13話 這い寄る者
白銀寮の共同浴場(しっかり男女で分かれている)の脱衣所
「今日は疲れましたわ」
「色々あったけどみんな無事でよかったの」
ソーニャにくっつく
「ノエラ くすぐったいですわ」
「これが成長期というものかにゃ」
自分の胸と二人の胸を見比べる
男湯
「レゼさん ディーさんお疲れさまでした」
少し複雑な気持ちでレゼが服を脱ぐところを見ている
「そうだレゼ 前のより強化しといたからこっちを使えよ」
「うん」
オレンジ色のカフスを受け取る
これはディーが造ったローブの代わりになるものだ
数時間しか使えないものだが入浴の際には重宝している
「レゼ 手上げろ」
カフスを付け ディーに脱がせてもらう
「やっぱり・・・れぜさんは・・・なんですね・・・」
寮の浴場はそこそこの広さがあり三人だけだと広すぎるくらいだ
隣の女湯からは声がかすかに聞こえてくる
「レゼちゃんと目つぶっとけよ」
「うん」
ディーに頭も体も隅々まで洗ってもらう
「いつも思うんですが流石に甘やかしすぎませんか?」
「いいんだよ 俺がやらねーと レゼはテキトーだからな」
「そうですか・・・」
「ほら終わったぞ しっかり湯船につかってこい」
「おにーさんって言うよりお母さんですね・・・」
「何か言ったか?」
「いえ何も」
湯船につかるのは気持ちいい 毎日入れるのは幸せ ご飯も美味しい
学校生活も悪くない、ずっといられたらいいのに・・・
風呂から出るとすぐ夕飯だった
和気あいあいとした空気が流れる
みんなで食べるごはんっていつもより美味しく感じる
「レゼこれ好きだろ ほら 口開けろ」
箸で掴んだ唐揚げを口もとに持ってくる
「あーん・・・パク モグモグ」
美味しい
「ディー お返し」
「おう・・・サンキューな モグモグ」
「二人ともよく飽きないですわよね 兄弟でイチャつくのも程々にしてくださいませ」
「そんなんじゃねーよ 俺はレゼが快適に過ごせるようにしてるだけだ」
「それにしたって かまいすぎですわ」
「俺たちはこれでいいんだよ」
「ですが、いつまでも一緒にはいられるわけではないんですのよ」
「そんなことはねー 約束したからなずっと傍にいるって」
ディーの目には決意の色が浮かんでいる
何があっても揺るがない強い意志を感じる
「わ・・・かりましたわ・・・わたくしはもう何も言いませんわ」
呆れ気味に言う
食事を終え部屋に戻る
「レゼさん 荒魂の位置が分かったっす」
突然の通信、毎回の事ですっかり慣れてしまった
「随分かかったな」
「この世界では大型水棲モンスターの生息地を避けてドームが造られていますが数百年単位でドームを襲う個体が出現する様になってるっす
その個体に荒魂が寄生してしまって特定するのに時間がかかったってわけっす
闇雲に討伐してしまうと世界のシステムが崩壊する可能性があってしょうがなかったっす
でも随分と楽しんでいたっすね」
通信越しでもにやにやしているのが伝わってくる
「見てたのかよ」
「そりゃ バッチリ見てたっす」
「のぞきとはいい趣味してんな」
「自分はサポート役ですから状況把握は基本っす
変な誤解は止めてほしいっす」
「楽しかったのももうすぐ終わり・・・」
「仕事ですから仕方ないっす
荒魂が接近するのは明日になるのでよろしくっす」
通信が切れる
この世界での生活が長かったからなのか楽しかったからだろうか凄く寂しく感じるのは・・・
そんな気持ちを察してかディーが話しかけてくる
「そんな顔すんなよ ここの奴らとはお別れかもしんねーけど大丈夫だ
リーデルも言ってたろ レゼの世界を直せるってそうしたらそこでトモダチってのをまた作ればいいじゃねーか レゼの世界ならお別れしなくても済むだろ なぁ だから元気出せよ」
頭を優しく撫でる
「うん」
さっきまでの憂鬱な気分が晴れていく心がポカポカしてくる
暖かくなったせいか少し顔が赤くなった気がした
ディーに見られると恥ずかしいのでうつむいた
次の日
いつもと変わらない日常、授業を受け他愛もない会話をし一緒にご飯を食べる
いつまでも続いてほしいと願うかけがえのない時間
レゼとディーが白銀クラスと過ごす日常は緊急アラートの音と共に終わりを告げる
「来たな」
「うん」
アナウンスが流れる
「大型水棲魔物が出現しました 至急地底シェルターに避難してください
上位クラスの生徒と奇術騎士団は正門にお集まりください
他の生徒は担任の指示に従い速やかに行動してください」
正門にはかなりの数の奇術師と他3クラスが集まっている
「ついに現れましたわね 皆さん 気合を入れていきますわよ
このためにわたくしたちは訓練してきたのですから」
「怖いけど 頑張るの」
「無理せず自分たちができることを精一杯やりましょう」
「特訓の成果を見せるにゃ」
「現れたぞぉ!!」
奇術騎士団の一人が叫ぶ
町まではかなり距離があるが目視できる距離まで迫っている
団長が素早く指示を出す
「攻撃班は戦闘準備 防御班は魔法陣の展開 生徒は後方支援を頼む 接近してから作戦を実行する 気を引き締めてかかれ」
「はい!!!」
ディーに耳打ちをする
「奇術騎士団が戦闘を始める前に行こう この距離なら気づかれないかもしれない」
「おう」
気付かれないように列を抜け正門と町の入口の間にある大きな橋の上に立つ
「ここの上空からドームを超えて行けば海流に乗れるはず」
影で翼を作り ディーを抱えて飛び立つ
「任せたぜ」
ドームの漁谷(漁をするために開けられた穴)を通ればドームを壊さずに外に出ることができる
二人とも呼吸の必要がないのでそのまま海中に飛び込む
翼では進めないので掌と足の裏から影をスクリューのように動かして進んで行く
ディーの力で潜水艦を作っても良かったが流石に目立つのでこの方法で行くことにした
近くで見る水棲生物はかなり大きく感じたアクアエリアスの半分よりも大きいんじゃないかな
こんなのが近づいたらすぐ壊滅してしまいそうだ
烏賊と蛸を合わせた体はゲル状になっている
八本ある足のうち二本の先端にはおおきなハサミがついている
「今回から自分もサポートとして戦闘に参加するっす
それにしても資料にあるクラーケンより何倍も大きいっすね
荒魂が世界のエネルギーを吸収してあそこまで増幅したみたいっす 気を付けてくださいっす」
毎度突然通信が入るが一切気にしないことにする
ディーは下半身を魚に変身させ戦闘態勢に入る この前作ったジャッカルとかいう銃が気に入ったみたいでメインに使っている
「うねうねしてて気持ちわりーな」
「まずそう」
「食うのは止めた方がいいぞ」
「うん・・・食べない」
影で鎌を作る
「ぶちのめしてやるぜ」
戦闘態勢に入っても水棲生物はレゼ達に目もくれず街に向かって進んで行く
「無視してんじゃねぇ」
ジャッカルで赤い目を打ち抜く
水棲生物は痛みで口を開き叫んでいるようだが音の波紋が広がっただけだった
攻撃されたことでレゼ達を敵と認識したのか進むのを止めレゼ達を凝視し始める




