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第四十一話 繰り返し


(何も無かったか。だが、阿黒賢一のことだ。無策であの行動をとったということは無いだろう。)


亜久津は自身の掌に目線を向ける。


(電流はまだ平気だな。俺の実質的なライフコインは82枚。それに比べて阿黒賢一の実質的なライフコインは73枚。)


今度は対面に座っている阿黒賢一のほうに目線を変えた。


(阿黒賢一には俺より強い電流が流れているが、表情や身体に反応はとくにない。電流の痛みはたいして変わらないのか。)


「ライフイズコインは3ラウンド目に突入します。それでは、ファーストを行ってください。」


ゲームマスターである河野が次なる指示をだす。


「亜久津さんは慎重なんだね。」


タブレットに目を向けながら操作をしている阿黒賢一が言葉をはなった。


「俺の前回のゲームを見て、しっかりと調べてきて。それに、さっきの選択。慎重なことはいいけど、慎重過ぎると、足元すくわれるよ。」


言い終えると同時に阿黒賢一はタブレットの操作を終了させた。


「前回のゲームでも君塚渉に似たようなことを言っていたな。だが、俺は油断しない。何故なら、慎重に君のことを調べあげ、君の策略を知っているからだ。そしてなにより、慎重なことに越したことはない。」


亜久津成義も同様にタブレットの操作を終える。


「ファーストが完了致しましたので、オープンしていきます。」


河野は再び背後のモニターに手を向ける。


阿黒賢一:1

亜久津成義:1


「またまた2人とも1を選択。第2ラウンドのセカンドは波乱を呼ぶ展開となりましたが、第3ラウンドはどうなるのでしょうか。それでは、セカンドを行ってください。」


セカンド開始の合図とともに阿黒賢一がタブレットに手をかける。


「第2ラウンドを波乱を呼ぶ展開だって。じゃあ、第3ラウンドも波乱を呼ぼうかな。」


再び阿黒賢一は自身のタブレットを亜久津成義に見えるように公開した。


その画面には、Life coinの場所に87、death coinの場所に15、firstの場所に1、そして、前回のラウンドと同じ数字である10がタブレットに入力されていた。


そのまま第2ラウンドのセカンドと同じく数字を変えることなく決定を押し、タブレットを元に戻す。


「慎重な亜久津さんはどんな選択をするんだろうね。」


亜久津を見つめるその瞳はとても不気味であった。


だが、亜久津成義はそんな視線を無視し思考する。


(あからさまに俺のことを挑発している。さっきとは違う数字で来いと言っている。ここはわざとその挑発にのるのも一手だが、そんなことをすれば、一瞬で阿黒賢一に首をとられる。阿黒賢一はそれほどの男だ。)


亜久津は自身のタブレットに視線をおとした。


(ここは、先程と同じく、阿黒賢一と同じ数字を入力するのが一番安全な道だ。現状俺の方が有利なことに違いは無い。相手の策にのっかってまで差を広める必要ない。)


考え終えた亜久津は自身のタブレットに10の数字を入力して決定を押した。


「それでは、ジャッジに入りたいと思います。」


河野の後方にあるモニターに再び文字がうつりだされる。


Draw


「なんと、第3ラウンドも第2ラウンドと同様に引き分けとなりました。これにより、阿黒様と亜久津様にはそれぞれデスコインが5枚ずつ付与されます。」


(今回も特に策という策はないように見えるが、何かを仕掛けているに違いない。阿黒賢一とはそういう男だ。それにしても電流も先程よりは大分強くなってきているな。今の俺の実質的なライフコインは66枚、阿黒賢一は57枚。)


亜久津は再び阿黒賢一のほうに視線を向け、観察をする。


(まだ、表情と身体にはでてきていないか。)


「ライフイズコインは4ラウンド目に突入します。それでは、ファーストを行ってください。」


ゲームマスターである河野によって4度目のファーストが幕を開けた。


4ラウンド目のファーストの結果は、これまでの3ラウンドと同じく両者共に1ライフコインを賭けたのであった。


「第3ラウンドのセカンドも第2ラウンドのセカンドと同じく阿黒様による奇行が行われましたが、第4ラウンドはどうなるのでしょうか。それでは、セカンドを行ってください。」


第4ラウンドのセカンドが始まってすぐに亜久津が口をひらく。


「再びタブレットを公開するつもりか。」


その言葉は阿黒賢一がタブレットに手をかけていたために言葉であった。


「その通り。俺は今回もタブレットを公開する。」


阿黒賢一は宣言通り、自身のタブレットを公開した。


タブレットの画面には、Life coinの場所に76、death coinの場所に20、firstの場所に1、そして、10という数字が入力されている。


「そんなことを続けても意味は無い。自身の首を絞めているだけだ。」


亜久津は公開されたタブレットに視線を向ける。


「いや、意味はあるよ。」


これまでのラウンドの時と同じく阿黒賢一はタブレットにある決定のボタンを押し、タブレットを元に戻した。


(阿黒賢一がタブレットを公開する意味、それを俺が解き明かせば、その時点で勝利は確定する。)


亜久津は長考のすえ、前回と同じ10の数字をタブレット入力するのであった。


「それでは、ジャッジに入りたいと思います。」


ゲームマスターである河野の背後にあるモニターに文字がうつりだされる。


Draw


「またもや引き分けに終わりました。これにより、阿黒様と亜久津様にそれぞれデスコインが5枚ずつ付与されます。」


亜久津は2ラウンド目の終了時と同じく自身の掌に目線を向ける。


(電流がだんだんと強くなっていっているな。今の俺の実質的なライフコインは50。たいして阿黒賢一の実質的なライフコインは41。)


対面に座っている阿黒賢一に目線を変え、再び観察をする。


(表情にはでていないが、身体にはだんだんと反応がではじめてきた。阿黒賢一は確実に死へと向かっている。だが、油断はできない。タブレット公開の意味を解き明かすまでは。)


「ライフイズコインは5ラウンド目に突入します。それではファーストを行ってください。」


ゲームマスターである河野の宣言により、始まったファーストの結果はこれまでのラウンドと同じように両者共にライフコイン1ずつを賭けた結果に終わった。


「これまで波乱だらけのセカンド。5ラウンド目はどうなるのでしょうか。それでは、セカンドを行ってください。」


セカンド開始と同時に阿黒賢一はタブレットに手をかける。


「亜久津さんはなんでそんなに慎重なのかな。」


タブレットに手をかけたまま亜久津に問う。


「特別な理由はない。慎重にこしたことはないからだ。慎重に相手を調べ観察すらば癖や考えを理解することができる。慎重に道を進めば、罠にかかることもない。だから俺は慎重なんだ。慎重であれば負けることはない。」


「なるほど。そんな亜久津さんに俺からのアドバイスだ。どんなに慎重に進んでも罠にかかるときはある。それが人間だもん。」


そう言いながらタブレットを公開した。


タブレットの画面には、Life coinの場所に65、death coinの場所に25、firstの場所に1、そして、10という数字が入力されていた。


阿黒賢一はすぐに決定を押し、そのまま元に戻した。


「さぁ、どうする慎重な亜久津さん。」


その問いに亜久津は答えずに思考する。


(阿黒賢一がタブレットを公開する理由。それは何だ。今までの行動や言動を慎重に思い出せば解けるはずだ。)


深く深く思考の海に落ちていく。


(いや……、まて。)


なんと亜久津はひとつの答えを見出そうとしていた。そしてついに亜久津はひとつの答えに辿り着く。


(成程。理解した。阿黒賢一、君の策を。)







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