元通りになった世界で
「レゼさん・・・」
リーデルは手の平サイズになった2つのガラス玉を見つめ悲しい顔をする
テオドールが2つのガラス玉を拾い上げリーデルに渡す
中にはそれぞれ綺麗な塵が収まっている
「これで破壊されてしまった世界復元の為に必要なものは揃った 君にこれを頼めるかな?」
リーデルはガラス玉を受け取る
「はいっす・・・」
「そう 気を落とすものでもないよ 元は魔獣だ 魔獣とは魔の塊から生まれる存在 同じ魔獣になる可能性もゼロじゃないさ ちょっとしたきっかけがあればね」
「きっかけ・・・そうっす! アレを残せばレゼさん達ならまた生まれ直せるはずっす!」
「希望が見えたようだね じゃあ構築班の所へ頼んだよ」
「はいっす!」
パタパタとリーデルが部屋を出て行く
山積みになっている書類に目を通す
「くくっくっくっく 予想以上に面白くなった データも沢山取れたし、本当に観測のしがいがある」
「ずいぶん ご機嫌だな テオドール」
「アスモウスか 君にも感謝してるよ 僕の提案を呑んでくれてね 世界を消滅させたかいがあったよ 荒魂と言う副産物が良い結果を生み出してくれた」
「そのおかげで俺は上位神の怒りを買って500年程、謹慎だとよ」
「それはすまなかった でも君なら今みたいに分神を飛ばして自由に外を動き回れるだろ」
「分神も色々と不便な面もあるのさ それより実験は終わったのか?」
「いや、まだまだ やりたいことは尽きないよでもあまりやり過ぎると上位神に気付かれそうだから暫くは大人しくしているさ それに魔獣が生まれるのには時間がかかるだろうからね」
「死神に選ばれた子か、同じ魔の塊でも同じ個体が生まれるのは難しくないか?」
「あぁ その事なら リーデルが上手くやってくれるさ」
「あの 下位神の子か そんな力あの子にあったか?」
「そうじゃない 僕はちょっとした助言をしただけさ」
「助言って・・・誘導の間違いじゃないか? 本当に君は悪い神だよ どこまで手の平の上なんだか」
「買い被りすぎだよ 僕はそこまで計算高くないさ でもくくっ本当に人類は僕の退屈を消してくれるよ 飽きないおもちゃを作ってくれてね さて次はどうなるか楽しみだよ 僕は愉しさを愛する神だからね」
「そうかい」
アスモウスは霧になって消えた
破壊された世界の欠片は全て集められレゼとディーの記憶のエネルギーを使い修復された
修復された世界で1000年もの月日がたった頃
かつて大規模な科学都市があった場所、実験の事故で今は白の毒に汚染され人が生きられなくなった死の都市に変化があった
都市の一角で滞留していた魔の塊が1つになり魔獣が生まれたのだ
「むう ここはどこ?うーん 考えてもわからない僕がレゼって事しか・・・でも何か大事なものを無くしてしまったような・・・気がする」
ひびの入った鏡には肌色の体に黒いサラサラの髪が肩まで伸び中性的な顔立ちに兎の様な耳と尻尾が生えた子供が映っていた
「これが僕?」
左右で瞳の色が違う
立ち上がり周囲を見渡すよくわからない朽ち果てた機械に紙の束、相当古く触っただけで崩れてしまった
書いてある文字も読み取れない
「ずいぶん古いな ちょっと探索してみるかな」
部屋を出て廊下を歩いていく
激しい戦闘があったのか壁や床には穴が空いていたり瓦礫が散乱している
どれも苔が生え、蔦に飲み込まれている
「何の気配もない ここには僕しかいないのかな・・・」
苔むした石畳を歩いていると急に足下が崩れる
「あっ!」
目をギュッとつむる
地面に落ちたような衝撃が無い
ゆっくりと目を開ける
影がクモの巣の様に広がり自分の体をキャッチしていた
どうやら影を操作する事ができるみたいだ
影を使い始めると探索の幅が広がった崩れて進めない場所でも進むことができた
白くくすんだどこまで行っても廃墟しかない世界を歩いて行く
この世界には自分以外いないのでは無いかと思い始めていた
どのくらいの時が経ったか分からないが突然気配がする事に気が付く
「僕以外に誰かいる!? 友達になれるかな?」
気配がする方へ歩いて行くと割れた水槽が幾つも並んでいる部屋に辿り着いた
「何の部屋だろう」
微かだった気配が大きくなる
部屋の隅で滞留していた魔の塊が1つに混ざり魔獣が生まれた
新たに生まれた小さな魔獣の様子を伺う
黒い狼のような耳にしっぽ 黒髪は少しクセっ毛の少年が起き上がる
「ここはどこだ?」
少年がこちらに気付き目を向ける
少年の翡翠色で綺麗だが目つきが悪い瞳と目が合った
胸に良くわからない感情が沸き上がりいてもたってもいられない衝動に駆られ少年に駆け寄り抱きついた
その存在を確かに感じるように強く強く抱きしめた
「僕はレゼ なぜか君を見たらずっとこうしたかった気がするんだ! 君は誰?」
なぜか瞳から涙が零れる
初めて会った筈なのに凄く懐かしい感じがした
「なぁっ!・・・」
抱きつかれた少年も初めは驚いていたが次第に泣きそうな困ったような顔になってレゼの肩に顔を埋めた
「俺はディー 俺も ずっと会いたかったんだと思う・・・」




