

「あら無視? 不愛想なのは本当に嫌われるわよ」


 繰り返される猛攻。

 寸でのところで避けたり、爪で流したりしながら茶化してみるけれど、反応はせず、より距離を詰めてくる。

 面白くないわね。多少は遊びなさいよ。

 

「っと、そんな余裕はないかしら」


 私の声に耳を傾けないのは、それだけ余裕がなくて、追い詰められていると思ったけれど、違うわね。

 本気で私を殺そうとして集中しているのか、殺戮以外に興味がなくて、無視をしているのか。


 でも、これぐらいの反応だった――


 刃を振り払ったとき、あらぬ方向からの一撃が襲う。反射的に首を傾かせる。右頬を痛みが掠める。

 視線を移すと、鬼は左腕を伸ばし、刃みたく鋭い爪の一撃を加えてくる。

 やってくれるわね。

 すぐさま腕を払い、間合いを取るためにバク転しながら後ろに下がる。静かに息を吐き、右頬をなぞった。

 親指を見ると、血が滲んでいる。さっきの一撃で喰らってしまったみたい。


 油断しちゃった。


 つい嘲笑してしまった。

 こんなのは久しぶりってとこかしら。

 ペロリと血のついた親指を舐めると、両手を広げ、爪を伸ばして構えた。


 油断なんて……。

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