第四十三話 慎重
「敗者である阿黒様にはデスコイン10枚が付与されます。3ラウンド続いた引き分けはここで止まり、5ラウンド目は亜久津様の勝利で幕を下ろしました。」
ライフコインの清算が終わった時、亜久津の身体に先程よりも強い電流が流れてくる。
「っ。」
亜久津から少しの声が漏れ出す。
(俺の実質的なライフコインは36。さすがに電流も強いな。だが、まだ平気だ。それに比べ。)
対面に座っている阿黒賢一の方に目線を向ける。
(おそらく阿黒賢一は今回のラウンドで11のライフコインを賭けたのであろう。それを考えると、阿黒賢一の実質的なライフコインは19。)
ゲームマスターである河野は両手を高らかにあげる。
「ライフイズコインは6ラウンド目に突入します。それでは、ファーストを行ってください。」
6ラウンド目に突入するなり、亜久津は阿黒賢一のことを観察しだした。
阿黒賢一は電流による痛みを表情に出さないように必死に我慢しているようだが、身体の反応までは隠すことができてはいなかった。
(阿黒賢一には俺よりも強い電流が流れている。表情には出ないようにしているようだが、身体の反応は隠せていないそれが証拠だ。)
亜久津は再び思考の海に落ちていく。
(ポイズンアンドホーリーで君塚渉にやった毒による苦しみのブラフ。それを今回もやっている可能性。限りなく低いな。第一ブラフをするのならば、何故苦しみを表情にだそうとしない。ポイズンアンドホーリーの時はあからさまに苦しみを表情に出していた。ださない理由は、それが本当の苦しみであり、それを悟らさたくないからに他ならない。阿黒賢一の指先を見てみればわかる。阿黒賢一は身体の反応すらも抑えようとしている。そして実際に押さえ込んでいる。凡人がみたら電流が流れているなど考えないほどに。普通ならば、自身の推察を疑うだろうが、俺の目は誤魔化せない。自身の推察をうたがわせ、疑心暗鬼にし、その隙をついて俺に勝利するのが君の目的だ。)
タブレットにうつっている数字に手をかざす。
(そして、何よりその態度が俺の推察が正しかったことを証明することになった。墓穴を掘ったな阿黒賢一。俺はここで10を選択する。これで実質的なライフコインは26。そして次のセカンドで0を選択。10に勝つためには11以上を選択しなければならない。その時点で君の実質的なライフコインは8。俺はデスコインを10枚付与されるが、16ライフコイン余る。次のラウンドでもう一度同じことをやれば君の負けだ。もし、1ライフコインしか賭けなかったとしても10枚のデスコインが付与され、未来は変わらない。)
自身のタブレットに10の数字を入力し、決定を押した。
それと時を同じくして、阿黒賢一もファーストの入力を済ませた。
「ファーストが完了致しましたので、オープンしていきます。」
河野は背後のモニターに手を向ける。
阿黒賢一:1
亜久津成義:10
「ライフイズコインが始まってはじめての1以外の数字がファーストで映し出されました。セカンドはどうなるのでしょうか。それでは、セカンドを行ってください。」
セカンドが始まってすぐに今度は亜久津がタブレットに手をかける。
「阿黒賢一。今度は俺が公開しよう。君の死への道を。」
亜久津成義は自身のタブレットを阿黒賢一に見えるように公開した。
公開されたタブレットの画面には、Life coinの場所に41、death coinの場所に15、firstの場所に10、そして、タブレットには0が入力されていた。
亜久津は指で決定を押し、タブレットを元に戻す。
「慎重な亜久津さんが公開するなんて意外だな。」
阿黒賢一が少し驚いたようなリアクションをした。
「これは君の死への手向けだ。」
「俺はまだ死んではないんだけどな。」
阿黒賢一も自身のタブレットに数字を入力していく。
「それも違う。君は死んだんだ。前回のラウンドで。」
亜久津の瞳の先には阿黒賢一がうつっている。そして、阿黒賢一をうつすその瞳は勝利を確信していた。
「それではジャッジに入りたいと思います。」
ゲームマスターである河野の背後にあるモニターに文字がうつしだされていく。
Win 阿黒賢一
「今回のラウンドを勝利したのは、阿黒賢一様です。」
河野が声高らかに宣言した。
「敗者である亜久津様にはデスコインが10枚付与されます。これにより、6ラウンド目は終了します。」
前回のラウンドと同じくライフコインの清算が行われる。ただ1つ違うのはそこにデスコインも含まれていることだ。
「っ!!。がっ。」
先程よりも明らかに強い電流が亜久津を襲う。
(俺の実質的なライフコインはこれで16になった。成程。凄まじい痛みだな。だが、俺よりも実質的なライフコインが少ない阿黒賢一も同じはずだ。)
亜久津の考えていた通り、それは阿黒賢一も同じであった。いや、それ以上であった。
「ぐっ!!。っ。」
阿黒賢一は苦虫を噛み潰したよう顔をし、拳を強く握りながら必死に声を抑えている。
「お二人共辛そうですが、ライフイズコインは7ラウンド目に突入します。それでは、ファーストを行ってください。」
必死に痛みに耐えている2人を気にもとめずに7ラウンド目が始まった。
(声を押し殺すのもやっとだ。だが、阿黒賢一の残りの実質的なライフコインは8。俺がここで9を入力すれば勝てるが、俺は慎重にいく。ここは15を選択する。ライフコインは1でも残っていれば良い。)
亜久津は自身のタブレットに15の数字を入力し、決定を押した。
それに続いて阿黒賢一も固く握っていた拳をとき、数字を入力した。
「ファーストが完了致しましたので、オープンしていきます。」
亜久津成義:15
阿黒賢一:1
「おおっと。ここにきて、最高枚数となる15枚が賭けられました。このラウンドは亜久津様の勝利で終わるのか、それとも阿黒様が勝利するのか。それは、セカンドに託されました。それでは、セカンドを行ってください。」
セカンドが始まってすぐに前回のセカンドと同じく亜久津がタブレットに手をかける。
「これが最後だ。」
亜久津は自身のタブレットを阿黒賢一に見えるように公開した。
そのタブレットの画面には、Life coinの場所に26、death coinの場所に25、firstの場所に1、そして、タブレットには0が入力されている。
亜久津は前回と同じように指で決定を押し、タブレットを元に戻した。
「亜久津さんは本当に慎重な男なんだね。」
阿黒賢一は自身のタブレットの画面を指でふれる。
「でも、その慎重さが亜久津さんの首を絞める。」
言い終えると同時にタブレットの操作を終えた。
「それでは、ジャッジに入りたいと思います。」
ゲームマスターである河野の背後にあるモニターに文字がうつしだされていく。
Win 阿黒賢一
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