2時間目:体育
小学校の遊具に肋木という物があった。
ご存知だろうか?
簡単に説明すると、体育遊具の一つで片側がアーチ状の梯子になっていて、反対側は地面に対して垂直に、チェーンがはってある。
ある体育の時間に、先生が肋木の前に集合をかけた。
嫌な予感がした。私は肋木が大嫌いだった。嫌な予感は的中し、並んだ列の前方から数名ずつ肋木の上り下りが始まった。
嫌でも順番はくる。私は仕方なく、肋木の梯子を登り始めた。
やはり無理だと、梯子を上り切ったところで止まる。予想以上に高さがある!
向こう側のチェーンに足をかけるには、肋木のてっぺんにある太い柱を跨がなければならない。
不安定なチェーンに体重をかける不安、跨る時に足が引っかかり地面に落下する不安……
ありとあらゆる不安が襲ってきて、私はその場から動けなくなった。
ふと横を見ると、私と同じようにYさんも動けなくなっている。その向こうにはT君の姿も見えた。
ひとまず、私一人でないという安心感を覚えた。
しかし、怖いものは怖い。三人とも子鹿のように、ぷるぷる足が震えている。
こんなにも怖がっているのに、担任はやめさせてくれない。
何ということか! いつの間にか怒りまで湧いてきたのだった。
この後、どうしたのか、はっきり覚えていないのだが、私達三人によって、この日の体育は肋木だけで終わったのだった。
授業を丸一時間潰されたのが、こたえたのか担任は二度と、肋木の前に集合をかけることはなかった。