表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/13

中に入りました ~4階編 ラスボス仕留めました~

すみません。

まだ終われませんでした。

どうしよう・・・・・・。

「で? どこにいるの? 年増蛇女」


 そういえば私、全然見えないんだった。

 ふと、そんな超基本的なことを思い出し、その場にて歩みを止め、くるりと後ろを振り返る。


「これだから脳筋は! 本当に馬鹿よね? 場所をあんたに伝えたら、相手にもバレるでしょうが!」

 

 たしかさっきお面を外したはずの幼馴染殿が、素顔がまさに般若面よろしくな表情にて、私を怒鳴りつけてきました。

 なんでこう、カリカリしているの?

 怖いとみんな、ヒステリーになっちゃうの?


「因みにあんた、堂々と“年増蛇女”なんて言うから、敵はめっちゃ怒っているわよ! “シャーーー!”って威嚇音出しながら、“ブッコロス!”って意気込んでるわよ? 私にとばっちり来たらどうすんの? なんで空気読めないの? あんたの脳みそには“場の空気を読む”という機能はついてないの?」


 自分だって、さっき堂々と言ってたくせに。

 なんでいきなり説教?

 あんたも、空気読めないの大概だよね?


「じゃあ、なんかこうテレパシーとか念話とかみたいなの?」


 どういっていいのか分からず、とりあえず頭の中に思い浮かんだことを提案したところ。


「あ・の・ね? ここは、小説や漫画に映画の世界じゃないの! 現実なの! そんなご都合主義的なもの、あるわけねーだろーが! このばかちんがぁぁぁ~~~!!」


 めっちゃ常識的模範解答にて、却下されました。


「じゃあ、どうやって相手と戦うの? っていうか私、武器なんて持っていないんだけど? あんたの持ってきた御札とか黒魔術グッズを使わないといけないってこと?」


 でも私、使い方しらないんだよねぇぇ・・・・・・。


「? 何をほざいてんの? この霊長類は。あんたには、小さい頃から鍛えた空手があるでしょうが!」


「え? 空手? 空手使うの? 見えない相手に?」


 どういう無茶ブリですか?

 っていうか、幽霊に物理攻撃はアリなの?


「自分を信じなさい! 問題ないわよ、無問題(もーまんたい)! いつもどおりに、そこらへんで空手の形でも披露していなよ?」


「え? なんか言っていることが投げやり? そしてなんで突然中国語?」


「はあ? どこが投げやりなの? 一番確実な正攻法を伝授してあげているんでしょうが! それからね? 無問題(もーまんたい)は中国語だけど、さらに分類したら広東語だから」


 それ、この状況下においては、どうでもいい情報ですよね?


「う~ん。じゃあ、適当にやるね?」


 ということで。


「はぁぁぁ~~!」


 気合を込めて、霧ヶ峰 静音、行きます!


「じゃあ、最初は正拳突き(上段)! ハァッ!」」


 ・・・・・・コレ、あたっているのかな?


「お、すごっ! 年増蛇女の喉元にヒット! だらしなく口を開けてはいるけど声が出ないみたいだし、両手で喉を抑えて苦しそうにしているよ? もしかして息できないのかも?」


 当たっているらしい。

 実感ないけど。

 それにしても。

 幽霊って、呼吸すんの?


「そう? じゃあ次!正拳突き(中段)! ハァッ!」」


 ・・・・・・コレ、どうなんだろう? 


「またまたヒット! 今度は年増蛇女の鳩尾にモロ入ったわよ? “グハッ!”って言いながら、体をフラフラさせながらも、今度はみぞおち抑えて苦しそうにしているわ。ざまあ~!」


 ・・・・・・また、当たっているらしい。


「そう? じゃあお次は、正拳突き(下段)! ハァッ!」」


 ・・・・・・今度は、どうなんだ?


「すごい! ちゃんとヒットしているよ? 位置的には、お股辺りを抑えて苦しそうにもがいているわ。でも・・・・・・おかしいわね? 年増だろうが一応生物学的には女なんだから、股間なんて男よりは致命度低いはずなのに。しかも蛇女だから、ソコ、問題なくない?」


 ・・・・・・またまた、あたっているらしいんだけど。

 結構ひどいこと言っていませんか?


「じゃあ、次はどうする?」


「そろそろトドメ逝っときたいから、足技でビシッと決めてみ?」


 とうとう“逝っときたい”とかぬかしやがったよ?

 自分で手を下すことなく、完全に殺る気だよこの人。


「じゃあ、まずは横蹴りいっとくね? ハァッ!」


 ・・・・・・って、コレ、ちゃんとあたっているのかな?

 当たればかなりの衝撃があるんだけど、大丈夫なの?


「ナイス! 体勢を崩すことに成功したけど、まだ威力が足りないわね? もう一丁やってくれる?」


 って、威力が足りないって、どこまでしたいの?

 あたっているのが分かるのはいいんだけど、実際に目で見ないと、どれだけの威力を発揮できているのか、今ひとつ自信がないんだよね?


「じゃあ、今度は足刀蹴り” ハァッ!」


 なんか、虚しくなってきましたが・・・・・・。


「すごい! 凄いわよ静音! やっとあの年増吹っ飛んだわ! って、やった! やっと見つけたわ!」


 そう言うなり、いきなり両手を広げて笑顔全開にて、猛ダッシュでこちらにやってきます。


「え? なに? どうしたの?」


 突然のことに、動揺しまくる私・・・・・・を彼女は華麗にスルーしていきやがりました。


「どういうこと?」


 そしていっぺんの迷いもなく、さっきまで年増蛇女がいたであろう場所へと、腰を下ろしたのです。

 さらに何を思ったのか、震える両手を前に突き出すと。


「会いたかった・・・・・・」


 突然、感極まったかのような涙声になり、誰かを抱きしめるようなそんな仕草を見せたのです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ