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駄女神

主人公視点に戻ります。

「お久しぶりですね!勇者様♪」


おい‥‥‥


「お風呂にします?ご飯にします?そ、それとも‥‥‥あ・た・し?」


‥‥‥斬る


「待ってくださいゴメンナサイ謝りますのでアイテムボックスから予備の剣を出さないで下さい。お願いします」


ハルがアイテムボックスに手を突っ込んだのをみた瞬間、流れるように土下座をしてきたのは、ハルが始めて向こうの世界に行く際に、色々と説明をしてきた女神だった。

コイツは変わらないんだな。いや、当たり前か?けど、此処とアッチじゃ時間の流れが違うのかもだし‥‥‥話合わせとくか。


「で、なんで俺は此処にいる?もう向こうとはなんの関係も無いはずだ。今も、そしてこれからも」


「はい。アナタはあの世界で十分に傷つき、そして世界を救ってくれました。それに関しては、女神として深く、深く感謝を‥‥」


土下座からゆっくりと立ち上がり、頭を下げてくる。さっきまでのふざけた空気が消えていた。

コイツが此処まで真面目なのは久しぶりじゃないか?と言っても、会うのは久しぶりなんだが。


「それはいいから、なんでまた喚ばれたのかを教えてくれ」


「はい。それに関しては‥‥‥」


「女神様ー仕事ほっぽって何やってんですかー?例の世界の人間共がまーた戦争して、死んだ魂がそこら中に溢れて大変な事になってますよー」


真っ白い空間に変な亀裂が入ったと思ったら、亀裂から降りてきたのは綺麗な純白の翼を広げた天使だった。綺麗だが無表情な顔から、とんでもない台詞が放たれている。

うわー、なんか物騒な話が あれ?アイツどこかで見たな?どこだっけ。


「ありゃ?この前の勇者じゃ無いですかー?世界救って帰った筈なのに何でまたいるんですか?喚ばれたんですか?大変ですねー」


さっきの話をサラッと流し、ユラユラと近付いてくる。無表情なので何か怖い。

あのとき女神の側に控えてた天使か。懐かしいな。


「あ、あぁ。そう言えば聞きたかったんだけど俺の身体を二年前に戻したのって‥‥‥」


「おぉ!やっぱり?わかります?いやー流石勇者ですね!そうです。私が戻しときました!向こうで身体いきなり大きくなったら説明が大変ですもんね。崇めてくれても良いんですよ?さぁ!!どうぞ!遠慮なさらずに!!」


う、うぜぇ‥‥‥こんな性格だったのか。最初会った時は黙って突っ立って、所々女神の話を補填するだけだったから分からなかった。素直に感謝したく無いな。


「ちょっと、アナタは黙っていなさい!これから説明するおもーい空気だったのが壊れちゃったじゃないですか!ムードって大事なんですよ!?」


てめーにはムードなんて似合わねーよ。そういうのは頭のいい奴が作るんだよ。バカには無理だ。


「だけどーそんなおもーい空気で話しても絶対行きませんよ?この勇者。だったらムードなんて関係ないですよ。それに、女神様の作るムードなんてたかが知れてますし」


コイツ自分の主に向かって‥‥いや、確かに同意見だけどさ。というか、やっぱり俺は、また世界を渡るのか。


「な、なんですってー!?」


「もいういいから、話進めろ‥‥」


「「あ、はい」」




      ーーーーーーーーーーーー




「えっとですねー、そのー大変申し上げにくいのですがー‥‥‥」


もじもじとしながらお願いをしてくる女神。まぁ、どうせ面倒な案件に決まってる。俺はもう関係無いんだ。


「断る」


「デスヨネー。分かってましたよ。はい。どうせやってくれないだろうなーとは思ってました」


やはりわかっていたのだろう。わざとらしく、大袈裟にガクッと肩を落としている女神を、胡散臭さそうな顔で見つめる。

当たり前だろ。なに考えてんだ?この女神様は。そんな顔していじけても無駄だぞ。


「でも、これ聞いたらやらざるを得ませんよね」


チラチラと下げた頭を少し上げて覗き込んでいた女神が、ガバッと顔を上げて天使に詰め寄っていく。何かしら心当たりがあるのだろう。物凄い慌てようだ。


「ちょ、ちょっと!?なに言おうとしてるの!?」


「いや、だって言っとかないと後でなんか言われますよ?」


えっなにそれ気なる。俺が後でなにか言うって‥‥‥コイツら何隠してる?


「怒らないからいってみろ」


「ほ、ホントに怒りません?」


ニッコリと笑ったハルの顔を、引きつった笑顔でみてくる。あまり信用が無いようで悲しいな。


「怒らねーよ。ほら、言えよ」


「で、では‥‥‥アナタが勇者をやらなければ、次の勇者は‥‥‥」


そっか、俺がやらなきゃほかの奴になるのか。考えたことなかったなそんな事。





      「宇都宮 雫さんです」





その瞬間、俺は持っていた剣を女神の首もとに持っていっていた。そして、殺気を込めた低い声で、女神に問い掛ける。


「ゴメン、聞こえなかった‥‥‥もう一回いってみろ」


「で、ですから、次の勇者は雫さんなんですよぅ」


冷や汗を一筋垂らし、ゆっくりと言葉を選んでいる。

なんであいつが?そう聞こうとしたとき、天使からのストップが掛かった。


「えっとですねー、剣を降ろしてもらえますー?流石にこのままじゃなにも話せないので」


「‥‥‥言ってみろ」


剣を降ろし、ホッとため息を吐いている女神を横目に見ながら天使の次の言葉を待つ。


「はい。ありがとうございますー。えっとですねー、雫さんに決まったのは、あの人以外に召喚陣のあった教室に少しでも勇者の素質がある人がいなかったからなんですよ。本当ならほんの少し、米粒一粒のように小さくても勇者の素質がある人は結構な数いるんですけど、一人もいなかった。これはアナタのせいですね」


‥‥‥えっ、


「お、俺のせい?」


「はい。雫さんの勇者としての素質は、誰かから借り受けているものですね。ですが、普通はそんな事出来ません。が、私の目の前にちょうど、規格外の勇者の素質を持ってる人がいるんですよねー」


お、俺か。


「はい。普通、勇者の素質と言うのは握り拳で大。団子で普通。それ以下は米粒か、無し。ですね。アナタのは‥‥‥もう名前で呼びますね。春人は大砲の玉並みですね」


コイツ、いきなり呼び捨てかよ。いや、それよりも。大砲の玉って‥‥どんだけだよ。俺、おかしくね?


「えっとですねー、今までそんな人は居ませんでしたし、誰かに貸す。なんて出来る人居ませんでしたからね。ホント規格外ですよね。まさしく!!勇者になるべく生まれた存在!!!ですね」


ま、まじか‥‥‥そう言えば、なんで俺が『勇者』に選ばれたのか、なんて考えた事無かったけど、そう言う事か。


「は、はい。そういうわけで、雫さんしか居ないんですよ‥‥‥」


やっと復活したな。駄女神。うーん。まぁ、話は分かったけどその事以外にも聞きたい事あるんだよなぁ。


「2つ疑問があるんだかいいか?」


「えぇ、どうぞ?」


「まず一つ目、俺のステータス画面にあった『勇者の残りカス』は何なんだ?」


「其方の世界に戻るときに『勇者』の称号を取り上げたので、そのカスですね」 


やっぱりまんまだな。何かしら特典みたいなのが付いているのかと思ったが、そんな事は無かったようだ。‥‥いや、別にもう必要無いからどうでもいいが。


「称号は消えても素質は残るのか?」


「はい、残ってますよ。だから今回も喚ばれたんでしょうし」


「ん?ランダムじゃないのか?」


「まぁ、大きい素質を求めるのは普通ですよね」


まぁ、確かに。小さい素質あっても意味ないしな。‥‥あれ?と言う事は、俺は生きてる限り呼ばれ続けたり?‥‥まぁ、これは今はどうでもいいか。断れば良いんだし。


「じゃ、2つ目。勇者の素質は、米粒一つの奴も含めて、結構な数いるんだよな?だったらなんで、ウチのクラスにはいなかったんだ?」


「これも春人のせいですねー」


また俺かよ、いい加減にしてくれない?俺の中の『勇者』の素質ってやつはさ?


「はい、ここからは私が話しますね。アナタは仕事に戻りなさい」


「えぇー、いくら二人きりになりたいからって、無理やり帰すのは女神として‥‥」


「いいから戻りなさい。消しますよ」


「はい‥‥‥」


‥‥‥何を二人で話してるんだ?コソコソ話されると、何か企んでるようで怖いんだけど。


「え、えっとですね?は、春人さん!‥‥‥の、勇者としての素質が大きすぎるせいで、他の勇者の素質がある人は集まって来なかったんですよ。普通、召喚される勇者達は、小さい素質をかき集める形で喚ばれますから」


こいつも名前‥‥‥まぁいいか。


「ふむ、ということは‥‥‥アイツの勇者としての素質を俺に戻せば、アイツは勇者にならないんだな?」


「はい。けど、そうなりますと春人さんが勇者になりますよ?」


ん?なにを言ってるんだ?ならないって言ったじゃん。バカじゃんコイツ?


「ならないよ?アイツから戻してそのまま帰る。だから呼んでこいよ」


ついでに俺の素質も消してくれると嬉しいけど‥‥‥無理だろうな。そこまで都合良くは行かないだろ。


「えっ?」


「ん?」


「‥‥‥えっ?」


コイツは何を根拠に勇者をやってくれると思ったんだ?

行きたくないんだから、アイツを此処に呼んで、素質を戻して貰ったら帰れば良いんだよ。アホかコイツ。


「い、いえ、それでは困るんです!春人さんにいってもらわないとあの世界は滅ぶんですよ!!」


‥‥‥いまなんていった?この女神。向こうが滅ぶ?シルが愛し、命がけで守った、あの世界が?


「気が変わった。勇者はやらんが話すだけ話せ」


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