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葛城満葉を騙る

04 真意とは?


 『安達佐江さん、私と付き合ってくれませんか?』


 私は目の前の少女、安達佐江さんに告白した。

 私、葛城満葉ーーカツラギミツハーーは安達佐江さんに告白した。

 我ながらなんて馬鹿なのだろう。

 完璧な私を演じていながら、私は馬鹿な事をした。

 私は完璧では無く、どうしようもない『馬鹿』だった。

 葛城満葉を騙っておきながら残ったのは馬鹿な私、『葛城満葉』と、完璧な彼女、『安達佐江』さんだった。

 安達佐江さんに初めてあったのは3日前の事ではない。出会っただけで初めてではない。初対面では無いのだ。

 安達佐江さんは昔の同級生だ。当人はそれに気づいていなかった。

 彼女もまた私と同じ様に馬鹿だったのだ。そして馬鹿な私は彼女に告白した。

 7年越しの片思いを打ち明けた。

 結果は明白だった。

 玉砕。無い玉を砕かされた。

 『ごめんなさい』

 たった一言。ごめんなさい。それはあまりにも強烈な砕き方だった。被害者の事を一切考慮しない無責任なパンチ。

 彼女は言葉を拳に変え私に放った。そして砕かれた私の心を繋げる為私は籠もった。マインドクラッシュされた私はパズルのピースを集めるため心に籠もった。


 そして夏休みは続く。

 そして夏休みは続く。続けるところまで続く。


 と言っても、私は立ち直りが早いほうなので、そんな玉砕も2日寝たら直った。続いたのは記述通りの二回。つまり2日だ。そして、私は安藤佐江さんに再び会うために大学へと向かう。あの長い24秒のごめんなさいを想いながら私は向かう。


 そして私葛城ミツハの語りは続く。



05  安達佐江とは?


 私が、安藤佐江を表すならそれは『完璧』だ。安藤佐江という人物はsvcで『完璧』なのだ。ストーキング二日目の時点でも感じたが、それは三日目でも同じ。彼女をいくら憎もうが彼女が『完璧』という過大評価は決して無くなることはない。しかし同時に彼女は『馬鹿』なのだ。

 私がまず、彼女に感じた美しさ以外の一つの感情。


『この人はモテない。』


 この言葉の真意を語る。今度は語るを騙ると書き換え騙すような真似はしない。

 安達佐江は私の中学時代の同級生だ。

 そして、そんな彼女は私と言葉を交わし、更には名前、『葛城満葉』という名前まで教えたのだ。

 にも関わらず、中学時代同級生であった私の事を露知らず、どうでも良いヤリサーの情報を提供しろと迫ったのだ。

 屈辱的であったが、その時に私は思った。


 この人は人に興味が無いのだと。 


 この人は好かれる事はあれど持てることは無いのだと。


 決して人から持て囃されない。彼女の人に対する無関心は恐らく他者に無意識に伝達している。だから彼女は高嶺の薔薇なのだ。


 近寄れない薔薇。


 刺々しくて決して他人から持つことはないできない薔薇。


 そして高値過ぎて手に届かない。



 『決して持てない』



 それが『安達佐江』という人間に対する私の評価だ。

 安達佐江はその美貌を持ちながら手の届かない価値を自ら付け、そして見下ろす。私達を。       

 そんな彼女の生き方はどうしようもなく『馬鹿』なのだ。


 安達佐江。身長175センチ。体重56キロ。鋭い釣り上がった目元と長身の美女。ミステリアスな顔立ち、スタイルの良さを見せびらかす様な悦の入った歩く姿勢、自身に満ちたその態度。それら全てを表現する人物が安達佐江。



07 告白とは?


 『ごめんなさい』


 「ああ、うんうん。そりゃそうだよねー。いきなりこんな事言われたらそりゃ断るよねー」


 私は照れ隠しに屈託の無い笑顔を作る。その表情はとても自然とは言えなかった。


 「えっと……ちなみに付き合うって告白って意味であってたのかな」


 「はは、それは勿論。買い物に付き合うとか今からちょっと付き合えよっていうつもりは無いよ。男が女に告白するように、女が男に告白するように、私は貴方に告白したんだ」


 「そうなんだ。ごめんなさい、私、女の人と付き合うとかよく分からなくて。」


 「いや、いいんだよ。私が変なんだ。女の子の方が好きな変人だからね。前に部室であった時、なんてかわいい子が来たんだろうと思って」


 「かわいい?初めて言われた、綺麗とかって言われることはよくあるけど」


 「ほー自分でそれを言うとは自信家だね佐江さんは」


 「不快に思ったならごめんなさい。でも葛城さんはかわいいって感じですよね」


 かわいいと言う言葉をかけられた。どんな意味で彼女は言ったのか。同情か、それとも素直にかわいいと言ったのだろうか。


 「佐江さんにそう言われるとは冥利に尽きる」


 「少し気になったんだけど私の名前」


 「ああ、安達では無く、佐江と呼んだの気に触ったかな。そりゃ当然だよね、馴れ馴れしい。ごめんね、安達さん」


 「いや別にそれは気にしてないよ。それよりも何ていうか呼び慣れてるって感じがして」


 「そう?」


 「普通、名前でいきなり呼ぶって勇気のいる行動じゃない」


 「それは私にとって普通ではないからだよ。私は普通に名前で呼ぶ。それが普通なんだ。」


 「葛城さんが女の子を好きなのも葛城さんにとっては普通ってこと?」


 「そのとおり」


 「ふふ、葛城さんって面白いね。付き合うのは無理だけど、友達になってくれないかしら」


 「もちろん、願ったり叶ったりだ」


 「よろしくね、葛城さん」


 「こちらこそ、佐江さん。じゃあ早速……」


 私は手提げのカバンからピンク色のカバーに入れたスマホを取り出しそれを水戸黄門の様に掲げた。

 

 「Line交換しよっか」

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