1時間目:算数
算数が苦手だ。小学一年生のたし算の段階でつまづいた。数の概念を持つことが、どうやら私は苦手らしい。
例えば、
1+1=2 を考える時、耳で数式を聞いて答えを覚えているにすぎなかった。だから1+4=5 と答えられても2+3は? と問われると
「そんな数式聞いたことない……」
と愕然としていた。
どんなに私がつまづこうが、算数の勉強は進んでいく。とてつもなく苦しかった。
次に私を苦しめたのは、水の量の問題だった。ℓとか㎗。
細長くて高さがある入れ物と、横に幅がある入れ物に水が入っている絵が描いてある。水は見た目には、細長くて高さのある入れ物の方が、水位が上に描いてある。
どちらにたくさん、水が入っているでしょう? という問題だ。
こんなの見ただけでわかる と私は思った。
自信満々で、細長い高さのある入れ物の方を選んだ。ところが、先生が示した答えは横に幅がある入れ物の方だった。
またしても、私は愕然とする。
先生が横幅の広い入れ物の方が体積が大きいから、水の量が多い……というような説明をしていたと思う。
私は納得がいかなかった。実際に実物を見せて、説明してくれ! と叫びたかった。
聞いて覚えることはできるので、宿題やテストで同様の問題が出たら、先生が言った通りに、横に幅がある入れ物の方を選べば、概ね正解できることはわかっていた。
でも、どうしてもどうしても、私は自分の中で納得がいかず
「やっぱり細長くて高さがある方が、水がたくさん入っているような気がする……」
「いや、先生が言っていたように、横に幅がある方が正解にちがいない」
「まてよ、この問題に限っては、細長くて高さがある方が正解かも……」
と、算数とは全く関係のない攻防戦を一人頭の中で繰り広げ、結局自分の考えを譲れず、まんまと見た目に騙されて、〝細長くて高い方〟を選び、不正解になっていた。
可視化された物が絶対である、というこの考えは今も私を苦しめている。