転生前話
どうやら死んでしまったようです。
私の名前は佐々木啓、45歳、妻子とは別居中、
所謂社蓄で半年間休まなかった結果、遂に倒れてしまったようでそのままご臨終。
上司達には私の濃い隈は見えなかったようだ。
ともかく現在真っ白い空間にいる。
死後の世界は思っていたよりも何もないようです。
「やあ、どうも」
突然背後から声がした。振り返るとそこには柔らかく笑った美しい女の人が立っていた。
「、どうも」
「いきなりだけど貴方は死んでしまいました」
「はい、そのようですね」
「おお、話が早いね、助かるよ」
「これまたいきなりだけど貴方には転生する権利が与えられました、いえーい」
女の人は自分でファンファーレのまねをし、一人で拍手した。
「というのもね、君あまり良い人生送れなかったでしょう」
たしかに昔からの断れない性格と不運が相まって人並みの幸せな思いは出来なかったかもしれないが、そこまでだろうか。
子供の頃は多分楽しい生活を送れたし、幼い頃の家での生活に不満もない。
妻と結婚して子供が出来たことや弟や妹達の成功を聞いたときはとても幸せだったと思うのだが。
「その理由ってのがさ、色々な人の不幸のしわ寄せが君に集中したっていう。まあなんとも不運な話なんだよね」
「そんな哀れな佐々木君には神様からなにか贈り物がおくられることになりました」
女の人曰く、転生とは死後の世界でしばらく働かないと出来ないらしい。
生前の行いによってはその期間が延長・短縮するようだ。
「何故転生の権利なのですか?」
「え?今流行ってるんじゃないの?」
「すいません、そういうものに疎いもので」
「そっか、そんな時間無かったか、これは失敬」
女の人は豪快に笑い飛ばした
「といっても私は輪廻を司る女神なのでそれぐらいしか出来ないってのもあるけど、」
薄々わかってはいたけど、やはり神様だったのか
「気になっただけなので、大丈夫です。」
「そう?なら話を進めよう」
「貴方に転生して貰うのは剣と魔法の世界です、名前とかは特にないよ」
「文明はそれなりに発展してる、まあ国によるけどね」
そういえば似たような話を後輩から聞いたことが有るような無いような
「まあ、行ってしばらくすれば慣れると思うよ」
それから少しの間、転生時の状態やスキルなどといった事について教わった。
「最後に君の要望をいくらか聞いてあげよう」
いつまにか女神様は私の呼び方が君になっていた
「そうですね」
生前からしてあまり欲はなかったのだが、
「特に思いつかないのですが」
「深く考えずに生前できなかったこととか今思ってることでいいんだよ?」
とすると、、、
「ゆっくり気持ちよく寝たいですね」
「っ!」
女神様が吹き出した、真面目なのだけれど
「ごめんごめん、分かった叶えられるようにしとくよ」
「ありがとうございます。」
「他には何かあるかい?」
「そうですね、 退屈しないことでしょうか」
「うんうん、了解」
願いはもう無いと思う
「それじゃあそろそろ行こうか」
「はい」
「そうだ、君のこと気に入ったから転生後も話し相手になってあげるよ」
女神様が話し相手とか大丈夫だろうか
こうして私は転生することになった。
前世に未練が無いと言えば全くの嘘になるが、新しい人生を踏み出すことになったのだ。