朱くシルし 渦巻いて
なんでも包み込んでくれる
優しい言葉たちは
涙に濡れると
トイレットペーパーのように
溶けて消えていってしまった
触れているのか
触れていないのか
傷つけないように
傷つかないように
撫でるように心に触れて
傷口から流れる赤い涙と痛みを
ふっと消してくれたのに
そんな言葉は
初めから夢幻のように
空の彼方に溶けていってしまった
真っ白なままでなくても良かった
ホントは汚れていたって良かった
だって「それ」はわたしのもので
言葉たちは無色透明で
わたしの中に溜まったものが
ウミ出されたものだから
汚れたものは水に流して
見たくないものには蓋をして
なかったことにしたら
それで終わりなの?
傷はそのままにすれば腐っていくけど
傷跡はそのままにしてもいいと思うんだ
自分の愚かさと痛みと後悔を
刻み込んだ記録だから
流したものも
ウミ出したものも
その時目にするのは辛いけれど
いつか振り返ったとき
それは酸化して黒ずんで
モノクロームの色に変わって
思い出のように眺められる
そんな日も来るかもしれないから
だからたとえ無色透明の言葉たちが
わたしの痛みで汚れてしまっても
どうか溶けて消えていかないで
溶けていくなら心の中に
溶けていくならこの身の内に
忘れたくないんだ
この痛みごと
忘れたくないんだ
その優しさを
抱きしめてくれた温もりは
やがてサめて冷えてしまったとしても