表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/13

中に入りました ~2階から3階へ 七つ道具その4~

ホラーになって、いますよね?

 ゴロゴロゴロ・・・・・・。

 ゴロゴロ・・・・・・。

 ゴロゴロゴロ・・・・・・。


 突然、前方の床に、何かが転がっていく音と影が。


「ひっ!!」


 般若面女は、相変わらず私のだっこちゃん人形です。

 正直、暑苦しくてしかも重いので、私は今すぐ捨てたいんですけど!


「前方に、たくさん、たくさんいるわぁぁぁ~~!」


「そうだね? こんなにたくさん・・・・・・」


「頭にネクタイ巻いたサラリーマン風のおっさんや、真っ赤な顔したおっさんに、黄色の腹巻が目立ちすぎなおじいさんに、キティーちゃんの刺青したおっさん軍団よ~~!」


「? 何言っているの? 目を覚まして!」


「ハア? 目を覚ますのはあんたよ! 一時退却よ? ここはやばいわ!」


「? 何言ってんの? 私たちの行く手を阻んでいるのは、たくさん転がってくる一升瓶でしょうが!」


 そう。

 どこからともなく次々と転がってくる、一升瓶。

 なんで病院で、こんなに次から次へと出てくるの?


「これだから、見えない女は! よく聞いて! 私たちの目の前には、“酒をくれ~”“酒をくれないと祟るぞ~”“お酒くれなきゃ、おそっちゃうからね✩”なんてふざけた事言っている、アル中おっさん集団が壁を造っているのよ! やばいわよ? 私たち、アル中のしかも父親よりも明らかに年上な連中に、襲われてしまうのよーーーーー! きゃあーーーーー!」


 って。

 うちの父は、今年で58歳なんですけど、それよりも年上ってこと? でいいのかな?

 まあそんな些細なことは、置いといて!


「確かに、周りはお酒臭いけど、それはこの大量の一升瓶のせいだから。アル中オヤジなんて、どこにもいないから!」


「だから、いるのよ~! 信じなさいよ~! 私だけ見えるのって不公平じゃない? あんたも恐怖におののきなさいよ~~!」


 って、またもや混乱してしまっているのか、私の体を前後に強く揺さぶる、般若面の女。

 正直、恐怖のあまり気がふれたとしか思えません。


「そんなに怖いなら、もう帰ったほうがいいよ? 私は、今日中に果たさないといけない約束があるから、意地でも副医院長室に行ってくるけど。仕方ないから、外まで一旦一緒に行ってあげるから、もう帰りなよ」


 幼馴染として。

 親友として。

 ここまで一緒に来てくれた同士として。

 心から心配になったから、そう提案してあげたのに。


「はあ? 何を言っているの? 私だってあの部屋に用があるのよ?」


 突然、真面目な口調で答えてきやがりました。


「それって、そんなに大事なこと?」


「もちろんでしょ? でなきゃこんな薄気味悪い幽霊大放出なホラーハウスみたいなとこ、誰が来るもんですか!」


「そんなに大事なことって何?」


 そういえば私、夏希がこんな怖い思いをしてまで、あそこに行きたい理由を知らない。


「私の一生を左右する、一世一代の大事なことなのよ!」


 そう言って、またもや私の体を前後に強く揺さぶり始める、般若面女。

 パニくると私を揺さぶるのは、クセなのですか?

 初めて知りましたけど?


「ひとまず、この一升瓶の大群をなんとかしないとね?」


 ということで。


「おらよ!」


 次々と壊れた窓枠の外に向かって、華麗にシュート! を決めていったはずなのですが。


「え? なんで戻ってくるの?」


 外の向かって蹴っても蹴っても、そしてまた蹴っても、その次の瞬間には、廊下をコロコロところがって戻ってくるんですが?

 一体この一升瓶は、どんな仕組みになっているの?


「無駄よ、静音」


「え? どういうこと?」


「だってこいつら、“酒をくれ~”“酒を飲むまで諦めない~!”って、すっごい酒に執着している。お酒を飲ませない限り、こいつらずっと私たちにこうやって絡んでくる気よ?」


「じゃあ、お酒を飲ませれば、さっさと消えてくれるのかな?」


「まあ、多分そうだと・・・・・・まさか、持ってないよね?」


「え? あるよ?」


「なんで!」


「だってさ、こういうとこってマムシとかよく出るじゃん? ちょうどタイミングよく、うちの母方の祖父がマムシ酒をご所望なんだよね?」


 ということで。

 真夏の夜に外に出るときの、七つ道具その4。

 日本酒一升瓶。

 ちなみに銘柄は、祖父の地元で作られているというお酒“獺祭(だっさい)”。

 今回はその祖父からの依頼もあり、一応リュックには3升ほど入れてます。


「やっぱりいい酒でないと、いい薬はできんけぇ~てことらしいよ?」


「え? 薬?」


「うん。マムシ酒は、精力回復効果や鎮痛効果に疲労回復効果があるんだって! 特に、捻挫や打ち身などの怪我をした場所には即効で効くんだって!」


「・・・・・・ソレ、本当なの?」


「なんでも、医学的にも証明されているらしいよ? おじいちゃんが自慢してたし?」


 ということで。

 

「ほ~ら、人気の高いお酒ですよ~。美味しいですよ~」


 と言って、一升瓶に次々とお酒をかけていった結果。


「・・・・・・お酒で、一升瓶が消えるってことがあるんだね・・・・・・」


 次々と、一升瓶がまるで燃え尽きた灰のような姿に、変わり果てていくんですが。

 

「まあ。成仏してんじゃない? “ありがたや~ありがたや~”・“わしらの命の水じゃ~”“希望の水じゃて~”“まあ、ガソリンかの~”って言いながら、みなさんすっごくいい顔しているよ~。ちなみに次々と蒸発したように消えていってるんだけど・・・・・・」


 ということで、3升全てをかけ終えた頃には、邪魔者はひとつ残らず、消滅しておりました。

 これで安心して、前に進めそうです。




 そしてやっとこさやってきました。

 私たち、今度は3階にいます。


「もうすぐだね?」


 そう思った時です。


「え?」


「ギャーーーー! これはやばいーーーーー!」


 ということで。

 私たち、突然、足が動かなくなりました。

私の実家は、かなりの田舎です。

よって小さい時、おばあちゃんに虫刺されにはム○ではなく、マムシ酒を塗ってもらっていました。

実際に、よく効いたと記憶しております。

打ち身や捻挫には・・・・・・あまり記憶はないのですが、調べたらそんな記述を見つけたので。

小さい頃からそんなのを見ているので、理科準備室のホルマリン漬けなんて、どんと来い!(いや、うそです。怖いの嫌です、ごめんなさい! あの中で動くの、マジ怖い!)

ちなみに日本酒は、島根県の“出○富士”というのが好きです。

辛口で後味サッパリ(私にとっては・・・・・・)で、ついつい飲みすぎてしまいます。

他にも好きなお酒はたくさんありますが、ここでは書ききれないので。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ