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キースの日記

ルクス・アーカムでの暮らしは、実に無駄がなく、ある意味で「殺風景」そのものだ。俺に与えられた個室も例外ではなく、そこにはベッドと机があるだけ。余計な装飾や華やかさなど一切なく、壁も冷たい灰色の石材でできている。ただ任務を果たすためだけの空間、という感じがひしひしと伝わってくる。


そんな部屋で、俺は毎晩のように机に向かい、ヴィクターに言われた「日記」をつけることが日課になっていた。俺は自分で分かっているが、正直なところ「学」はない。アサシンギルドで育った俺にとって、文字を書くことや思考を文章にまとめるなんてことは、あまりにも縁遠い世界だった。それでも、ヴィクターの命令ならば従うしかない。どう書けばいいかも分からないまま、今日あった出来事や感じたことを、たどたどしい言葉で綴っていく。


夜になると、ほぼ毎晩のようにクロウとソフィアが部屋に遊びに来るのが、俺の日常になっていた。彼らは俺の書いた日記を見て、ニヤニヤと笑うのが恒例行事になっている。この日記が面白くて仕方がないらしい、俺が「笑うなよ」と言いながら顔を赤らめると、二人は「だって、キースの表現が可愛すぎるんだよ」とか言って、ますます笑いを堪えきれなくなる。ソフィアなんて、時には息を切らしながら笑っているし、クロウも口元に小さな笑みを浮かべている。


「ほら、キース。ここはこう書けばもっと伝わりやすいだろ?ぶふ〜」と、ソフィアは俺の書いた文章を指差し、具体的な表現や言い回しを教えてくれる。クロウも横から助言をくれて、俺の書き方がいかに間違っているか、丁寧に指摘してくれる。二人とも、自分では考えつかないような言葉や考え方を教えてくれるから、日記を書きながら勉強にもなる。彼らがいなかったら、俺の文章はもっとひどいものになっていただろう。


こうして夜な夜な勉強会が繰り広げられるのだが、二人が熱心に教えてくれる姿には、俺は心から感謝している。クロウは黙々と丁寧に説明してくれるし、ソフィアは親身になって俺の成長を喜んでくれる。二人とも、俺が成長するために真剣に向き合ってくれているんだなと感じる。ルクス・アーカムの中でこうして友人と呼べる存在がいること、そしてその友人が俺を支えてくれることが、日記を書くという苦手な作業を少しずつ楽しみに変えてくれている気がする。


ありがたいな……そう思いながら、俺はまた少しずつ、自分の言葉で日記を綴っていく。



キースの日記


天気くもり


今日はヴィクターに、横の動きがダメといわれた、なんかいやだなーと思った


がんばったら、いいぞ、と言ってくれた

やったーと思った


おわり


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