5話 馬車の旅
噴水広場はラヴァンタの中心に位置し
多くの人が利用する公園のような場所だ
屋台もいくつか出ており、美味しそうな匂いが漂ってくる
「でっかい噴水だな」
「エレノア まだ来てない」
「レゼ、あれ食いてぇ」
暖簾にはクレープと書いてある
「わかった 買ってくるからそこのベンチで待ってて」
「おう」
「はい」
ディーにはチョコバナナを渡し自分はミックスベリーを頬張る
程よい酸味が口に広がりクリームの優しい甘さを引き立てている
「うまいな」
夢中で食べている かすかにしっぽが揺れている
なんだか可愛い
「おまたせ ディー、レゼ 用事が長引いちゃって ごめんね
なんだかラヴァンタの近くで魔物の目撃が多発していて、なぜか東の方に生息していた個体が多いみたいなの東には嘆きの塔があって何か関係しているんじゃないかって
でその調査を依頼されて行くことになったの
だからレゼ達とは暫くお別れかな」
嘆きの塔・・・
たしかリーデルが荒魂がいる場所だっていっていたところだ
「僕たちも行きたい」
「えっ とても危険なところなのよ
いくらレゼ達が強いからって危ないわ」
「行かないといけない用事がある」
「用事って?」
「詳しくは言えない」
「そう 止めても無駄なようね
わかったわ...調査団には私から言っておくから
出発は3日後 正門に集合よ」
3日後
正門に行ってみるとエレノア 長いローブを着た女性 鎧姿の中年男性しかいなかった
調査団と言っていたから大人数かと思っていたのに
「レゼこっちよ」
「この嬢ちゃんと獣人が言ってた子か」
「見た感じ強そうには見えないけど大丈夫なの」
「紹介するわね この女性は魔導士のリン こっちは剣士のアッシュ
二人ともパーティーを組んでいる仲間なの」
「調査団なのに少ない」
「違うのよ 調査団は準備に時間がかかるから
あとから出発する予定
私たちは魔物を討伐しながら先に
嘆きの塔に向かうことになったの」
「さぁ 話はこれくらいにして出発するわよ
嘆きの塔までは馬車で一週間ぐらいかかるんだから」
馬車に揺られながらディーがつまらなそうにしている
「一週間なんてだりーいな」
ラヴァンタを出てまだ三日しかたっていない
「馬車の旅楽しいと思う」
「暇すぎて走った方がマシなんじゃねぇかって思えてくる」
「何でも初めてだから楽しい」
「おい、魔物が出たぞ ウルフが5体だ」
エレノアは隙をついて脇にナイフを突き刺す
リンは風魔法で切り裂き
アッシュは大剣で真っ二つにした
ディーは銃弾で脳天を貫き
レゼは影で串刺しにした
「あぁ 手ごたえのない魔物ばかりでつまんねぇ」
ラヴァンタを出発してから多くの魔物と遭遇したが
どれも弱い小物ばかりだった
それから何日か過ぎた
確かに同じことばかりで流石に飽きてきた
ディーと二人でだらけていると
「それにしても変わった魔法?を使うのね」
「あぁ ディーの武器も変わってるし
エレノアが言ったとおり二人とも只者じゃないな」
「そうでしょ」
「なんでエレノアが自慢げなんだよ」
「馬鹿言ってないで セリオンの町が見えてきたわよ
ほらあそこに見えるのが嘆きの塔」
霧の濃い森をずっと進んだ奥に
螺旋を描いた塔が天まで伸びている
「昔は願いの塔と呼ばれていて
最上階に着いた者のどんな願いも
一つだけ叶えてくれる女神さまが住んでいたの
だけどある日空から星が降ってきて
ここら辺一体を霧で覆てしまった
塔からは呻くような嘆くような声が聞こえはじめた
それから嘆きの塔と呼ばれるようになったって話
本当かは分からないけどね
塔の周りを大きな魔物が飛んでたって
言ってる人もいるみたい」
「そんなの迷信でしょ しゃべってないで着いたらさっそく
魔物について聞き込みして明日は塔に行ってみるわよ」
「ほんと リンはせっかちなんだから」
話を聞くと皆同じ事を話してくれた
塔の周辺が霧に覆われてから不作や天災などが頻発しているし
魔物も姿を見なくなり冒険者や旅の人もめっきり来なくなってしまったらしい
「やっぱりラヴァンタ周辺の魔物増加は嘆きの塔で起きてる異変によるものみたいね」
「三週間前に町から霧の原因を調べに行った人がいたけど誰も帰って来なかったみたいなの
だから今はみんな霧に近づかないようにしてるって」
「これは塔に行ってみないとな」
準備を整え
嘆きの塔の手前にある霧深い森の入り口にやって来た
「何があるか分からないから気合い入れていくわよ
念のためリンは索敵の魔法を使って」
「周囲には何も反応がない
だけどなんか変な感じがするから気を付けて」
「魔王が復活したのかと思ったけど
魔王軍の痕跡は無いみたいだし
別の要因があるのかしら」
一行は霧の中を進んで行く
暫く歩き続け、少し開けたところに出た時だった
ゲル状の魔物が襲ってきた
上半身は女性の様だが顔には亀裂があり
不気味な笑顔でこちらを見ている
下半身はトカゲの様だった
「こんな魔物見たことない みんな気をつけろ」
ゲル状の魔物は背中から無数の触手を伸ばし攻撃してきた
エレノアたちは予測できない動きに苦戦しつつも
確実にダメージを与えている
レゼとディーは余裕でかわし一撃で倒していく
際限なく現れていたゲル状の魔物は敵わないと察したのか攻撃を止めて森の奥に逃げって行った
「いったい何なの 突然逃げだして」
「いくら倒しても 手ごたえがなかったな」
「普通の魔物じゃないことは明らかね」
「この異変の原因に繋がっているのかも
逃げていった方へ行ってみましょ」
いったい何だろう
エレノアが言った通りゲル状の魔物は
なんだか今まで遭遇した魔物と違う感じがする
世界のエネルギーに近いものを感じたが
邪悪なオーラのようなものに包まれているようにも感じた
あれが荒魂なのだろうか?
考えても始まらない とりあえず先に進もう
先に進むと更に異様な空間になってきた
霧は無くなり空にはオーロラのようなものが走り
地面は亀裂みたいに黒い線が伸びている
進むにつれゲル状の魔物に遭遇する回数が増えたが
何体か倒すと今度は地面に吸い込まれるように消えてしまった
「やっと塔の下まで来たわね」
「これが嘆きの塔か・・・随分高いみたいだが登るのか」
「ここまで来て帰れないわ
原因はきっと塔の中にあるはずよ」
「確か試練をクリアしないと上に行けないって聞いたわ」
「どんな試練なのかな」
「俺とレゼなら大丈夫だろ」
エレノアたちの一歩後ろを歩きながら
大きな門のようなものを潜ると・・・
レゼとディーは塔の中にいた
前を歩いていたはずのエレノアたちは見当たらない
後ろを振り向くと壁で戻ることもできない
先に進むしか道は無い様だ
塔の外ではエレノアたちがレゼとディーがいないことに気づき辺りを捜索していた




