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生徒会長は嫁!

高校2年生である『大和 撫子』生徒会長。その人物のことを聞けば、誰もが彼女のことを褒め称え、誰もが彼女のことを知っていた。


知らなかったのは、どうやら君だけといった塩梅だ。


だからだろう。君が以前、その外見を伝え思い当たる人物を尋ねても、彼女の名前が出てこなかったのは。学校では知らない者が居ないほど有名な彼女ことを、聞いてくる学生がいるなんて、誰も思わないものだ。


まあなんであれ、君が知りたがっていた彼女の名前は、意外な形で知ることが出来た。それだけで君は、正体不明だった嫁が、確かに存在していると思える様になったことだろう。


名前が分からない相手というのは、言い知れぬ畏れを感じるものだ。どれだけ話しても幽霊か妖怪を相手にしているような、正体が掴めないような感覚に陥ってくる。


それが、名前を知ることが出来ただけで相手が人間だと思えるのだから、人間の認識能力というのは、とことん唯物論的では無いのかもしれない。


そんな、色々と考えさせられる嫁=撫子先輩から、君のSNSへメッセージが届いた。


『昼休み、ご飯を食べる前に、生徒会室まで来てくれないか?』


こんなメッセージだ。


いつも暇もてあそぶ昼休み、そんな中で最も気になる人物から来たお誘いだ。特に断る理由も浮かばない君は、快諾のメッセージを送り返すのだった。




生徒会室なんてモノに縁がない日常を送っていた君だ。見知らぬその扉を開けるのに、少し緊張しているかもしれない。


その扉の先に、どんな世界が広がっているのか、少しでも未知の世界に触れられると思うと、ドキドキとしてしまうものだ。


と言っても、ただの学校の一施設だ。そうたいしたことも無いだろうと想像が付く。それでも無駄に緊張させられるとしら、それはきっとその中に彼女が居るからだろう。


ガラっ、という音と共に開いて聞く扉。その先にあったのは、三脚の机と、いくつかの椅子。そして、中央で座る彼女だ。


その彼女がきっと撫子先輩だと君は思ったのだが、正面の窓から入ってくる陽光で、彼女の姿はシルエットでしかわからない。ただ、その漆黒の髪は、照らされキラキラと輝いていて、君はとても綺麗だと思うことだろう。


きっと、撫子先輩は、微笑みで君を出迎えてくれているはずだ。


だというのに、君はいつもと違う雰囲気のせいで、彼女が何か得体のしれない存在のように見えてしまうことだろう。


そのような感覚のせいか、ついついその場で立ち止まり、君は彼女をただ見つめてしまう。その時間が永遠に続いてしまいそうな、そんあ感覚に陥った君を現実時間へ拾い上げたのは、


「どうした? ぼうっとして。速く中へ入ってくるといい」


撫子先輩の催促の声だった。


その聞き覚えのある声を聴いて、君は現実感を取り戻したのだろう。フラフラとではあるが、部屋の中へ入り、撫子先輩を素直に見ることが出来た。


相変わらず、その黒髪は綺麗だったが、この学校という初めてのシチュエーションのせいか、やはりその綺麗な姿に君はドキドキとしてしまう。


ただ、いつまでもドキドキとしていても仕方がない。彼女にここへ呼ばれた用件を尋ねると、彼女は意地の悪い笑顔を浮かべた。


「なに、朝の集会で面食らった君を餌に、ご飯でも食べようと思って君を誘ったのさ」


そういって、彼女は二つ用意したお弁当箱を見せてくるのだった。




撫子先輩が用意したお弁当のメニューは、肉そぼろが引かれたご飯と、昨日の晩御飯の残りと言った面々だった。


そのお弁当も、やはりおいしい。


日頃食べている学食のパンとは比べ物にならないくらい、本当に美味しいのだ。そんなお弁当を君は食べていると、彼女が話かけて来た。


「ふふ、美味しそうでよかったよ。……ところで、君は今朝の様子を見るに、やっと私の名前を把握したようだな。少し、遅いぞ」


これは、何と言うことだろう。どうやら彼女は、君が薄情にも嫁の名前すら知らない唐変木だということを知っていたようだ。


これは、男の沽券に係わる失態だと言ってもいい。君は、なんて奴なんだ。


と、思う所だが。


「けど、許してあげよう。君が私に名前を聞かなかったのは、私に名前も知らないヤツなんて思われたくなかったんだろう。カワイイじゃないか、そんな見栄を張るなんて」


君は許された。


そんな君が、彼女はカワイイと言うのだ。微妙に褒め言葉に受け取り難い言葉だが、彼女にはウケたようで、一安心。


ついでに言えば、どうやら彼女は、君のことを隅々まで理解しているようだ。君が彼女の名前を知らない事、その存在に疑問を持っていること、などなど。


それを理解した君は、これはいい機会だと思うはずだ。自分の考えがバレているのなら、いっそのこと、疑問に思っていることを聞いてしまおうと思うことだろう。


だから君は、撫子先輩に、撫子先輩の正体を問うのだった。


「うーん、別に、私の正体といってもな……。まあ、なんでもいいじゃないか」


返ってきた返事は、そんな気の無い返事だ。


何故彼女は、そんな重要なことを隠すのだろうか? 何か明かせない秘密でもあるのだろうか?


「前にも言ったけど、重要なのは、私が君の『嫁』だということだ。それで、いいじゃないか」


名前が解って、少し理解したはずの撫子先輩への疑問は、ますます膨らんでいくのだった。

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