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ムッツリ覚醒

その夜、また、あの日々が頭の中にふと浮かび上がる。あの濃密な時間と、忘れられない味。その記憶が、今の俺にとって何か痛みとも甘みともつかない感情を呼び起こす。


あの時の俺は、何もかもが新鮮で、すべてが切実だった。信じていたもの、守りたかったもの、そして決して口にしてはいけない感情。あの日の、あの瞬間に交わしたものは、ただの行為以上の意味を持っていた。


あの味――それは、まるでとろけるように甘く、それでいて苦みが混ざり合う、不思議な感覚だった。今思い出しても、その感覚が俺の中に染みついているようだ。あれが「男」だったとしても、その感覚は特別だったし、消えることのない一つの真実として俺の中に残り続けている。


その相手が誰であったとしても、俺にとっては、その日々が特別だった。うん!


でも、いや、やっぱり……俺の記憶の中で浮かぶのは、どう考えても「女の子」だったはずだ。だって、顔があんなに可愛かった。あの瞳の大きさや、柔らかい髪の香り、ふとした瞬間の笑顔……男なんてあり得ない。



俺の中で、あの瞬間は疑いようもなく女の子だったはず、逆に顔が近すぎて見えなかった場所にヒゲが生えてたり、いやいや、もしかしたら、彼女も俺に正体を隠すことで、別の何かを守っているのかもしれないだが、それでも俺は――そう、俺はあの「女の子?」のことが、どうしても忘れられないでいる。


「あー……もっと色々、しとけばよかったな……」


ふと、思わず口をついて出たその言葉。俺はその場にひとりで立ち尽くしながら、あの甘いキスの瞬間を思い返していた。あのとき、何も考えずにただ流れに身を任せるだけだったけど、今になって思えば、もっと大胆に、もっと素直にその瞬間を楽しめばよかったと思ってしまう。


彼女の顔をもっと近くで見つめて、彼女の声をもっと聞いて、もっと触れて、もっと感じたかった。あの柔らかな唇が重なるたび、俺の心が震え、頭の中が真っ白になる感覚が今でも鮮明だ。だけど、もう少し勇気を出して、彼女との距離を縮められていたら――そんな考えが頭をよぎって、胸の奥に少しの後悔が募っていく。


「なんで、もっと行動しなかったんだろうな……」


今さら考えたってどうにもならないことだけど、あの瞬間があまりにも甘く、儚い夢のようだったからこそ、後悔がこうして胸にしみ込む。あの一瞬の余韻が、今も俺を縛りつけるように、どうしても離れなくて。


彼女が本当に「女の子」だったかどうかなんて、もうどうでもいい。あのときだけは、確かに俺は彼女に惹かれていたし、もっと大胆に「彼女」を求めたかった。それを考えると、


でも、どこかでまた会えるなら、次こそは――だって男だもん、俺だって!

そう心に誓って、俺はそっと拳を握り締めた。

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