9話 入学試験
マリーナ奇術学校
ここは12歳から通うことのできる奇術専門の学校
優秀な生徒は特別クラスに集められる
奇術とは魔術 仙術 陰陽術などあらゆる術の総称
18歳までなら入学試験に何度でも参加できるが卒業試験に合格できないと卒業することはできない
卒業試験に3回落ちると退学になってしまう能力に厳しい学校なのだ
今日はその入学試験の日
一年で一番人が集まり、マリーナ奇術学校の近くは人でごった返していた
まるでお祭り騒ぎのようでとても賑やかだ
「人が多いな」
「つぶれそう」
「はぐれないように気をつけろよ」
「むぅ・・・」
「うわぁぁ どいてー!」
レゼに大荷物を背負った少年がぶつかってくる
「痛たた・・・」
「おい、てめーレゼになにすんだ!」
「ひぃぃ ごめんなさいっ!」
「ディー 離してあげて」
「ちっ」
「ごめんなさい 僕が前をよく見ていなくて・・・」
「どうした? ぼーとして頭でも打ったか?」
「え・・・あ・・・いえ・・・
僕はレグーダ・ラングランデといいます あなたのお名前は?」
「・・・? 僕はレゼ」
「俺はディーだ」
「レゼさん! とっても素敵な名前です!
レゼさんも試験を受けに来たんですか?
よかったら一緒に行きませんか!」
レゼの手を取り握りしめる
「うん」
レグーダは心底嬉しそうな笑顔でレゼの手を引いて歩き出す
「俺もいるんだが」
レグーダと三人で試験場に向かう道中色んな話をした
どこから来たとか どんな試験があるのかなど
「レゼさんは遠くから来たんですね
僕はこの街の生まれなんでこの街には詳しいんですよ
分からないことは何でも聞いてくださいね!
それとディーさんでしたっけ? レゼさんとはどんな関係なんですか?」
疑いの眼差しを向ける
「なんだこいつ レゼの時と態度違くねーか?」
「ディーは怖いから」
「それだけじゃない気がするけどな」
「で、なんなんですか!」
「俺とレゼは従・・・もごもご」
レゼに口を塞がれる
「兄弟?みたいなもの」
「ふーん・・・そうですか」
あまり納得していない顔だけどそれ以上は聞いてこなかった
小声で話す
「レゼなにすんだよ」
「従魔なんて言ったら変」
「だけど事実だろ」
「目立つのは良くない」
「まぁ・・・そうだな」
「レゼさん着きましたよ」
レグーダに言われ前を見ると建物の城壁に新入生選抜試験会場と書かれた布が垂れ下がっていた
受付を済ませ大きな門を潜り抜けると闘技場の様に開けた場所に出た
闘技場の上の方から声がする
声の主はここの教師でこの試験の監督官も務めるようだ
「ふわぁ・・・」
話が長くディーは大きなあくびを漏らす
試験会場は空気が張り詰めていてディーの様子は場違いな気がしてくる
話が終わり、いくつかのチームに分けられた
人数が多いから順番に試験を受るようだ
レゼ達三人は一番手のチームになった
他のチームは別室で待機しているようだ
会場に声が響く
「第一の試験は魔力測定
この魔鉱石に魔力を注いでいき、破壊できたものを合格とする」
「これを壊せばいいのか」
人差し指に乗せて回す
一人ひとつラクリマが渡され、魔力を注いでいく
レゼやディーも力を込めたら直ぐに粉々になってしまった
「ずいぶんもろいな」
周りには苦戦している人もちらほらいる
その中にレグ-ダもいた
「くぅー・・・はぁ はぁ
レゼさんすごいです! 僕はやっとのことで壊すことができたのに・・・」
「脱落者は速やかに退場にてください」
泣きながら退場するもの、諦めきれないのか係員に強制的に連れていかれる者たちもいた
「第二試験は浮遊魔法
どんな魔法、魔道具を使ってもいいので浮遊してもらいます
魔力を使っていれば基本何をしても大丈夫です」
「飛ぶのは得意」
影で翼を作る
「箒で飛ぶやつもいるのか」
錬成で傘を作る
「なんかファンシー」
「うっせーな 本で読んだんだよ メリー何とかってやつがこれで飛んでたんだよ!」
「何言ってんですか 魔法使いと言ったらこれでしょ!」
レグ-ダは胸を張って一本の箒を取り出す
大半の受験者が飛ぶのに使っているものだ
「ひねりがねーな」
「こういうものは基本が大事なんです!」
「第三試験は射撃
5つある的を攻撃していただきます 破壊できなくても当てれば合格になります」
「射撃は得意だ!」
黒い銃身の13mm拳銃を錬成する
「思ったより重いな・・・まあ大丈夫だろ」
的めがけて連射する 的は跡形もなく吹き飛んでしまう
「次は僕の番」
火の大玉を作り出す
5つ並んだ的と直径が同じくらいの大きさだ
近くにいなくても熱風を感じる程だ
それ程の威力があれば案の定、的だけでなく地面も熱で消し飛びクレーターが出来ている
「流石レゼだぜ!」
「はわぁぁ・・・やりすぎですよ!これは修復するのに時間がかかりそうですね・・・」
「むぅ」
修復のあとレグ-ダも無事合格することができた
猫の使い魔を召喚して的を破壊していた
第三試験の合格者は別室に通され、他のチームが終わるまで休憩になった
「これで試験は終わりなのか? 簡単だったな」
「そうですか・・・僕は疲れましたよ・・・レゼさんたちは加減を知らなすぎです」
「・・・むぅ・・・」
「レゼさん?・・・ね 寝てる! 寝顔も可愛い・・・」
ディーの膝を枕にして寝息を立てている
「羨ましい」
「寝ちまったか」
別室にはレゼ達のチームの他に3チーム程残っている
何やらこそこそと話していたり 本を読んでいたりしている
数時間後
全てのチームが第三試験を終え、合格者は最初の闘技場に集合している
レゼは寝ているのでディーがおぶっている
受験者は半数以上が残っている
「これから最終試験を始めます」
「あれで終わりじゃなかったのかよ」
「何をするのかしら」
「この俺様にかかれば朝飯前よ」
「静粛に! 内容は一対一での対決です、ただし殺してしまったら即失格になります
それでは準備ができ次第始めてください」
「対決なんて・・・ど どうしよう 僕戦ったことなんてないのに」
「殺せねーのはめんどーだな・・・おいレゼ起きろ」
「むぅ・・・何?」
「最終試験が始まるぞ 内容は対決で殺しは無しだとさ」
「うーん・・・分かった」
伸びをしてディーから降りる
降りると肩を叩かれる
「ねえあなた 私と対決してくれない?」
セクシーな恰好の女性が話しかけてくる笑い方は少し邪悪な感じがする
「相手がいなそうだしいいわよね」
この子ちっこいし弱そうね 他の試験もきっとまぐれで合格したんでしょ
私の合格は決まったも同然だわ
「いいよ」
「レゼ大丈夫か」
「うん」
「そうかじゃあ 俺はあいつと戦ってくるから後でな」
「話は終わったかしら・・・それじゃあ始めるわよ!」