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道筋.マティアスルート

 王道はやっぱり若き国王ジェラルドで、宰相であるセドリックや騎士であるガエルも、立場や態度の違いこそあれ基本は同じシナリオをたどる。

 王宮に向え入れられたクリステルは、しばらく後に偽者とばれるが、ジェラルドに保護される。だが、教団はそれを国民へ公表し、彼の国王としての立場を危うくする。混乱の中で暗殺者が差し向けられ、ジェラルドをかばったクリステルが大ケガを負う。

 その後、クーデターが起き、ジェラルドは幽閉され、セドリックは行方不明に……クリステルは、痛む体にムチ打って、攻略対象のもとへと向う。ジェラルド攻略の場合はその逃亡を助け、セドリック攻略の場合は革命を引き起こす彼とともに戦い、ガエルの場合はジェラルド救出に向う。

 トゥルーエンドの場合はここで奇跡を起こし革命を成功させるのだが、奇跡が起こせなかった場合、クリステルが足手まといになりながらも革命は成功し、平和が訪れる。


 暗殺者ジュエルのルートでは、ジェラルドの隙を狙う彼と何度か偶然出会い、ジェラルド暗殺の際に失敗した彼を追いかける。国ではクーデターも革命も起こっているが、そんなもの知らぬまま、彼を捕まえ暗殺失敗により処分されるところを、奇跡の力で救い出す……そして、2人で一緒に逃避行とあいなるのだ。

 奇跡が起こせなかった場合、彼が死んでしまい1人で旅に出る、なんとも後味の悪いバッドエンドになる。


 神様ルートは、バッドエンドや真実の聖女エンドも含む全エンディングを見た場合に発生するボーナスステージのようなもので、ある意味総集編ともいえるものだ。

 オープニングの認定儀式で今までの記憶を思い出し、ピチュアが美貌の神様の姿で現れる。いろんな状況を振りかえりつつ各場所を回り、クーデターや革命も俯瞰ふかんして、神様とともにこの世界を見守りゆく。


 神様も全クリアしてから攻略解放になるのだが、もう1人、医師であるマティアスもまた、攻略制限がかかっていた。

 若き国王、宰相、騎士、暗殺者の4人のトゥルーエンドを見た後に解放される。


 なぜなら、彼こそが暗殺やクーデターを企てた黒幕だったからだ。


 実行犯は将軍ジェネラルと宝石商のドン・デジレ、教団キーンの暗殺者ジュエルだ。そして、私・クロエこそが、主犯格にほかならない。

 教団と軍部が手を組みクーデターを起こし、ジェラルドを幽閉して、王宮を占拠してしまう。

 後に革命で覆されてしまうとはいえ、ひと時、私がこの国の実権を握るのだ。


 医師マティアスルートでは、ルートの分岐点・クリステルが偽者とばれるシーンにて、マティアスに保護される。

 聖女には、肌に聖刻せいこくと呼ばれるあざが浮かび上がってくるのだが、それが人為的な刺青であることが発覚。

 聖女ありきで作られた教団が、新たな聖女を得たいがための策であった。

 私すら知らな……いや、私の知らないことなど多大にあるのだけれど、マティアスや教団中央の面々も知らぬほど、末端のしでかしたこと。


 もともと聖女の保護を目的とした教団に、ろくな教義も教理もない。ただ、困っている人に手を差しのべるべしとの教えに、いつからかお金の匂いがし始めた。はじめは御礼として、そのうち慣習として、やがて願いの欲深さにあわせ値段もつりあがっていった。

 宗教と言うものはお金があつまるものだが、この教団は特にそれが顕著であった……聖女という、目に見えて御礼ができる相手がいたからこそだ。

 末端になれば、その恩恵の減少は如実に表れる。

 金儲け集団に成り下がっていた教団は、中央こそお金がたんまり蓄えられていたが、末端は聖女全盛期の潤いを欠いていた。今、それだけの金があったとして、中央で蓄えられるばかりで末端まで届かぬものとは知らず、一番いい時期を心に描き、悪事を働く。


「聖女様は、どうやらお体の調子が芳しくないようであらせられる。どうか、神殿にて養生いただきたく存じ上げます」

とのマティアスの言葉、言葉面こそは丁寧なだが、クリステルを睨みつけてそう言った。

 だから、誤解してしまうのだ。マティアスに嫌われていると……だが、本当のところは、好意を覚え始めていた相手が、手駒として使われている現状、そしてそれを先に知ることができなかった自分のふがいなさ故のけわしい表情だったのだ。

 もしも好感度が足りない場合、もしくはマティアス攻略不可の状況の場合は、あっさりと彼女が偽者であると暴露し、その待遇は国王ジェラルドに一任される。まぁ、保護されるのだけれども……それまでの好感度によって、ジェラルドの側に置かれるか、セドリックの監視下に置かれるか、ガエルに護衛されるかが決まる。


 マティアスないしはジェラルドに保護されている初期は、もう完全にラブコメだ。

 保護されているとはいえ、行動を制限されているわけでもなく、もちろんその状態でビッチプレイに走る楽しさもある。

 この時期のマティアスは、完全にツンデレだ。

 頭が良くて理屈っぽい。理屈を並べ立てては嫌みにするよううな言い様は、ケンカでも売ってるのかという感じではあるが、なんだか言って面倒見がいい。嫌みの中に見え隠れする優しさと照れというかデレ……図星を指されて早口になったりもする。

 クリステルのために衣服を用意したり、いそいそ夕飯作ってくれたりなんかしちゃって、迷惑そうな顔をしながら内心ウキウキなところがちらほら見え……買出しという名のデートは、他のキャラから「エロ医師」と言われるほどのいちゃいちゃぶり。


 そんな甘々シーンに萌えていると……クロエが告発するのだ、彼女が偽者であると。

 そして、その混乱の中、マティアスと合えなくなり、暗殺にクーデターという怒涛どとうのシリアス展開となる。恋を忘れ暗躍するマティアス、クリステルもそれに気付くが、時は既に遅く、クーデターが起きてしまう。

 クロエを王として擁立ようりつするマティアスに、どうしてこんなことをするのかと問い詰めるクリステル。神を信じていないのに、教団をあおり立てて教祖を王にし、国家宗教をキーンにする意図……それは、神に対する冒涜ぼうとくであり、復讐ふくしゅうであった。

 キーン教団は、もとより神より聖女を祀っていた。そして、その聖女がいなくなった今、ただの金儲け集団に成り下がっている。その教団が国家宗教となれば、他国も無視できまい。そうして、本当の宗教を殲滅せんめつせんとする活動の、一端であったのだと暴露する。


 マティアスの両親は神官であった。だが、父は陰謀により殺され、母は心痛のあまり病に倒れた。そのとき、どれだけ神に祈っても助けてはくれなかった。

 だから、自分は、奇跡になど頼らず、ちゃんと人を助けられる医師になったのだという。

 だが、人を助けても助けても埋められなかった心の穴。それをふさぐために、こうして神を殺すのだと……。

 これで、夢が叶うと言うマティアス……だが、革命が起き、全てが覆されてしまう。


 その予兆があれば手を打つ手はずであったのだが、どうやら宰相の方が一枚上手であった。いや、国民の、国を思う気持ちの方が上回っていたと言うべきなのだろうか。

 国王が救出され、教団は取り潰しとなる。

「まいったよ、しくじってしまった……」

と言う彼に、主人公は問いかける。

「全てをやり直す?」

たった一度だけ、聖女としての奇跡を起こせる、それで革命が起こる前、クーデターが起こる前……いや、いっそのこと、マティアスの両親が死んでしまうその前に戻すこともできると。

 だが、マティアスはその言葉を聞いて笑う。戻してしまえば、同じ人生は送れないし、今、ここにある全ては無くなってしまうのだろうと……だから、その手は取れないと、泣きながら訴える。

 全てを、今、本当の聖女であるクリステルをなくすことなどできないから、どこからもやり直せないと。

「全て、失敗だ、全て、終わった、全て、失った……それでいいんだ」

「いえ、全てではありません。あなたを先生と慕う人、あなたに信頼を置いていた人たちがいます。罪を悔い改めて、どうか、私と一緒に、一から始めてくれませんか?」

クリステルはそう言い、ともにジェラルドの前にて全ての罪をさらけ出し、その罪を濯いで新たなる道を2人で歩もうとする……というエンドなのだ。

「聖女に免じて全ての罪を許す」

ジェラルドも、あっさり終わらすからハッピーエンドになったけど、本来は国家転覆という大悪事、無事で済むわけがない。だけども、罪をさらけ出し過去と決別し、マティアスはクリステルとともに教団を正し、平和への道を模索していく。

 終わりに、前聖女の像に祈るクリステル、その面差しは類似しており、呼ばれて振り返る彼女は、その先に愛しい人の姿を見て微笑むのだ。

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