第1話序列
※第1話序列
男は喫茶店の窓から街を歩く人々、紅に染まった街をボーと眺めていた。すると男の向かい側に座っている男の同僚が無駄に馬鹿デカい声で「そのコーヒー飲まないなら飲んでいいか?」と聞いてきた。男は冷めたコーヒーを見やって「冷めたコーヒーを欲しがるなんて変わったヤツ」と言い、コーヒーを男の方へよこした。すると男は一気にそれを飲み干し、満足そうな顔で男の方を向いて「ご馳走さん!」と今度も無駄に馬鹿デカい声で言ってきたので思わず男はコイツ(同僚)を冷めた目で見た。
コイツの名前は加藤拓也。俺が務める小さな不動産屋の同僚だ。コイツを一言で表すと「ドがつく程のお人好し」でよく騙されてしまい、よく一人で「また騙された」と言いながら嘆いている。俺はコイツをもはや病気だと思っている。俺はコイツのお人好しもコイツの個性だと頭ではわかっているけれど、やはりそう思ってしまう。
「おい明日は雨らしいぜ」
加藤がスマホ片手に自慢げに喋りかけてくる。「らしいな」と素っ気ない感じで返す。加藤またスマホ片手に「あのAV女優エロいよな」とニヤニヤとした気色の悪い顔でこっちを見てくるので無視してやった。