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天翔けるヴァルキュリアス  作者: 袋石ワカシ
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第2話  どうやら天空騎士団に入団するらしい



  第2話   どうやら天空騎士団に入団するらしい



 翌日、妹は早く起きたらしくシーツやクッションに金属のにおいが移ったとか文句を言いながら朝食を作っていた。

 ご飯を作るのは2人で分担している。

 朝食を食べ終わると急いで学校へ行く支度をすませる。

 身支度をすませると妹を待つ。

 

 「お待たせしました、兄さん。今日もいつも度お願いしますね」

 「わかったよ」


 妹は≪飛翔魔法≫を使えないため兄に甘えて魔導士学園まで送ってもらっているのだ。

 よいしょ、と妹を抱きかかえる。

 

 「それじゃあ、しっかり腕につかまっててよ」

 「はい、よろしくお願いします」

 

 妹は、ぎゅむっと体にしがみついてきた。

 ほのかに甘いにおいが漂ってくる。

 

 「じゃ行くよ、飛翔せよ、フリューゲル!!」


 ≪飛翔魔法≫を使えることは男なのであまりばれていいことではない。

 なので、人の目に留まらないうちにそれなりの高さまで飛び上がる。

 高度が高くなると、空気も一層冷える。

 寒いな。

 高度は800メートルといったところか。


 「兄さんはすごいですね。私も≪飛翔魔法≫がつかえれなよかった。そうすれば、2人で手をつないで飛ぶことができるのに……。手をつないで空を飛ぶ恋人たちってなんだか素敵じゃないですか?」


 妹はブラコン宣言をぶちかます。

 人がいないからいいけれど。


 「そうかもしれないね」


 下を見るとあさのひかりできらきらと輝く人家が見える。

 大きな街の中心部には、四角形の水堀に囲まれた大きな城、そしてそのそばにある五角形の敷地。

 この敷地は王都の守備拠点であり王立魔導士官学校がある敷地でもある。

 

 「そろそろ高度を下げるよ」

 「はい」


 2人はかなりのスピードで下降していく。

 これも、他人に姿を見せないためだ。

 地面に接触する瞬間に少し上昇し、着地の衝撃を和らげる。

 降りたのは、魔導士官学校の体育館裏だった。

 校舎のほうは人が多いので姿を見られてしまい降りることができない。

 

 「なんだか、2人っきりで人気のない校舎裏とかちょっと雰囲気ありますね」

 「あるとは思わないけど」

 

 今日の妹はいつもよりもブラコン発言が多い。


 「ニナ」

 「なんですか兄さん」

 

 ニナはきょとんとした顔で見つめてくる。


 「今日はなんかいつもよりそういう発言が多いんじゃないかなって……なんで?」

 「当り前じゃないですか。昨日の少女に兄さんが見とれていたことを私は知ってますよ?どこの馬の骨かもわからない女なんかに兄さんをやるわけにはいきません」

 「そんな……見とれるて……、ちょっと髪がきれいだなって思ったぐらいだよ」

 

 ニナは疑わしげな顔をする。


 「ほんとのところはどーだか知りませんが、そうだったことにしましょう」


 校舎の玄関まで歩いていく。

 

 「おはよーニナ!!今日もお兄さんと一緒に登校?まさか……禁断の愛!?」

 「そのくだり、毎朝やってない?」

 「だって、そういう風に見えるんだもん」


 このニナのクラスメートは毎朝こんなことを言ってくる。

 人前でそんなことを言われるのは少し迷惑だが妹と仲良くしてくれていることは率直に兄として嬉しい。


 「じゃあ兄さん、この辺で」

 

 ニナはすたすたとクラスメートと共に去っていった。

 この学校は中等部と高等部が一緒になっており、連携して国の未来を担う若手人材の育成を行っている。

 昔は、中等部が3年で高等部が2年だったが今は今日いう制度が切り替わり、中等部も高等部も3年となっている。

 この学校が五角形の形をしているのは昔の名残だ。

 2年の高等部校舎へと入っていく。

 自分のクラスに入るとまだ生徒の数は少なかった。

 そしてしばらくすると生徒がそろい気が付けば授業が始まっていく。


 

 

 



 昼休みになりクラスメートとしょうもない話をしながらランチタイムを過ごしていると他のあわただしそうにやってきて担任に何事かを耳打ちしていく。

 その間、担任と目が合った。

 その教師が去っていくと、担任の良く通る声で名を呼ばれた。

 

 「アレス、面談室まで行ってこい。客人だ」

 

 教室にいる生徒の視線が一気に集まった。

 自分としては特に呼び出しをされるようなことはした覚えがない。


 「お偉いさんだそうだ。いいから行ってこい」


 視線を背中に浴びつつ、食べかけの昼食を片付け面談室へと急ぐ。

 面談室に着くとほかの教師がいた。

 

 「アレスが来ました」


 男の教師は中にいるだろう客人に向かって告げる。

 すると中から、女性の声が聞こえてくる。

 

 「アレス君、君に話がある。入ってくれ。それと教師の方は、この部屋から離れてくれ」

 「わかりました」


 男の教師は面談室の扉を開けると去っていった。

 開けられたとを閉めながら入室する。

 そこにいた女性は、金髪で長身の目鼻立ちのはっきりとした妙齢の女性だった。

 その女性は、軍服をまとっていた。

 それも、天空騎士団の軍服である。

 天空騎士団は、演習を公開していたりしているので自分の住む家が近いので見に行ったことがある。

 だから、天空騎士団の軍服をまとっていることが軍に関係なくても見たことがあるのでわかるのだ。


 「そんなにかしこまらなくていい。楽にして話を聞いてくれ」

 「はい」

 「昨日は、アスラがお世話になったようだな」

 

 昨日の銀髪の少女はアスラというのか。

 そして、ここに僕がいることを知るその諜報力にも驚いた。

 そんな心を見透かしたようにその女性は、どこで情報の出所を語った。


 「君は、今なぜここにいることが分かったのか?と考えただろう。君は昨日アスラに名を告げた。その名前をもとに、ここの学生であるだろうと何となく見当をつけて探してみただけだ。こんなに簡単に見つかるとは思わなかったが」

 

 その女性は、一口紅茶をすすった。


 「さて、本題に入ろう。君に助けてもらったことはアスラから聞いた。ありがとう。しかし、君は何者なんだ?聞いた話じゃ、君は≪飛翔魔法≫を使えることになる。それもかなりの高速で。むろん他言はしないぞ?」

 

 少ない情報からの分析能力がすごい。

 

 「はい、僕は≪飛翔魔法≫を行使することができます。そして≪攻撃魔法≫もそれなりに」


 そこまで知られてしまっているのなら隠すことは難しいだろう。

 「やはりそうか。それは是非私の部隊に来ていただきたいな」


 今何て?予想外の話に驚く。

 てっきり、異端として扱われるかと思ったからだ。

 

 「と言うか来ないか?」

 

 この話自体は承諾すればしっかりとした職に就けるので別段問題はない。

 魔導士官学校に通っているのだから、いずれ軍に士官として就職することにはなるだろうから。

 しかし、自分はまだ学生だ。


 「あの、まだ高等部の教育が終わってないので……」

 「そんなことを条件としてクリアすれば入団してくれるのか?それについては大丈夫だ。アスラは、何歳に見えた?」

 

 言われてみればアスラは自分とさして変わらない年頃に見えた気がした。


 「アスラは、16歳なんだよ。家庭の事情ですでに天空騎士団に入団しているが。われら天空騎士団は、高等部教育をしっかりと行える施設がある。つまり君が今、天空騎士団に入団してもしっかり高等部教育を行える。そしてこの魔導士官学校の授業に則した授業を行っている」

 

 それなら、入団しても問題が……ないと言いたいがもう一つだけある。

 それは、自分が男だということだ。


 「でも、僕は男ですよ?」

 「問題ない、これを持ってきたからな」


 そういって女性は、持っていた大きめのバッグに手を突っ込み一つの紙袋を取り出す。

 包装していた紙が開かれると、そこには栗色の髪のウィッグがあった。

 そしてそれを渡してきた。


 「ちょっと試しに着けてみてくれ」


 女装してでも入団しろということか。

 手渡されたウィッグを着けてみる。


 「似合うな。何となく顔の特徴を聞いておいて正解だった。あとは、適当にもみあげとかに手を加えれば問題ないな」


 この人、準備がいいな。

 鏡に映った自分の姿を見てみると割と似合っていた。


 「これは君に渡そう。女装がばれないように、顔を整えてきてくれ。一週間後天空騎士団演習場にて待っている。あと適当に、女の子らしい服を着てきてくれ。時間をとって悪かったな」


 妙齢の女性はすたすたと面談室を出ていく。

 目の前には、残された栗色のウィッグ。

 ちょっと入団しても悪くはないなと思ったあたりから、話が向こうのペースでとんとん拍子に勧められていつの間にか天空騎士団に入団することになっていた。

 はぁ……。

 どうなるんだろう、僕。

 

  

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