第二部 第一章 14 ―― 知り合い ――
第百七話目。
大丈夫、なのか……。
14
ここで気を失えば、負けなんだ。
薄れていく意識のなかで奮起させ、アカネに体を支えられながら気持ちを整えていた。
「ねえ、大丈夫なの、ユラ。さっきの靄、また意識が飛んでない?」
「まあ、一応ね、大丈夫」
剣で体を支えつつも頷くが、アカネの切羽詰まる表情からして、思っている以上に見た目より疲弊しているのかもしれない。
町はまだ騒ぎが治まっていない。きっと動揺は広がっているのだろう。
それでも火の勢いは治まったらしく、多少は安堵した。
「なんだったんだ、今の鬼は?」
辺りを警戒しつつ聞くランスに、かぶりを振るしかなかった。
「わからない。けど、かなりの強さだよ。それもヒスイとはまた違う強さだと思う」
「あばずれより? そんな強い奴がなんでこの町に?」
「さあ、そこまでは」
率直な疑問にかぶりを振るしかなかった。無言のまま責めてきた鬼の意図が掴めず、途方に暮れるしかなかった。
「それより今は体を休める方が大事よ」
ざわめきがまだ収まらない町を眺めていると、話を割るようにアカネが強めに促した。
確かに。
さすがに今は休みたい。黒い靄は消えてくれたけれど、忘れていた疲労が一気に襲い、体が重くなる。
2人に支えられ、この場を移ろうとすると、辺りにいた住民らの視線が一方に集まっていた。
釣られて顔を向けると、町の入口の方から騒がしい声がこちらに近づいていた。
夜の闇のなか、背の高い影が近づいていた。揺れる影を眺めていると、馬に乗った3人の男がいた。
3人は通路の中心に来ると、馬を降り、近くにいた住民に何か話しかけている。不可解な姿に警戒心は拭えず睨んでしまう。
3人は共通の黒い服装でいる。
袖の部分にはどうやら装飾が施されている。何より、3人は腰に剣を下げており、その姿から物々しさを際立たせていた。
「……うわっ。最悪」
じっと3人を眺めていると、静かにアカネが呟く。訝しげに眉をひそめるのを見逃さなかった。
「知り合いか?」
「ううん、直接ってことはないけど、あんまり関わりたくはないかな」
難しい顔をしつつも、僕を促し、3人を睨みながらも建物の影に身を隠そうとしていた。
確かに今は問題に巻き込まれたくはないので、アカネに従って身を隠した。しかし、ランスだけは腕を組み、憎らしそうに3人を睨んでいる。
「ランス?」
「ちょっと、様子を見てくる」
と不意に3人に近づこうとするランス。
「ちょ、気をつけなさいよ、あいつらは」
「わかってる」
アカネの静止を振り切り、ランスは3人が方へと向かった。
最悪?




