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君の学校生活-早朝編-

「おーい、朝だぞう。そろそろ、起きたらどうだ。いいかげん、学校に遅れてしまうよ」


寝れない一夜を過ごすはずだった君は、どうやら簡単に寝てしまっていた様だ。布団の中、微睡から聞こえてきたのは、昨日から知っている声であった。


「まったく、君は寝坊助さんだな。これじゃ、ご飯さえ一緒に食べられないぞ」


全く持って、彼女の言う通りだ。


そんなことを思いながら、君は眠い目を強引にあけた。今は冬だ。以前なら寒い中、布団から出るのに一苦労していたところだが、彼女が効かせてくれた暖房のおかげで、室内は温かい。君は苦労することなく、布団から出ることが出来た。


こんな何気ないことでも、彼女の有り難さと、以前との暮らしの違いを感じてしまう。


「はいはい、ぼうっとしていないで、さっさと食卓へ行ってくれると嬉しいんだけど」


そして、当たり前の様に用意された朝食も、それをより色濃くさせていた。


食卓へ着くと、君を出迎えてくれた朝食は、昨日と打って変わって、ポーチドエッグがのった焼き立てのトーストと、芳ばしい香りのよく焼けたベーコンにウインナー、コンソメスープに、彩豊な小エビのサラダといった洋食だった。


一口、ポーチドエッグを食べてみる。おいしい。

ベーコンを一口食べてみる。おいしい。

小エビのサラダを一口食べてみる。おいしい。

コンソメスープを一口と言わず、ずいと飲んでみる。おいしい。


2度目でも、やっぱり驚いてしまう。彼女が作った料理は、全て美味しかったのだ。どうしてもびっくりしてしまい、料理した彼女を見やると、その張本人は予想通り玄関の前に来ていた。


その姿をみると、どう見ても君の通う高校の制服を着ている。彼女はどうやら間違いなく、君の通う高校の生徒ということになる。


しかし、彼女の様な目立つ生徒が居たという記憶が、君にはなかった。これでますます、彼女という存在の謎が深まったのを君は感じたことだろう。


「私はもう出るよ。わかっていると思うけど、ごはんを食べ終えたら、食器は最低限、水につけておいてくれ。それじゃ、行ってきます」


行ってらっしゃい。昨日ぶりのその言葉は、やっぱり君を新鮮な気持ちにさせたのだった。




「おはよう、今日も早いね。これはどうしたどうした♪」


昨日のように、いつもより早く登校した君を迎えてくれたのは、同級生の短髪が特徴的な少女だった。


人懐っこそうな笑顔で警戒心を解き、スルリと懐へ入ってくる彼女は、コミュニケーション力が高いと評判だ。


そんな顔の広いであろう少女だったら、もしかしたら妻と自称する彼女のことについて、何か知っているかもしれない。そう思った君は、少女に彼女のことを聞いてみようとする。


しかし、ここで一つの問題が発生した。


そうなのだ。君は、あろうことか、妻であるはずの彼女の名前すら知らないのだ。


なんて情けない。これではまず、やらなければならないことは、彼女の正体を調べることでは無く、彼女の名前を知ることからだろう。


その事実に気付き打ちひしがれた君は、少女へ返事を返すことすら忘却してしまうのだった。


「ほんとにどうしたどうした? ちょっとぼうっとし過ぎじゃない?」


そんな失礼な君を奇妙な目で見ることも無く、心配してくれる少女は、本当にいい子である。


「チース、おはようさん。ん? どうしたよ、千明。そいつがどうかしたか?」


そして、そんな少女=千明を困らせる君が、登校してきた長身の少年から「そいつ」扱いされるのは、仕方がないことだと甘んじて受けてしかるべきだろう。


「おはよう! それがさ、聞いてよ芥。なんか大和っちが変なんだよ」


少年=芥は、そんなやり取りをしている君たちをみて、興味が失せたかのように、席へ着いて一言。


「そいつが変なのは、何時ものことだろ。心配するだけ無駄無駄。それより重要なのは、挨拶だろ。お前、挨拶ってのは人間関係の基本だぜ。ちゃんと、返せよな」


そんなお叱りを受けても、色々なことが有って、昨日から引き続き衝撃を受けまくっている状況だ。頑張っても、君はぎこちなくおはようと返すのがやっとであった。

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