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天翔けるヴァルキュリアス  作者: 袋石ワカシ
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第5話  訓練(1)



  第5話     訓練(1)





 「はぁ!?家から通うんじゃないんですか!?」


 ニナは予想通り怒った。


 「こんな近いところですよ?家から通ったっていいじゃないですか。そしてあまつさえ兄さんを危険にさらすなんて!!直談判しに行ってやる」


 ニナは寄宿舎に寄宿すること、実力を示すために模擬戦闘を行うことの2つについて怒っている。


 「僕は構わないよ」


 ニナの怒りを鎮めるように言う。

 いつもののニナならこれで、しょうがないですねと怒るのをやめるのだが今日はそうはならなかった。

 

 「いいえ、私が構うんです。このままでは私がこの家に一人ぼっちに……。そして魔導士官学校にも1とりでさみしく歩いて行くことに」


 ニナの瞳は潤んでいた。

 僕ら兄妹には親がいないのだ。

 僕が生まれてすぐに母と父が離縁して僕は父について行った。

 そして父の後妻に入ったのがニナの母親だった。

 しかし、ニナの母親は、数年前に病で倒れ父はそのショックでおかしくなってしまいこの家に僕ら兄妹を残したままある日、行方不明となってしまった。


 「そうか……ごめんね。この埋め合わせはいつか必ずするから」

 「…兄さん……」

 

 ニナはぎゅっと抱き着いてきた。

 そして顔を胸板に押し付ける。

 ニナは悲しいことがあっても涙を見せない強い少女だ。

 だからこうして涙を見せないようにしている。

 しばらくするとニナは泣き止んだ。

 

 「そういえば、さっき埋め合わせは何でもするって言いましたか?」


 さっきまでの涙はどこへやら。

 ニナの顔に笑顔が戻っていた。


 「うん」


 何でもいいとは言っていないがこの際、なんでも聞いてあげよう。


 「何でもいいんですよね、ゆっくり考えますから楽しみにしていてください。そろそろ晩ご飯を作りますから」

 「僕も手伝うよ}

 「はい、お願いしますね」


 こうして少しずつ機嫌をなおしてもらう。

 それが兄として磨いてきた妹のご機嫌取りの方法だった。

 とにかく寄り添う。

 




 夕飯はいつもより豪華になっていた。

 ニナが兄と一緒に料理ができるので調子に乗ったのだ。


 「楽しかったですね」

 

 ニナは幸せそうに顔をしている。

 

 「そうだね……こんなに食べれるかな」

 「残ったら明日の朝食に出すだけですよ。兄さんはしばらく家でご飯を食べることができないんですから……」

 

 ニナは少し寂しそうだった。


 「ごめんね」

 「いいんですよ。私もそろそろ兄離れしないといけませんね」


 それはそれで兄として妹の成長はうれしいのだが少し悲しくも感じた。

 






 −夜 演習場―




 女装をしてエマニエ司令官を待つ。

 

 「待ったか?」

 

 ファイティングウェアを着て装甲を纏ったエマニエ司令官が来た。

 

 「いいえ、今来たところです」

 「そうか、なんだか男女の待ち合わせみたいだな」


 少し顔を赤らめてそんなことを言う。

 以外にこの人は若いんじゃないのか。

 ファイティングウェアは少し薄めの素材でできておりエマニエ司令官の魅惑的な体の曲線に沿って張り付くようだった。

 いや、エマニエ司令官がスタイルが良すぎてそうなっているのだ。

 内側からファイティングウェアが2つの膨らみに押し上げられている。


 「とりあえず、装甲を装着してみようか」

 「はい」


 エマニエ司令官の後ろについていくと大きな倉庫のような建物の前に着いた。

 入っていくとそこには武器や装甲がおかれていた。


 「ここが、格納庫だ。この中から君に合うタイプを選んでくれ」


 そこには様々なタイプの装甲が置かれていた。

 基本、これらのアーマーは関節部や顔面部分以外は装甲がある。

 

 「順番に装備を紹介しよう」


 そう言ってエマニエ司令官は、手招きする。

 

 「君は≪飛翔魔法≫を行使できるのでフルークアーマーを装着する必要はない。なのでこの中から好きなタイプのものを選んでもらう。例えばこの〈フェンサータイプ〉これは、装甲も薄く防御には不利だが速度が出せる。接近戦使用のアーマーだ」

 

 それは、腕にパイルアンカーを装備していた。

 パイルアンカーは先端部が尖っている槍の穂先のような形状のものでこれを使って相手を装甲ごと刺し貫くためのものだ。

 

 「その横にあるのが〈ヤークトタイプ〉だ。こいつは、魔導銃による銃撃の反動に耐えることと接近戦ができないので接近戦での敵の攻撃に十分に耐えるため装甲が厚く重い。速度はその分落ちる」


 それは魔弾を撃ち出すライフルを装備していた。

 魔弾は行使する者の意思に従い飛翔する弾だ。

 この場合の魔弾というのは伝承上の武器のひとつである。

 世界各地には、レガリア(王の器)が眠っているとされておりその中にある【悪魔の陥穽】といわれる銃である。

 この銃の命中精度は極めて高く伝承によれば10?以上離れた敵にすら命中したという。

 しかし欠点もある。

 それは、なぜ【悪魔の陥穽】といわれるのかにある。

 この武器は悪魔が太古の昔に製造したものであり使用者に不幸をもたらすという。

 この銃で撃てる魔弾の中の数発は悪魔の意思によって飛翔する。

 悪魔は使用者にとって最悪のタイミングを見計らいこの魔弾を操作し使用者の最も望まぬ方向へと魔弾を導くという。

 このアーマーに装備されているのはそんな魔導銃のレプリカだった。

 撃ち出す魔弾は魔力こそ帯びているものの使用者の意思に従って飛翔することはない。

 

 「他にもここにはないが〈ボウマンタイプ〉と〈ランサータイプ〉がある。名前の通りクロスボウを装備したものと槍を装備したものだ。何か質問はあるか?」

 「腕に装備する武器は取り換えが可能ですか?」

 「ああ、むろん可能だ。使用者の好きなように変えられる」


 腕に装備できるのは小型のクロスボウやパイルアンカー、カイト・シールドなどだ。

 両腕の装甲に装備できる。

 

 「まあ、好きなタイプを選んでから考えろ」

 

 エマニエ司令官は、〈ランサータイプ〉のアーマーを装着しており腕の装甲に付随する装備は右腕に小型のクロスボウで左腕にカイト・シールドであった。

 

 「どのタイプのアーマーを装着する人が一番少ないですか?」

 「好きなのを選ばなくていいのか?」

 「はい」


 僕には速力という武器がある。

 それに、男だ。(女装により見た目は女だけど)

 女性たちに大変な思いは可能な限りさせたくない。

 

 「もともとの数としては〈ヤークトタイプ〉だ。なんといってもあの魔導銃は量産が難しく数が少ないからな。アーマーの数に対してだったら〈フェンサータイプ〉だ。接近戦は最も危険だから選ぶ奴が少ない」

 

 〈フェンサータイプ〉は、剣をふるって至近距離で殺り合うのだ。

 ランスよりもリーチの短い剣は命の危険が大きい。

 

 「じゃあ、僕は〈フェンサータイプ〉にします。女ですけど男なので」


 発言が、性別不明の人だ。


 「君がしたいのならそれにすればいい。腕まわりの装備を付けて訓練をするぞ」


 腕まわりの装備は右腕にパイルアンカー、左腕にカイト・シールドにした。

 完全に接近戦用の装備だ。

 腕部分の装甲に着けられたレールのようなものに装備する武具の金属部分をスライドさせて取り付ける。


 「用意はできたか?」

 

 まわしてみて取れそうな様子はない。


 「はい」

 「ならば、始めようか。君はすでに飛び方をしているから戦闘訓練をいきなりだが始めるぞ?」

 「お願いします」


 エマニエ司令官は顔を引き締めた。


 「「飛翔せよ、フリューゲル!!」」


 2人は満天の星空へと閃光とともに上昇していった。

 

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