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彼女は誰だ?

君は放課後になっても彼女のことで頭がいっぱいだ。頭を悩ませるあまり、あっという間に、学校の時間が過ぎ去ってしまった。


授業の内容もあまり頭に入って来ず、これでは明日の授業が大変かもしれないと、君は少しだけ思い。けど、退屈な時間がさっさと過ぎて良かったかもしれないと、君は能天気に思うのだった。


ピ、ピ、ピ。


携帯が鳴った。画面を見ると、そこには名前も知らない彼女から、SNSへメッセージが送られていた。


『君のことだ。私のことなんて忘れて帰宅していると思うけど、一応連絡を入れておく。私は少し遅くなるから、先に帰ってていいよ』


そのメッセージを見て、君はやっと気づくことが出来た。そうだ、彼女が今朝着ていた制服は、自分が通う高校のものだったと。


ピ、ピ、ピ。


そして、二通目のメッセージには、こう書かれていた。


『追記。遅くなると言っても、少しだけだぞ。だから、寄り道なんてせず、さっさと帰るように』


その内容を見て、君はこう思ったことだろう。


どうやら彼女は、少し怒っているらしい、と。


これは、帰ったら頭を悩ませそうだと、君は思った。




なんてことを思ってはいったが、結局は思っていただけだった。帰宅した君は、そんなことは忘れて、テレビを見てくつろいでいたのだ。


その辺りは、流石だとしか言いようがない。見知らぬ女性がいても、少し悩む程度の図太い君だ。彼女が少し怒っているかもしれない程度のことでは、動揺したりはしないのであった。


「ただいま」


そして、君が帰宅して、30分後、彼女から帰宅の知らせる声が届いて来た。当然、それに応える為にテレビから目を離し、君は彼女へおかえりなさいという。


それに対して、彼女は呆れたようにこう返す。


「全く、君は私のことなんて忘れて帰ってしまうんだな。優しい私でも、少しだけムッときたぞ」


そんな風に怒られてもと、君は思った。彼女のことは『いっしょに帰宅すること』どころか、その存在さえ今朝まで知らなかったのだから。


なんてことは彼女に言えないので、ごめんなさいと、素直に謝るのだった。本当は、彼女の正体を問い詰めたいところだ。でも、そんなことを言えばきっと、自分は変人扱いされるだろうし、彼女を傷つけてしまうかもしれない。


そう思うと、いま一歩踏み出せないのであった。


「まあ許すよ。私は優しいからな」


この「私は優しいからな」という部分には、どんな意味が隠されているのかと、君は疑問に思うことだろう。優しく無かったら、怒っていたということではないのかと。


そもそも、少しはムッとして怒っていたんだから、そんなに彼女は優しくないのでは? なんて、失礼な事さえ考えている。そんなことを考えている辺り、君には反省の色が見えない。


彼女もそう、思っていることだろう。


「もういいから、ほら、ぼうっとしていないで、君はお風呂にでも入ってきたらどうだ? 私は、ご飯を今から作るから、その方が効率的だとおもうんだが」


怒られて少しばつが悪い君は言われるままに風呂に入り、あがった頃にはご飯の準備が出来ていた。


メニューは、寒い冬に相応しい、温かいすき焼だ。具材は、高そうな牛肉に、新鮮な白菜、ニンジン、糸こんにゃくなどなどだ。


お金の無い一人暮らしでは、なかなかありつけない高級料理に、君は少し感動を覚えることだろう。


「丁度、準備が出来たよ。さあ、食べようか」


席に着き、頂きますの声とともに食べだす二人。


肉と割り下のかぐわしい匂いに誘われ、君は牛肉を卵に絡め、ぱくりと一口。


美味い!


やっぱり、彼女の料理は美味しいと、君は感動する。それから、夢中になってご飯を食べた。


美味しかった、ごちそう様と、お腹いっぱいになった君は、お茶を飲んで一息つきながらポツリと、不意に言葉を漏らす。


ほんとうに君って、誰なんだ? と。


つい、そんなことを言ってしまった君は、口が滑ったと冷汗をかきながら、恐る恐る正面に座る彼女をみる。


そして、彼女はニコっと笑い、こう言うのだった。


「なんだ。やっとそれを聞いてくるのか。君は、相変わらずだな」


その返事から察せる都合の悪いことが、一つある。彼女はどうやら、君が薄情者であることを知っていたようだ。

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