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天翔けるヴァルキュリアス  作者: 袋石ワカシ
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第3話  妹は考えすぎです


 第3話   妹は、考えすぎです




 面会の後、妹に天空騎士団に入団することになったと言ったら


 「どういうことですか!?しっかり説明してください。私に許可もなく何勝手にしてくれちゃってるんですか!!」


 と怒られた。

 懇切丁寧に状況を説明したところでようやく妹に納得してもらえた。

 自分に合うサイズの女の子らしい服は家にはないので週末に妹と買いに行くことにした。

 自分一人では女性向けのお店に入りずらいし何を買うべきかもいまいちよくわからない。

 そして今日の妹は、まだ怒っているのかいつものように明るくなかった。

 

 「納得はしましたが許したわけじゃないですけどね」

 「いや、だから気が付いたらこういうことになっちゃったんだよ」

 

 ふーん、そうですか、と妹は冷たい態度をとる。

 

 「兄さん、私が何で怒っているかわかりますか?私を学校まで送ってくれる人がいなくなっちゃうじゃないですか!!それに、兄さんが変な女に誑かされてしまうことに……考えてみただけで恐ろしい」


 赤い顔になったり青い顔になったり忙しい。

 今日は、空を飛ばずに2人で歩くことにした。

 街の中は人が多くて目につかずに降下するのが大変だからだ。

 

 「兄さん、ここの角を右に曲がると最初の目的地です」


 角を曲がったところにはおしゃれな感じの店があった。

 しかし、お店に近づくうちに男子は店内に入ってはならないことを悟った。

 なぜなら、

 

 「ランジェリーショップです。やっぱりいくら女装とはいえこういうところからしっかりしないといけませんよ」


 おいおい、僕は男子だよ?

 ここは、どう見ても入っていい場所じゃないでしょ。

 

 「ほらほら、とまってないで行きますよ?」

 

 妹にぐいぐいと体を押される。

 いやいやいやいや、待って。

 

 「僕、男だよ?」

 「知ってますよ。これから女になろうとしている男でしょ?」


 知ってるんならなおのこと入っちゃだめだろう。

 店の中からこのじゃれあいが見えるのか、中にいる女性客と目が合う。

 絶対変な眼で見られてる。

 その間にもお店の入り口との距離はどんどん縮まっていく。


 「うわっと!!」


 ついに店内に押し込まれてしまった。

 店のいたるところに下着下着下着。

 

 

 「兄さん、どれでもいいので選んでください」

 

 えっ、遊びじゃなくて本気?

 うわわわわわ。

 周囲を見ると、店の中の女性客の多くから汚物を見るような眼で見られる。

 店員ですら……だ。

 早く逃げ出したい。

 適当にその辺にあったものをつかんで妹に渡す。


 「こっこれなんかどうかな?」

 

 妹は渡されたそれを吟味するように見る。


 「なるほど、このちょっといやらしいのがいいんですか?」

 

 よく見たらかなり布の面積が小さいものだった。


 「うわわわわっ!!」


 慌てて妹の手から奪い取りもとにあったところに戻す。


 「情けない兄さんですね。わかりました、私が適当に選んでおきますからその辺で時間をつぶしていてください」

 「いいの?」

 

 妹が頷く。

 これ幸いとランジェリーショップから逃げだした。

 自分でも恥ずかしいと思う。

 本当に自分は情けない兄だと思った。

 





 

 疲れたので一時買い物を中断してカフェに来ていた。

 疲れたのは肉体ではなく精神である。


 「兄さん、こんだけを買ってきました」


 今日の獲物と言わんばかりに袋から取り出して広げて見せてくる。

 やっとこのカフェで一息つけると思ったのにここでも変な眼で見られてしまっていた。

 

 「見せなくていいから、周りからの視線が……」

 「わかりました。本当に周囲からの印象を気にしますね」


 小心者でごめんなさい。

 情けなくてごめんなさい。


 「この後は、洋服と香水、化粧品といった小物とまだまだ買う物はいっぱいありますね」


 女性は、いろいろ必要なものがあって大変だなと思った。

 

 「ニナ、なんで女装するのにこんなにも本格的なんだ?」


 ここまでするとそれなりにお金がかかる。

 なにもここまでしなくてもいいだろうに。


 「えっ?決まってるじゃないですか。兄さんの低層を守るためですよ」


 何がどうつながるとそうなるんだ?

 いろいろニナは心配しすぎなんじゃないだろうか。

 

 「わからないですか?じゃあ説明します。天空騎士団にはどんな人たちがいますか?」

 「女の人しかいないという話を聞いた気がする」

 「それは気がするではなく事実です」


 妹は腕を組んで、薄い胸をそらしていた。

 一呼吸おいて妹が話し出す。


 「つまりこれがどういうことか、それは女しかいないから男に飢えているということなのです。この意味が分かりますか?」


 いや、どうみても考えすぎだろ。

 そもそも、男がいないからと言って男に飢えるというわけではないと思うが。

 

 「どう意味?」

 「わからないですか……それはつまり、兄さんの貞操が危ないということです」


 ニナはかなり大真面目な顔で言っている。

 そして、周りからの目線が……痛い。


 「ニナ、声が大きいよ」

 「これは、大事な兄さんの貞操の話ですよ?」


 いや、だからそういうこと人前で大声で言わないで〜。

 視線に耐えきれなくなって妹の手を引き店を出る。

 飲食代は、ちょっと多めに店員に渡した。

 落ち着くために入った店で落ち着けない。


 「兄さん代金どうみても多かったですよ?」

 「ああ、ちょっとほかの人からの視線に耐えかねて、すぐに店を出たかったから」

 

 外が一番落ち着く。

 でもこれは、妹が僕の体に気を使ったからだ。

 ちょっと、それが過度であったためにこうなっただけで。

 その後も、街を駆け回りいたるところで恥ずかしい思いをしつつなんとか買い物を終えた。

 

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