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変化と勘違い?

部屋の扉が突然、勢いよく開かれる。乾いた音が静寂を引き裂き、その余韻が小さな部屋全体に響いた。驚きに肩が跳ねる間もなく、ざっ、と粗雑な足音が床を踏み鳴らして近づいてくる。その音が持つリズムには、急いでいるのか、それともただ豪快な性格ゆえなのか、不思議な力強さがあった。


現れたのは、獣人族の男だった。リカルドと名乗るその男は、猫のような特徴を持つ。ふわりと揺れる尻尾がその存在を強調し、月明かりが差し込む部屋の中で、彼の耳がぴくりと動くたびに微かな影を落とす。毛並みは薄い茶色で、ところどころが濃い色に染まる斑模様。陽に焼けた肌の色合いと相まって、どこか野性味と温もりが同居しているようだった。


彼の目は鋭く、まるで獲物を捉えるかのように俺をじっと見据えている。その視線が刺すように感じられたが、不思議と恐怖を抱かせるものではなかった。目尻にほんの少しだけ柔らかさが宿っているからだろうか。


「起きたんか?坊や、腹減っとるか?」


ぶっきらぼうな声が部屋に響く。言葉の端々に混じる方言が、彼の生まれた土地の温かさを彷彿とさせる。それでもその声にはどこかしら優しさが含まれていた。俺を見下ろすその態度は粗雑だが、まるで目の前に転がる小さな命を手のひらでそっと包み込むような、そんな温かさが潜んでいる。


俺は喉を押さえた。傷ついた喉は未だに激痛を残し、言葉を発しようとするたびにその痛みが鋭く突き刺さる。ただ声を出そうとするだけで肺が焦げつくような感覚が襲い、掠れた音すら紡げない。何度も試みるが、かすれる息音が漏れるばかりで、それ以上は何も出てこない。


歯を食いしばりながらも、もどかしさで胸が張り裂けそうだった。俺の内心の焦燥に気付いたのか、リカルドは眉をひそめるでもなく、その場でじっと立ち、耳をゆるやかに動かしながら待っていた。その姿が、何も言わなくても「焦らなくていい」と言っているように感じられた。


やがて、俺は声を出すのを諦める。そしてゆっくりと首を縦に振った。その仕草すらぎこちなく、首元の痛みで顔が歪んだ。けれどリカルドの反応は予想外だった。彼はほんの一瞬だけ目を細め、口元に微かな笑みを浮かべたのだ。それは意図的なものではなく、まるで猫がふとした瞬間に安心するような、自然な笑みだった。


「ほんなら、何か持ってきちゃるわ。」

彼はそう言うと、軽く顎をしゃくって部屋の奥に目を向けた。

「しっかり食っとき、坊や。今は体力つけなアカン時やからな。」


その言葉は粗野な響きを帯びながらも、不思議と心を暖かくする力を持っていた。彼が目を細めながら言葉を吐き出すと、まるでその空間そのものが少しだけ和らいだように感じた。


リカルドは踵を返し、尻尾がふわりと揺れる。それがまるで一瞬だけ柔らかな風を運んできたかのようだった。床を踏みしめる彼の足音は、先ほどよりも少しだけ軽やかで、扉を開ける音が再び静寂を連れてくるまで、その背中を俺は目で追い続けた。


扉が閉まると、部屋の中には再び静けさが戻る。だが、その空気には確かに、彼の温かさの余韻が残っていた。森で死と恐怖に怯え続けた時間が嘘のように、胸の中に小さな灯が灯る。喉の痛みも、体の疲れも、彼の言葉によって少しだけ和らいだ気がした。


俺は生きている。

その事実が、ようやく心の中にしっかりと根を下ろしていくのを感じた。


リカルドがテーブルに置いた食事を、俺はしばらくの間ただ見つめていた。小さな木のテーブルに、湯気を立てるスープと、香ばしい匂いを漂わせる肉料理、そして焼きたてのパンが並んでいる。その配置は決して豪華なものではなかったが、一つ一つが丁寧に作られているのが一目でわかる。どれも、どこか懐かしさを感じさせる料理だった。ほんのりと漂う香りは、心の奥深くにある何かをそっとくすぐるような温かさを持っていた。


スープの湯気がゆっくりと立ち上り、それがランプの柔らかい光に溶け込む様子を見つめながら、俺はスプーンを手に取った。まだ喉が完全には回復していないせいか、少し震える手でスプーンをすくい、一口飲んでみる。


その瞬間、優しい温かさが舌先から広がり、喉を通るたびに体に染み渡るようだった。スープは濃すぎず薄すぎず、野菜の甘さとだしの旨みが調和している。野菜の柔らかさが舌の上でほろりと崩れ、全てが一つの味わいとなって体の中に溶け込んでいく。長い間忘れていた「温もり」という感覚が、今この瞬間に蘇る。


次に、俺は肉料理へと手を伸ばした。ナイフを慎重に入れると、肉は驚くほど柔らかく、刃先がほとんど抵抗を受けることなく通っていく。切り分けた断面から、肉の赤身が美しく光を反射し、焼き加減の絶妙さが伝わってくる。それを恐る恐る一口運んでみると――口の中に広がる味わいに、思わず息を呑んだ。


「……すごい……」


声には出なかったが、心の中でそう呟く。肉は驚くほどジューシーで、噛むたびに旨みがじわじわと口いっぱいに広がる。甘みすら感じるほどの濃厚な味わいが、空腹に焦点を合わせた体の隅々にまで染み渡っていく。焼き加減が絶妙で、表面の香ばしさと内側の柔らかさが絶妙なバランスを保っていた。その味は、これまで生きてきた中で食べたどの料理とも違い、記憶に刻まれるほどの衝撃だった。


気づけば、俺は夢中になって肉を食べ続けていた。ナイフとフォークを動かすたびに香りが立ち、次の一口が待ち遠しくなる。冷え切った体と心が、食べるたびに少しずつ解けていくようだった。その間も、リカルドの声がどこか遠くで響く。


「慌てて食べんなや、坊や。ゆっくり味わえ。」


その声には少し笑いが混じっていたが、俺にはそれどころではなかった。一口食べるごとに、次の一口が待ち遠しくなり、手が止まらない。ただ一心不乱に、肉の美味しさに没頭していた。


パンに手を伸ばすと、その柔らかさに驚く。表面はカリッと焼かれ、中はふんわりとした触感が指先に伝わってきた。それをスープに浸して口に運ぶと、パンの甘みとスープの旨みが溶け合い、さらに深い味わいが口の中を満たす。焼きたての香りが鼻腔をくすぐり、自然と息が深くなる。


食事が進むごとに、俺の体はじんわりと温まっていった。冷え切っていた指先がぬくもりを取り戻し、緊張していた肩がゆっくりとほぐれていくのを感じた。久しぶりに感じるこの「満たされる」という感覚は、涙が出そうなほど優しいものだった。


そして、一皿を食べ終えた瞬間、不意に力が抜けた。椅子に体を預けたまま、ぼんやりとテーブルを眺める。体が温まり、安堵が胸の中に広がると同時に、重たい眠気がゆっくりと襲ってきた。


窓の外から差し込む月明かりが、テーブルの上の皿を淡く照らしている。その光が優しく瞬き、まるで遠い記憶を呼び起こすように思えた。俺は瞼を閉じる。温かい食事の余韻がまだ体に残り、心の底から湧き上がる安らぎが、俺を包み込んでいた。


――生きていてよかった。

そんな思いが、静かに胸に浮かび上がり、深い眠りの中へと俺を誘っていった。


次に目を覚ましたとき、部屋は静寂に包まれていた。窓の外から漏れる月明かりがぼんやりと差し込み、家具や小物の輪郭を柔らかく浮かび上がらせている。いや、それ以上に、暗闇の中での視界が異常だった。普通なら見えないはずの細部が、まるで昼間のようにくっきりと目に映る。窓辺に置かれた古びたランプ、その隣に無造作に置かれた木の箱、部屋の隅に佇む椅子の布目までもが明瞭に見えた。目を凝らす必要もなく、ただ自然とそこにあるものが視界に飛び込んでくる。


頭は冴え渡り、眠気などどこにもなかった。むしろ、目の奥に熱を持つような感覚があり、瞳が爛々と輝いているのを自覚する。まるで周囲の全てが自分を取り囲む光景の一部となり、瞳に吸い込まれていくようだった。その異常な感覚に気付いた瞬間、胸の奥にざわざわと不安が広がる。


落ち着くために、俺は体をゆっくりと起こし、窓へと向かった。窓枠を押し開けると、冷たい夜風が顔を撫で、髪を軽く揺らす。深く息を吸い込むと、外の空気は思った以上に澄んでいて、ひんやりと肺を満たした。しかし、その空気と共に、信じられないほど多くの音が耳に飛び込んできた。


草むらで虫たちが鳴いている音が聞こえる。それは今まで感じたことのない鮮明さで、羽を震わせるかすかな振動までもが頭の中で再現されるかのようだ。風が木々の葉を揺らす音が耳元をかすめ、葉と葉がこすれ合う音の違いすら分かるほどだ。そして遠くでは、小動物たちが走り回る微かな足音や、心臓が規則正しく鼓動する音さえも届いてきた。


その音の多さと鮮明さに、耳が痛み出すような感覚を覚えた。自然の音だけではない。隣の部屋から聞こえる微かな話し声も、まるで耳元で囁かれているように聞こえてくる。床を軋ませる誰かの足音、カップを置く小さな音、息を吸い込む音――それらすべてが重なり合い、洪水のように頭の中を満たしていく。


「……なんだ、これ……」


俺は耳を押さえたくなる衝動に駆られながら、思わず声を漏らした。しかし、自分の声すら耳障りなほど大きく感じられ、喉の奥で止めてしまう。胸がざわざわと落ち着かず、全身に冷や汗がにじむ。耳にまとわりつく音たちが容赦なく襲いかかり、まるで逃げ場のない檻の中に閉じ込められたようだった。


頭の奥がズキズキと痛む。雑音が耳鳴りのように響き続け、神経が擦り切れていくような感覚が襲う。音を断ち切りたい一心で、両手で耳を押さえ込むが、それでも音は消えなかった。いや、それどころか、体の奥に直接響いてくるようにさえ思える。まるで周囲の世界が俺に向かって話しかけているかのように、音が全身を包み込んでいた。


息が荒くなり、胸がきしむように痛む。目の前の景色が妙に明瞭なままなのが、さらに恐怖を煽った。何が起きているのか、何故こんなことが起きているのか――答えの出ない疑問が頭の中で渦を巻き、焦燥感が募る。


それでも何とか冷静さを取り戻そうと、窓辺に手をついた。外からの風が肌を撫でるたびに、ほんの少しだけ正気を保てる気がした。けれど、この異常な感覚が消え去ることはなかった。部屋の中に戻っても、音はひたすら鮮明に、重く、俺にのしかかってくる。


全身が硬直し、動くこともできない。深呼吸を試みても、肺が震え、呼吸が浅くなる。視界はくっきりと、音は耳を塞ぐほどに、すべてが過剰に迫ってくる――そんな自分自身の変化に、ただ圧倒されるしかなかった。


足音が近づいてくる。その音は硬く、リズミカルで、木製の床を踏むたびに微かな軋みを伴って耳に響いた。耳鳴りのように溢れる外界の音の洪水の中でも、その足音だけは異様にはっきりと聞こえる。足音が止まり、間を置かずに「パチン」というスイッチの音が部屋に響いた。


突然、眩い光が部屋全体を満たした。慣れていない光に目を細め、反射的に顔を覆う。その光はランプの暖かな色合いではなく、無機質で白く、視界を一瞬で侵食するようだった。目を薄く開けると、ぼやけた輪郭が徐々に形を取り戻し、扉の前にリカルドが立っているのが見えた。その姿は月明かりの中で見たときとは違い、今は光の中に全身が照らされている。


彼の後ろから、背の小さな女性が続いて入ってきた。白衣を身にまとい、メガネをかけたその女性は、リカルドと対照的に柔らかな雰囲気を持っている。彼女はリカルドに軽く肩を叩かれながら、にこやかな笑みを浮かべて俺の方へと近づいてきた。その笑顔には、妙に親しみを感じると同時に、どこか探求心に満ちた光が宿っている。


「ほらね、やっぱり夜行性になってるでしょ。」


女性──アーヴィンと呼ばれるその人物が軽快な口調で言葉を発する。明るい声が部屋に広がると同時に、彼女の手が俺の顔へと伸びてきた。不意に触れられる感触に驚き、思わず身を引きそうになるが、体が硬直して反応が遅れる。彼女の指先は容赦なく俺の唇を開き、そのままじっと観察を始めた。視線の先には、俺の犬歯がある。


「うわ、初めて見た!こんな鋭い犬歯、完璧だわ!」


彼女の声が弾む。まるで子供が宝物を見つけたかのような反応に、俺は戸惑いと不安を抱きながらも、抵抗する気力が湧かなかった。ただ目を見開いたまま、彼女が興奮気味に話す様子を見つめるしかない。


彼女は犬歯をまじまじと見つめ、まるでそれが美術品であるかのように感嘆し続ける。彼女のメガネに反射する明かりが、一瞬だけ彼女の表情を鋭く映し出す。その熱心さに圧倒されながら、俺は何もできず首をかしげることで、自分の疑問を伝えようとした。


その仕草に気づいたアーヴィンは「あ、そうか、喉が潰れてるんだね」と小さく頷き、少しだけ落ち着いた表情を見せた。そして、再び口を開くと、今度はどこか優しい口調で話し始めた。


「私はこの組織の医療担当、アーヴィン。今日は一方通行で話すから、落ち着いて聞いてね。」


彼女の言葉に、俺は自然と耳を傾けるしかなかった。その声には奇妙な安心感があり、混乱している俺の心を少しだけ和らげてくれる。


アーヴィンは小さな咳払いをしてから、改めて視線を俺に向ける。その目には真剣さと興奮が入り混じっていた。


「おめでとう、君はヴァンパイヤだ。しかも真祖の血を引く、エクリプス家の眷属だ。」


その言葉が、鐘のように頭の中に響く。ヴァンパイヤ…真祖の血…エクリプス家…眷属…?次々と口から出てくる言葉の一つ一つが、俺の理解を遥かに超えていた。何が起こっているのか、どうして自分がそのような存在になったのか、何も分からない。ただ、頭の中でそれらの単語がぐるぐると回り続ける。


アーヴィンの顔を見ると、彼女はどこか誇らしげに微笑んでいた。その微笑みは、自分が何か特別なことを発見したときのような満足感を含んでいる。それが俺に向けられているという事実が、不思議と胸にざわめきを起こした。


だが、それ以上の言葉が出ない俺はただ、混乱と戸惑いの中で、アーヴィンの次の言葉を待つしかなかった。


「エクリプス家…?」


声を発することができない俺は、その言葉を頭の中で繰り返していた。まるで重い鐘の音が鳴り響くように、心の奥でその名前が何度も反響する。そして、その瞬間、脳裏に浮かんだのはアイリス──あの牢で出会った、美しい少女の姿だった。澄んだ瞳と儚げな笑顔、そしてどこか寂しげな横顔。その記憶が呼び起こされると同時に、胸の奥が激しく波打つ。


アーヴィンはそんな俺の動揺をよそに、静かに説明を続けた。


「エクリプス家とは、魔族領を統治する大公、ラザフォード・ヴァン・エクリプス。そして君の宿主はその息子、アルトゥール・ヴァン・エクリプス王子だよ。」


その言葉が耳に入るや否や、頭が真っ白になった。


「アルト…王子…?」


喉から押し出すように漏れた掠れた声は、自分の耳にも届かないほどか細かった。首を横に振り、否定するように体を震わせた。アルト王子――あの美しいアイリスが、男だというのか?そんなはずはない。細い腰も、しなやかな動きも、あの儚げな笑顔も、どうして男だと言える?


「ち、ちが…」


かすれる声が喉から漏れたが、言葉にならない。伝えたい言葉が胸の奥で詰まる。そんな俺の様子を見ていたリカルドが、突然吹き出した。


「ぶふっ……ぶわはははは!ひーっ、お前、本気で勘違いしてたんか?そりゃたまらんわ!」


リカルドは腹を抱え、体を折り曲げて笑い転げた。その笑い声はあまりにも豪快で、俺の胸にじんじんと響く。それがさらに恥ずかしさを掻き立て、俺の顔が一気に熱を持つ。


「やめろよ……」


言葉にできない思いが胸の中で渦巻くが、どうにもならない。顔を覆いたい衝動に駆られるが、体が動かない。リカルドの笑い声がさらに大きくなるたびに、羞恥心が込み上げてくる。


「笑うことじゃない!」


アーヴィンが鋭く声を上げ、リカルドを一瞥する。その視線には軽い呆れが混じっていたが、どこか楽しんでいるようにも見える。


「彼が生き延びただけでも奇跡なんだからね。感謝すべきだよ。それに、男の子同士って可愛いじゃん。たぎるわ~。」


最後の言葉にリカルドの笑い声がさらに響いたが、俺はそれを聞きながらも顔を両手で覆う。羞恥と混乱で頭がどうにかなりそうだった。


ようやくリカルドの笑い声が収まり、俺は喉の痛みをこらえながら、声を振り絞るように言葉を発した。


「アイリス……は?」


その言葉に、リカルドの表情が一変した。先ほどまでの軽やかな笑顔が消え、少し寂しげな影を落とした目で俺を見つめる。そして、低い声で言葉を紡いだ。


「お前が見つかる少し前に、アイリス……いや、姫様は母親と一緒に……これ以上は言わんでもわかるやろ?」


その言葉が耳に届いた瞬間、胸が締め付けられるような感覚に襲われた。息が詰まり、心臓が凍りつくようだった。


「嘘だろ……」


頭が真っ白になり、現実を受け入れることができない。アイリスの儚げな笑顔が脳裏に浮かび、それが現実の中で消えていくような感覚がした。


「……あ、あ……」


喉から漏れるのは掠れた声だけ。言葉にできない思いが渦を巻き、胸が張り裂けそうになる。あの瞬間の感情、アイリスに抱いた儚い思い出が、一瞬で崩れ去る。


俺の脳裏には、彼女の笑顔が繰り返し浮かんでは消えた。そのたびに胸が締め付けられ、頭が真っ白になる。信じられない。受け入れたくない。でも、リカルドの表情がそれを否定する余地を奪っていた。


崩れそうな心をどうにか保とうとするが、それがさらに胸の中で混乱を生む。外の冷たい風が窓の隙間から吹き込み、頬を撫でる。その冷たさだけが、俺をかろうじて現実に繋ぎ止めていた。


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